玄関に盛り塩を置く、お風呂に塩を入れる、葬儀から帰ったら塩で清める。塩は、日本の暮らしの中で、場や心を清めるものとして使われてきました。スピリチュアルの解説では、とくに「粗塩」を使うとよい、と紹介されることが多いようです。
ここでは、粗塩とはどんな塩なのか、塩で清める習わしがどこから来ているのか、盛り塩の由来とされる話の中身を確かめます。そのうえで、塩を置くときに見落としがちな、金属・植物・ペット・給湯器への注意をまとめます。
粗塩とは、どんな塩か

辞書では、粗塩(あらしお。「あらじお」とも)は、結晶の粗い、精製していない塩とされています。「添加物を含まない塩」という意味は、辞書の定義には入っていません。
塩事業センターによると、世界で作られる塩の3分の2は岩塩などから、3分の1は海水から作られています。日本では岩塩がとれないため、国内の塩のほとんどは海水が原料です。塩事業センターの精製塩は、メキシコの天日塩を溶かして煮詰め直したもので、塩化ナトリウムが99.5%以上です。にがり(塩を取ったあとに残る液で、主な成分はマグネシウム)を含む並塩でも、同センターの分析例では、塩化ナトリウムが97〜98%を占めています。
食用塩の表示の決まりでは、「天然塩」「自然塩」という言葉は使えず、「ミネラル豊富」も不当な表示の例として挙げられています。「粗塩のほうが浄化の力が強い」という説明も見かけますが、根拠は示されていません。清めに使うなら、手に入りやすい塩で十分です。
塩で清める習わしは、どこから来たか
神社本庁は、塩で清める習わしは、日本神話でイザナギの命が海の水で禊(みそぎ)をした話にもとづく、と説明しています。葬儀から帰ったときに塩をまくのは、日常と、葬儀という日常ではない時間とを分けるお清めを、形にして行うものだとされます。相撲の力士が土俵に塩をまくのも、清めの塩として知られています。
一方で、塩で清めることを、仏教の宗派すべてが行うわけではありません。真宗大谷派は、葬儀のあとの清め塩を迷信とはっきり書いています。どう扱うかは、家の宗派や考え方によって違う、と知っておくと、まわりの人と考えが違っても戸惑わずに済みます。
清めの塩が、神社の神道の考え方と、日々の暮らしの習わしとが重なったところにある、ということも覚えておきたい点です。盛り塩やお清めを取り入れるときは、「こうしないと悪いことが起きる」という怖れからではなく、気持ちを切り替える区切りとして行うと、無理なく続けられます。
盛り塩の由来とされる話
辞書は、盛り塩を、客商売の店が縁起を祝って、入口に塩を盛ること、と説明しています。由来としてよく紹介されるのが、中国の皇帝と羊の車の話です。
中国の歴史書『晋書』と『南史』には、皇帝の寵愛を得たい女性が、塩水を地面にまかせた、という話が出てきます。『南史』では、皇帝の車を引く羊が、塩水をなめようとして足を止めた、と書かれています。ただ、どちらも塩水をまく話で、塩を盛る話ではありません。この話が日本の盛り塩の由来かどうかは、確かめられていません。
塩を置くときに気をつけたいこと
- 湿気で溶ける
塩は湿度がおよそ75%を超えると水分を吸い、表面が溶けてきます。梅雨や浴室の近くでは、すぐに固まったり溶けたりします。 - 金属がさびる
塩分が付いたまま長く置くと、金属がさびる原因になります。玄関のドアやサッシ、金属の棚の上に、じかに置かないでください。 - 植物が枯れる
辞典の「塩害」の説明のとおり、塩分は植物を枯らすことがあります。台風のあとに海の塩を浴びた庭木が枯れることもあります。鉢植えや庭の近くに置かないでください。 - ペットがなめる
犬や猫が塩をたくさんなめると、吐いたり、けいれんを起こしたりする食塩中毒になることがあります。ペットの届かない場所に置きます。 - 給湯器と塩風呂
