願いがかなったら、お礼に参る。お礼参りは、昔から続く習わしです。けれども、いつまでに行けばいいのか、遠くの神社だったらどうするのか、お寺でもするのか、と迷うことは多いはずです。
ここでは、お礼参りの意味を辞書で確かめ、神社本庁と、四国八十八ヶ所霊場会の説明をもとに、よくある疑問に答えます。結論から言うと、期限の決まりはありません。
お礼参りの二つの意味

辞書では、お礼参りに二つの意味が載っています。一つは、願いがかなったお礼に神社や寺に参ること。報賽(ほうさい)とも言います。
もう一つは、刑務所を出た人などが、密告した人や不利な証言をした人に仕返しをすること、という俗な意味です。1958年には、この「いわゆるお礼参り」を抑えるために、証人を脅す行為を罰する罪が新しく設けられました。国会の議事録には、1952年に「俗に暴力団等のお礼参り」という言い方が出てきます。
願いのお礼の意味は、もっと古くからあります。願解き(がんほどき)、返り申し(かえりもうし)といった言い換えがあり、返り申しは『源氏物語』にも用例があります。辞典は、願いがかなったときに奉納をしたり、礼参りをしたりすることを「願果し(がんはたし)」として説明しています。
報賽という言葉の古い用例は、11世紀中ごろの往来物『明衡往来(めいごうおうらい)』にさかのぼるとされます。還願(げんがん)という言い方は、江戸時代の18世紀末の用例が辞典に載っています。別の辞典は、願いがかなった場合には神仏に詣で、旗や幟(のぼり)などを奉納して願果しをするのが普通だった、と説明しています。お礼の形は、参ることだけではなく、ものを納めることでもあったわけです。
いつまでに行けばいいのか
「1か月から3か月以内に」「半年以内が理想」といった目安をよく見かけます。けれども、神社本庁が祈願の成就について答えている説明には、期限は書かれていません。目安として示されている期間は、どれも出どころが見つかりませんでした。
決まりがないのなら、行ける時に行けばよい、ということです。遠方で、すぐには行けないこともあるでしょう。忙しさが落ち着いてからでも、お礼の気持ちに変わりはありません。
「早く行かないとご利益が消える」「行かないとばちが当たる」といった言い方も見かけますが、出典は見つかりませんでした。不安になって予定を詰めるより、落ち着いて参れる日を選んでください。
遠方の神社で、すぐに行けないとき
神社本庁の説明では、遠方の場合は、近くの神社に相談するか、お守りなどを受けた神社へ、気持ちを添えて送る方法もあるとされています。
また、お守りは、願いがかなうまで身につけていても差し支えないとされています。お礼参りのときに一緒に返す、という流れにすれば、慌てて返しに行く必要もありません。
お礼のご祈祷を受ける方法
神社本庁は、お礼参りについて、感謝の気持ちを込めてお参りするとよいとしたうえで、ご祈祷のように、神社に申し込みをしてお礼の気持ちを表す方法もある、と説明しています。
ご祈祷は、社務所か授与所で初穂料を納め、所定の用紙に住所・氏名・願い事を書いて申し込むのが一般的な流れです。初穂料の額は神社ごとに違うので、その神社の掲示や案内で確かめてください。拝殿でお参りするときのお賽銭には、決まった額はないとされています。
願いを声に出して唱えるのは、言葉に霊力が宿るという言霊の信仰に基づく、と神社本庁は説明しています。お礼も同じように、かなったことを言葉にして伝える人が多いでしょう。
お寺のお礼参り
お寺にもお礼参りの習わしがあります。よく知られているのが、四国八十八ヶ所の遍路です。八十八の札所をすべて回り終える(結願する)と、お礼参りをする人がいます。
ただし、四国八十八ヶ所霊場会の公式の説明では、結願後のお礼参りも、高野山への参拝も、強制されたものではないとされています。そのうえで、余裕があれば、もう一度四国を巡ることがお礼参りになる、と説明しています。高野山に参る場合も、お大師様に報告してお礼を伝えてください、という書き方です。
同じ説明では、巡る順番も方法も自由で、どの札所から始めてもよいとされています。納経帳に日付を書かないのは、何周も重ねて納経する人が多いからだそうです。一度で終わりではなく、もう一度巡ること自体がお礼になる、という考え方とつながっています。高野山の奥の院は、弘法大師の御廟がある所です。
結願後に一番札所へ戻る、西国三十三所を巡り終えたら善光寺に参る、といった習わしも紹介されますが、霊場会や寺の公式の説明は見つかりませんでした。ここでは、霊場会の説明にあることだけを書いておきます。
神社でお礼参りをするときに
- 願いがかなったことと、そのお礼を心の中で伝える
- 受けたお守りやお札があれば、一緒に返す(古札を納める所がある神社が多い)
- 絵馬は願いを書いて奉納するもの。お礼参りのときに、お礼の言葉を書いた絵馬を奉納する人もいる
- 手水や拝礼の作法は、その神社の案内に沿う
参道の歩き方について、「真ん中は神様の通り道なので端を歩く」という説明もよくあります。神社本庁は、これについて厳格な決まりはないとしています。手水については、柄杓一杯ですべてを済ませるという説明も見かけますが、神社本庁の説明では、途中で改めて水を汲む手順になっています。
お礼参りで大切なこと
お礼参りの決まりの多くは、調べてみると出どころがはっきりしません。確かなのは、願いがかなったお礼に参るという習わしが、平安時代の物語に出てくるほど古いということです。
決まりに合っているかを気にするより、お礼を伝えに行くという気持ちのほうが、この習わしの中心にあります。行けないときは、受けた神社に気持ちを添えて送る方法もあります。
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よくある質問
Q. お礼参りは、いつまでに行けばいいですか?
A. 期限の決まりはありません。神社本庁の説明にも期限は書かれていません。行ける時に、落ち着いて参ってください。
Q. お寺でもお礼参りはしますか?
A. します。四国八十八ヶ所の遍路では、結願後にお礼参りをする人がいますが、霊場会は強制ではないとしていて、余裕があればもう一度巡ることがお礼参りになると説明しています。
Q. 遠くの神社で、すぐに行けません。
A. 神社本庁は、近くの神社に相談するか、受けた神社へ気持ちを添えて送る方法もあると説明しています。
Q. お礼参りには、仕返しという意味もあるのですか?
A. 辞書には、刑務所を出た人などが密告者や証人に仕返しをするという俗な意味も載っています。1958年には、これを抑えるために証人を脅す行為を罰する罪が設けられました。
Q. お守りは、願いがかなったらすぐに返すべきですか?
A. 神社本庁は、願いがかなうまで身につけても差し支えないとしています。お礼参りのときに一緒に返せば十分です。
Q. 参道の真ん中を歩いてはいけないのですか?
A. 神社本庁は、厳格な決まりはないとしています。混み合うときは、ほかの参拝者の妨げにならないように歩いてください。
Q. お礼のご祈祷は受けたほうがいいですか?
A. 神社本庁は、お参りに加えて、ご祈祷のように申し込みをしてお礼を表す方法もある、と紹介しています。必ず受けるものとはされていません。初穂料の額は神社ごとに違うので、その神社の案内で確かめてください。



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