職場で話しかけても返事がない。打ち合わせに呼ばれない。自分だけ情報が回ってこない。スピリチュアルの解説では、こうした状態を「波長が合わない」「カルマの清算」「エネルギーを吸われている」として説明することがあります。
けれども、その前に確かめたいことがあります。いま起きていることは、法律で定義された行為に当てはまるかもしれません。ここでは、その線引きと、無料で使える相談先、相談するとどうなるのかの数字をまとめます。
「集団で無視して孤立させる」はパワハラの例

職場のパワーハラスメントには、法律にもとづく定義があります。厚生労働省の指針では、次の三つをすべて満たすものとされています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 労働者の就業環境が害されるものであること
そして、代表的な行為が6つの型に整理されています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害です。
このうち「人間関係からの切り離し」の該当する例として、指針は「一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること」を挙げています。職場で孤立させられている状態は、気の持ち方の問題ではなく、指針が名前を付けている行為だということです。
事業主にはパワハラを防ぐ措置をとる義務があります。中小企業も令和4年4月1日から義務の対象です。「小さい会社だから仕方ない」ということはありません。
相談は、めずらしいことではない
厚生労働省の集計では、令和6年度の総合労働相談は120万1,881件で、5年続けて120万件を超えています。そのうち、民事上の個別労働紛争の相談で「いじめ・嫌がらせ」は54,987件あり、13年続けて最も多い相談内容です。
パワハラ防止の法律にもとづく相談は、これとは別に72,789件あり、前の年度より15.8%増えています。労働局長による紛争解決の援助は1,637件、調停は575件でした。
注目したいのは、援助を終えた案件のうち58.8%が助言などで解決していることです。相談しても何も変わらない、とは限りません。
ストレスの原因としての対人関係
令和5年の労働安全衛生調査では、仕事でストレスを感じている人は82.7%でした。その内容は、1位が仕事の失敗や責任の発生など39.7%、2位が仕事の量39.4%、3位が対人関係(セクハラ・パワハラを含む)29.6%です。
対人関係は最多ではありませんが、3割の人が挙げています。前の調査の26.2%から上がってもいます。つらいと感じているのは、自分だけではありません。
「エネルギーを吸われる」の代わりに使える言葉
一緒にいると疲れる相手を「エナジーバンパイア」、相手との関係を「波長」で説明する解説があります。ただ、人の「波動」を測った研究も、「エナジーバンパイア」という学術的な定義も見つかりませんでした。
測れる言葉としてあるのは、職場で無視されたり、仲間から外されたりすることを指す「職場のオストラシズム」という考え方です。95のサンプル、26,767人分をまとめた分析では、これが心身の疲れ切った状態と強く結びつき、仕事の満足度を下げることが示されています。
つまり、「無視されると疲れる」のは、気のせいでも波長の問題でもなく、研究で確かめられている関係だということです。自分の感じ方を疑わなくてよい、ということでもあります。
無料で使える相談先
- 総合労働相談コーナー
全国の労働局や労働基準監督署などに379か所(令和7年4月1日現在)あり、いじめやパワハラ、解雇など仕事のあらゆる悩みを、面談か電話で相談できます。予約はいらず、無料です。 - こころの耳
働く人の心の健康のための厚生労働省のサイトです。電話は0120-565-455(平日17〜22時、土日10〜16時)。ラインとメールでの相談、ストレスのセルフチェックもあります。 - こころの健康相談統一ダイヤル
0570-064-556。受付の時間は都道府県ごとに違います。 - 社内の窓口
事業主には相談窓口を設ける義務があります。社内の窓口が使いにくいときは、外部の窓口を先に使ってかまいません。
相談するときは、日付、場所、誰が何をしたか、誰が見ていたかを書き留めたものがあると話が早くなります。手帳の端でもかまいません。あとから思い出して書くより、その日のうちに残したものが役に立ちます。
- 日付と時刻、場所(会議室、席、通信のやりとりなど)
- 何があったか。言われたことは、できるだけそのままの言葉で
- ほかに誰がいたか。見ていた人の名前
- そのあと自分がどうなったか(眠れない、仕事が進まないなど)
- 通信のやりとりは、消される前に控えを取っておく
休むという選び方もある
眠れない、朝になると具合が悪い、といった状態が続くときは、休むことを考えてください。業務外の病気やけがで仕事を休んだときには、健康保険の傷病手当金があります。
受け取るには、療養のために仕事に就けないこと、連続する3日を含んで4日以上仕事を休んだこと、その間の給与の支払いがないことが条件です。支給は支給開始日から通算して1年6か月まで、1日あたりの額は標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2が目安です。
辞めるか続けるかを決める前に、休んで考える道があります。判断は、眠れている状態でしたほうが確かです。
スピリチュアルな読み方の使いどころ
「この人とは学びの関係だ」「波長が合わないだけだ」という読み方は、相手を変えられないと分かっているときに、気持ちを置いておく場所として役に立ちます。それ自体を否定する必要はありません。
ただ、使う順番があります。繰り返し無視される、人前で叱責される、必要な情報を渡されない。こうしたことが起きているなら、まず記録して相談してください。スピリチュアルな読み方を、動かない理由にしないことです。
よくある質問
Q. 職場で孤立させられるのは、パワハラですか?
A. 厚生労働省の指針は「人間関係からの切り離し」の例として、「一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること」を挙げています。優越的な関係を背景とし、業務上必要な範囲を超え、就業環境が害されているかで判断されます。
Q. 相談しても、何も変わらないのではないですか?
A. 令和6年度は、労働局長による援助を終えた案件のうち58.8%が助言などで解決しています。いじめ・嫌がらせの相談は54,987件で13年続けて最多です。相談はめずらしいことではありません。
Q. どこに相談すればいいですか?
A. 総合労働相談コーナー(全国379か所、予約不要・無料)、働く人の心の相談窓口「こころの耳」(電話0120-565-455)、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)があります。
Q. 「エナジーバンパイア」は本当にいるのですか?
A. 学術的な定義は見つかりませんでした。一方、職場で無視されたり外されたりすることが、心身の疲れや仕事の満足度の低下と結びつくことは、26,767人分をまとめた分析で示されています。
Q. 人間関係のストレスは、みんな感じているものですか?
A. 令和5年の調査では、仕事でストレスを感じている人は82.7%で、内容として対人関係を挙げた人は29.6%でした。
Q. つらくて働けないときは、どうすればいいですか?
A. 健康保険の傷病手当金があります。連続する3日を含んで4日以上休み、その間の給与の支払いがないことなどが条件で、支給開始日から通算1年6か月まで受け取れます。
Q. 小さい会社なので、我慢するしかないのでしょうか?
A. 事業主にはパワハラを防ぐ措置をとる義務があり、中小企業も令和4年4月1日から対象です。社内の窓口が使いにくいときは、外部の総合労働相談コーナーを先に使ってかまいません。


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