給湯器のメーカーには、塩分を含む入浴剤を使わないよう明記しているところがあります(故障の原因になるため)。塩風呂をするなら、給湯器の説明書を確かめてください。
玄関に盛り塩を置くときの手順
- 1. 玄関を掃除する
まず玄関の床とたたきを掃除して、靴を片付けます。盛り塩を置くのは、そのあとです。 - 2. 置く場所を決める
人が出入りするときに、足や荷物が当たらない場所を選びます。ドアの開け閉めで倒れないことも確かめます。 - 3. 小皿にのせる
白い小皿などにのせ、床やドアの金属にじかに塩が触れないようにします。 - 4. 形を整える
型を使うと、円すいや八角形にきれいに盛れます。形に決まりはないので、手で山にしてもかまいません。
盛り塩を置くことより、置く前に玄関を片付けることのほうが、毎日の気分には大きく効いてきます。置いたあとも、取り替えるたびに玄関を見直す習慣にすると、清めの習わしが、暮らしを整える手入れにつながります。
盛り塩の置き方と取り替え
- 小皿にのせて置く。金属や木の床に、じかに塩が触れないようにする
- 湿って固まったり、溶けたりしたら取り替える
- 使った塩は料理に使わない。地域のごみの出し方に従って捨てる
- 置き場所や数に決まった作法はない。続けやすい場所に、続けやすい量で置く
置く方角や数にこだわる解説もありますが、確かな出典は見つかりませんでした。それより、皿のまわりを毎回ふく、湿ったらすぐ取り替える、といった手入れを続けることが、玄関を清潔に保つことにつながります。清めの意味は、案外そこにあるのかもしれません。
取り替える日を、月のはじめや週末など、覚えやすい日に決めておくと続けやすくなります。小さな子どもやペットのいる家では、手の届かない棚の上に置くか、盛り塩はやめて、玄関の掃除を清めの習慣にするのも一つの方法です。
例として、八角形の盛り塩の型に、清め塩500gとヘラが付いたセットの販売ページです。
Moa Feteli(モアフェティ) 盛り塩セット 開運 素焼き お得用 八角 盛塩セット <大> + 清め塩500g + ヘラ 付き
※ 価格は投稿時点のものです。最新の価格はAmazonでご確認ください。
よくある質問
Q. 粗塩と精製塩は、何が違いますか?
A. 粗塩は結晶の粗い、精製していない塩です。精製塩は塩化ナトリウムが99.5%以上の塩です。にがりを含む並塩でも塩化ナトリウムが97〜98%を占める分析例があり、「ミネラル豊富」は不当な表示の例とされています。
Q. 清めに使うなら、粗塩でないといけませんか?
A. 粗塩のほうが清めの力が強いという根拠は示されていません。手に入りやすい塩で十分です。
Q. 盛り塩は、どのくらいで取り替えればいいですか?
A. 決まった日数はありません。塩は湿度がおよそ75%を超えると水分を吸うので、湿って固まったり溶けたりしたら取り替えてください。
Q. 塩風呂をしても大丈夫ですか?
A. 給湯器のメーカーには、塩分を含む入浴剤を使わないよう明記しているところがあります。追いだきのある給湯器を使っているなら、説明書を確かめてから行ってください。
Q. 盛り塩は、玄関のどこに置けばいいですか?
A. 方角や数に決まった作法の出典は見つかりませんでした。人の出入りで倒れない場所に小皿にのせて置き、ドアやサッシなどの金属に塩が触れないようにしてください。
Q. 盛り塩に使った塩は、料理に使えますか?
A. 使わないでください。玄関に置いた塩には、ほこりや湿気が入ります。取り替えた塩は、地域のごみの出し方に従って捨ててください。
Q. 葬儀のあとの清め塩は、必ずしないといけませんか?
A. 決まりではありません。神社本庁は、清め塩を日常と非日常を分けるお清めと説明していますが、真宗大谷派のように清め塩を迷信とする宗派もあります。家の宗派や考え方に合わせてください。



コメント