好きな人のことを考えていたら、ちょうどその人から連絡が来た。偶然、同じ曲を聴いていた。スピリチュアルの解説では、こうした出来事を「シンクロニシティ」と呼び、両思いの前兆として紹介することがあります。
ここでは、シンクロニシティという言葉が本来どういう意味なのか、偶然の一致がなぜよく起きるのか、そして相手の好意を読み取ることについて、心理学の研究で分かっていることを順にまとめます。最後に、気になる偶然が続いたときの受け止め方を書きます。
両思いの前兆として言われていること

スピリチュアルの解説で、両思いの前兆としてよく挙げられるのは、次のような出来事です。
- 相手のことを考えているときに、その人から連絡が来る
- 同じ時期に、同じものに興味を持っていたと分かる
- 行く先々で、偶然顔を合わせる
- 相手が夢に出てくる
どれも、うれしい気持ちになる出来事です。ただ、こうした出来事が両思いのしるしだと確かめられたことはありません。まずは、この現象を表す「シンクロニシティ」という言葉の、もともとの意味から見ていきます。
シンクロニシティの、本来の意味
シンクロニシティは、スイスの精神科医カール・ユングが使った言葉です。同時に起きた出来事のあいだに、意味がありそうなのに、原因と結果のつながりが見つからない、そうした「意味のある偶然の一致」を指します。ユングは1930年の講演からこの言葉を使い、1952年には物理学者のヴォルフガング・パウリと共著で、この考えをまとめた本を出しました。
「二人の意識がつながっているから、偶然の一致が起きる」という説明を見かけることがありますが、それはユングの定義とは違います。ユングが問題にしたのは、因果関係が見つからないのに意味を感じる一致があること、そのものです。また、この考えには、確かめることも否定することもできない、という批判があります。
偶然の一致は、なぜよく起きるのか
アメリカの統計学者パーシ・ダイアコニスとフレデリック・モステラーは、1989年の論文で、偶然の一致の多くは、次のような理由で説明できるとしました。
- 隠れた原因がある
同じ職場や学校にいる二人なら、同じ話題に触れ、同じ時間に休み、似たものに興味を持つのは自然なことです。 - 記憶と気づき方
当たった一致は覚えていて、外れたことは覚えていません。相手のことを考えたのに連絡が来なかった日は、記憶に残りません。 - 似た出来事も一致に数える
まったく同じでなくても、「似ている」ことまで一致として数えると、一致の数はぐんと増えます。 - とても大きな数の法則
出来事の数が膨大になれば、めったに起きないことも、どこかで必ず起きます。
身近な例が「誕生日の問題」です。23人が集まれば、同じ誕生日の人が一組以上いる確率は50.7%になります。直感より、偶然の一致はずっと起きやすいのです。自分の思いに合う出来事ばかりを重く見る「確証バイアス」も、好きな人との偶然を、特別なものに感じさせます。
相手の好意は、読み取れるのか
偶然の一致より、相手のふるまいから好意を読み取るほうが確かに思えます。けれども、心理学の研究は、それも簡単ではないことを示しています。
- 第三者でも、読み取りは難しい
短い時間で次々に相手を替えて話す「スピードデート」の映像を見た人たちは、参加者の好意を偶然よりは当てられました。ただ、女性の好意はほぼ偶然と同じくらいしか当てられず、読み取りやすさは人によって大きく違いました(2009年)。 - 人は、好かれている度合いを低く見積もる
初対面の人と会話したあと、相手からどれだけ好かれたかを聞くと、人は決まって実際より低く見積もりました(2018年)。研究者はこれを「好意のずれ」と呼んでいます。 - 男女で、読み違え方が違う
相手の性的な関心について、男性は多めに、女性は少なめに読み取る傾向が報告されています(2020年)。
つまり、偶然の一致やしぐさから「両思いだ」と決めるのも、「嫌われている」と決めるのも、どちらも読み違えやすいということです。そして、会話がうまくいかなかったと思った日でも、相手はあなたが思うより好意を持っているかもしれません。
「相手が夢に出てくる」のは前兆か
好きな人が夢に出てくると、相手も自分を思っているしるしでは、と考えたくなります。けれども、夢は自分の頭の中で作られるもので、日中によく考えていることが夢に出てくるのは自然なことです。予知夢を見たことがあるという人を睡眠の実験室で調べた研究でも、夢が先のことを言い当てる証拠は見つかっていません。相手が夢に出てきたら、それだけ自分が相手を大切に思っている、と受け取るのが自然です。
偶然を書き留めておくと、見えてくること
気になる偶然が続いたら、日記やメモに書き留めてみてください。書き方の例は次のとおりです。
- 日付と出来事
「10月3日、相手のことを考えていたら連絡が来た」のように、起きたことをそのまま書きます。 - 外れた日も書く
「考えていたけれど、連絡は来なかった」日も書きます。当たった日だけでなく、外れた日も数えるのがコツです。 - 自分の気持ち
そのときうれしかったか、不安になったかを、一言添えます。
数週間分を読み返すと、当たった日と外れた日の割合や、自分の気持ちの波が見えてきます。偶然の数に一喜一憂するより、相手と話せた日がどれだけあったかのほうが、関係を考えるうえでは確かな手がかりになります。
気になる偶然が続いたときの受け止め方
- 偶然を、話しかけるきっかけに使う。「同じ曲を聴いていたね」は、自然な会話の入り口になる
- 偶然を、答えにしない。相手の気持ちは、相手の言葉や行動から少しずつ確かめる
- 相手の都合や気持ちを大切にする。連絡の返事が遅い、会えない日が続くといったことも、相手の答えの一つとして受け止める
- うれしい偶然は、日記に書いておく。あとで読み返すと、自分の気持ちの動きが見えてくる
シンクロニシティを感じた瞬間のうれしさは、本物の気持ちです。その気持ちを、偶然の意味を探すことより、相手との会話や行動に向けると、関係が前に進みやすくなります。偶然は二人を近づけるきっかけにはなっても、気持ちを確かめる代わりにはなりません。
よくある質問
Q. シンクロニシティは、両思いのサインですか?
A. そう確かめられたことはありません。ユングが言ったシンクロニシティは、因果関係が見つからないのに意味を感じる偶然の一致のことで、二人の気持ちが通じているしるしという意味ではありません。
Q. 好きな人と偶然が重なるのは、なぜですか?
A. 同じ職場や学校など、二人に共通の原因があることが多く、当たった偶然だけを覚えていることも重なります。23人いれば同じ誕生日の組がいる確率が50.7%あるように、偶然の一致は直感より起きやすいものです。
Q. 相手が自分を好きかどうか、しぐさで分かりますか?
A. 研究では、第三者でも読み取りは難しく、とくに女性の好意はほぼ偶然と同じくらいしか当てられませんでした。また、人は相手から好かれている度合いを、実際より低く見積もりやすいことも分かっています。
Q. ユングのシンクロニシティは、科学的に認められていますか?
A. 認められているわけではありません。因果関係が見つからない一致に意味を見いだす考え方なので、確かめることも否定することもできない、という批判があります。統計学では、偶然の一致の多くは、隠れた原因や記憶のしかたで説明できるとされています。
Q. 偶然が続いたら、告白したほうがいいですか?
A. 偶然は決め手になりません。告白するかどうかは、相手との会話や、会う回数が増えているかなど、二人のあいだの実際のやりとりをもとに考えてください。


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