いつも落ち着いていて、人に優しく、物にこだわらない人を見て「魂のレベルが高い人だ」と感じることがあります。自分はどうだろう、と気になる人もいるでしょう。
ここでは、「魂のレベル」や「霊格」という言葉がどこから来たのかを辞典と国立国会図書館の記録で確かめ、輪廻のもとの意味を紹介します。「自分は魂のレベルが高い」と感じることについての心理学の研究と、つらい気持ちを霊的な説明で避けてしまう「スピリチュアル・バイパス」もまとめます。
「魂のレベル」「霊格」という言葉

辞典によると、魂は生きものの体に宿って心の働きをつかさどると考えられるもので、肉体を離れても存在する不滅のものと信じられてきました。国立国会図書館で、書名に「魂のレベル」「魂レベル」を含む本を探すと、いちばん古いのは2005年の本で、ほかも2014年以降のものでした。
似た言葉の「霊格」は、もっと古くからあります。国立国会図書館のデジタル化された本を全文で探すと、1898年に姉崎正治が訳した宗教哲学の本の「神の霊格」や、1903年のキリスト教の牧師・海老名弾正の本など、明治の宗教哲学の言葉として使われていました。心霊研究では、1913年の福来友吉『透視と念写』に出てきます。「霊格を高めよ」という型の書名が目立つのは、1980年代の終わりからです。
輪廻は、もとは「抜け出すもの」
もとの記事は、魂レベルの考え方の由来としてヒンドゥー教や仏教の輪廻を挙げ、輪廻を「魂が経験を積んで成熟していく尺度」と説明していました。辞典によると、輪廻はサンスクリット語の「流れる」を意味する言葉の訳で、仏教では「生ある者が迷妄に満ちた生死を絶え間なく繰り返すこと」です。成長の階段ではなく、そこから抜け出すことが目指されてきました。
仏教は原則として、変わらない自己(我)がないとする立場から、霊魂の存在を説きませんでした。日本では古くから霊魂を「たま」と呼び、亡くなった人の霊が祖霊を経て神になるという考えが強くありました。古代ギリシャのプラトンは魂を不滅の真の自己と考え、古代エジプトでは「カー」が3つの霊魂の考えの一つとされていました。輪廻を魂の成長の段階と読み替える考えは、19世紀の神智学から現代のニューエイジへと続く、近代の西洋の流れから生まれたものです。
記事に出てきた人物
もとの記事は「19世紀後半から20世紀にかけて、エドガー・ケイシーやシルバー・バーチなどの霊媒師たち」と書いていました。百科事典によると、アメリカのケイシー(1877〜1945年)が自分を催眠状態にして質問に答える形のリーディングを始めたのは1909年ごろで、約1万5,000件を行いました。
シルバー・バーチは霊媒ではなく、イギリスの霊媒・編集者モーリス・バーバネル(1902〜1981年)を通して語ったとされる「霊」の名前です。日本語訳『シルバー・バーチの霊訓』は1985年から出ています。近代の心霊主義は、1848年にアメリカ・ニューヨーク州の一家で起きた物音の現象から広がったとされ、日本では1920年ごろ浅野和三郎が紹介しました。
魂に初心者・中級・上級の段階があると書いたのは、アメリカの催眠療法家マイケル・ニュートンの1994年の本です(日本語版は2000年)。出版社によると、その根拠は特別な催眠で29人が語った「生と生の間」の記憶でした。1994年の論文は、催眠などで引き出された前世の記憶は、そのときの期待や信念に沿って作り直されたものになりやすい、と報告しています。
「特徴」が当てはまると感じる理由
もとの記事は、感情が安定している、共感力が強い、物にこだわらない、使命感がある、といった特徴を挙げていました。どれも、多くの人が自分にも当てはまると思いやすい、望ましい性質です。95万人を超えるデータをまとめた2020年の分析では、人は自分を平均的な人より優れていると見る傾向がはっきりあり、それは能力より性格、悪い面よりよい面で強く出ていました。
霊的な実践が優越感を強めることも
霊的な修行をすれば自分へのこだわりが減る、と考えられがちですが、研究は逆の面も示しています。オランダの研究者が3つの調査(533人、2,223人、965人)で調べると、「霊的に自分は人より進んでいる」と感じる気持ちは、自分を特別だと思う気持ち(ナルシシズム)と結びついていました。エネルギー系の訓練を受けた人は、マインドフルネスの訓練を受けた人より、この気持ちが一貫して強くなっていました。
ヨガの受講者93人と瞑想をする162人を追った2018年の研究でも、ヨガや瞑想をした後のほうが、自分をよく見る偏りが大きくなっていました。2021年の追試でも、この結論は支持されています。もとの記事は「えらい・優れているという意味ではない」と書きながら、よくある質問で「魂レベルが高い人と低い人の違い」を説明していました。人を魂の高さで比べる見方は、こうした優越感につながりやすいものです。
つらさを「魂の学び」で飛ばさない
アメリカの心理療法家ジョン・ウェルウッドは1984年、霊的な実践をしている人の一部が、瞑想などを使って、向き合うべき気持ちや人生の課題を避けたり、早く飛び越えようとしたりしていることに気づき、それを「スピリチュアル・バイパス」と呼びました。その後、この傾向を測る尺度も作られています。
もとの記事は、困難にあったら「この経験から何を学べるだろう」と考え、すべての経験に魂の学びがある、と勧めていました。前向きに受け止めることが支えになる場面もありますが、つらさが続くときは、学びに言い換える前に、気持ちを人に話してください。厚生労働省の「まもろうよ こころ」には、電話や文字のやりとりで相談できる窓口がまとめられています。「魂のレベルを上げる」とうたう高額な講座や鑑定に誘われたときは、消費者ホットライン188に相談できます。
「魂のレベル」という言葉とのつきあい方
落ち着いていて人に優しい人は、確かにすてきです。けれども、その人を「魂のレベルが高い」と呼ぶより、どんな行動が自分にとってお手本になるのかを見るほうが、日々の暮らしに生かしやすいでしょう。自分や人を魂の高さで比べないことも、優しさの一つかもしれません。
例として、大野百合子さんの『見えない世界の歩き方 Go!Go!スピリチュアル』(永岡書店、2018年)の販売ページです。目次を確かめられなかったため、魂のレベルの話が載っているかは分かりません。
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よくある質問
Q. 魂レベルが高い人とはどんな人ですか?
A. 決まった定義はありません。「魂レベル」という書名が出てくるのは2005年以降で、似た「霊格」は明治の宗教哲学の言葉でした。
Q. 輪廻は魂が成長する仕組みですか?
A. 辞典では、仏教の輪廻は迷いの生死を繰り返すことで、そこから抜け出すことが目指されてきました。成長の段階とみるのは近代西洋の読み替えです。
Q. 魂レベルが高い人の特徴は当たっていますか?
A. 挙げられる特徴は多くの人が自分に当てはまると思いやすいものです。人は自分のよい面を平均より上と見る傾向があります。
Q. 瞑想やヨガで魂のレベルは上がりますか?
A. ヨガや瞑想の後で、かえって自分をよく見る偏りが強まったという研究があります。
Q. スピリチュアル・バイパスとは何ですか?
A. 霊的な実践を使って、向き合うべき気持ちや課題を避けたり飛び越えたりする傾向のことで、心理療法家ウェルウッドが1984年に名づけました。
Q. シルバー・バーチは霊媒ですか?
A. 霊媒はモーリス・バーバネルで、シルバー・バーチは彼を通して語ったとされる霊の名前です。



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