部屋の四隅で鈴を鳴らすと空気が清まる。スピリチュアルの解説では、鈴の音を使った浄化法がよく紹介されます。神社で鈴を鳴らした記憶と重なって、なんとなく納得してしまう人も多いはずです。
ここでは、神社の鈴が本来どんな意味で説明されているのか、日本で鈴がどう使われてきたのかを確かめます。そのうえで、部屋で鳴らす作法がどこから来たのかを見ていきます。
神社の鈴は、祓い清めと、神を招くためのもの

神社本庁は、拝殿の前に吊るされた鈴について、本坪鈴(ほんつぼすず)とも呼ばれ、銅や真鍮で作られていると説明しています。その音色で参拝者を敬虔な気持ちにさせ、祓い清め、神霊の発動を願うためのものとされています。
巫女が舞のときに手に持つ神楽鈴(かぐらすず)も、同じ意味を持つとされています。授与品として受ける鈴は、魔除けや厄除け、開運のためともいわれます。
「鈴は参拝に来たことを神様に知らせるため」という説明をよく見かけますが、神社本庁の説明には、そうした言葉は見当たりませんでした。神社本庁が挙げているのは、祓い清めることと、神霊の発動を願うことです。
日本の鈴の歴史
鈴は、とても古くから日本にあります。辞典によると、縄文時代にはすでに土で作った鈴とみられるものがあり、青銅の鈴は古墳時代に伝わったとされています。
- 馬の鈴
馬具につける鈴で、古墳から出土しています。 - 鈴鏡(れいきょう)
5世紀から6世紀にかけて作られた、ふちに鈴をつけた鏡です。日本独自のもので、腰にこの鏡をつけた巫女の姿の埴輪も見つかっています。 - 駅鈴(えきれい)
古代、公用で旅をする役人に渡された鈴です。大化の改新のころから、身分を示すしるしとして使われました。
鈴は、神をまつる場でも、道具としても、長く使われてきました。巫女の埴輪が腰に鈴鏡をつけていることは、鈴の音が古くから祭りと結びついていたことを示しています。
部屋で鳴らす作法の出どころ
鈴の浄化として紹介される作法には、次のようなものがあります。
- 部屋の四隅と中央で鳴らす
- 鳴らす前に窓を開けておく
- 使ったあとの鈴を月の光に当てて清める
- 満月や新月の日に行う
- 夜に鳴らしてはいけない
どれも、出どころをたどれませんでした。神社本庁や辞典の説明に出てくるのは、神社の鈴が参拝者を祓い清め、神霊の発動を願うものだ、ということまでです。家の中で鈴を鳴らして部屋を清める作法は、後から作られた方法だと考えるのが正確です。
神社の鈴が「祓い清める」と説明されていることが、家での浄化の話の土台になっているのかもしれません。ただ、神社の鈴は、神前で参拝する人が自分を清めるために鳴らすものとして説明されています。部屋や物を清める道具として説明されているわけではありません。同じ鈴でも、使う場と目的が違う、ということは知っておいてよいでしょう。
鈴の音で気持ちが切り替わる、という感じ方は本物です。掃除のあとや、朝の始まりに鈴を鳴らして区切りにするのは、悪くない習慣です。ただ、それを「目に見えない汚れが落ちる」と説明する根拠は見つかりませんでした。
風鈴やシンギングボウルとの関係
風鈴やシンギングボウルも「音で浄化する文化」として、鈴と同じ流れに並べられることがあります。
風鈴のもとは、寺のお堂の軒に下げる風鐸(ふうたく)です。暮らしの中では、音で涼しさを感じる道具として親しまれてきました。シンギングボウルについては、チベットの儀礼で使われていたという記録が見当たらない、という指摘があります。どれも音を出す道具ですが、出どころは別々です。
山では、鈴を過信しない
鈴が実際に役立つ場面として、山で熊に出会わないための熊よけの鈴があります。環境省の対応マニュアルも、山に入るときに鈴やラジオを持つことを勧めています。
ただし、同じマニュアルは、過信しないよう注意しています。座って休んでいるときや立ち止まっているときは鈴が鳴らないこと、沢の近くでは水の音で鈴の音がかき消されることが挙げられています。鈴は熊よけのお守りではなく、人の存在を知らせる道具の一つだということです。
家で鈴を、区切りとして使う
浄化という言い方にこだわらなければ、家で鈴を鳴らすことには分かりやすい使い道があります。音は、ある時間が終わって次の時間が始まることを、体に知らせる合図になります。学校のチャイムや、寺の鐘が時を告げてきたのと同じ働きです。
- 掃除を終えたら一度鳴らし、片づけの時間を締めくくる
- 仕事や勉強を始める前に鳴らし、気持ちを切り替える
- 寝る前の支度の最後に鳴らし、一日の終わりの合図にする
- 鳴らすのは一回か二回。回数や向きに決まりはないので、自分で決めてかまわない
こうして使うなら、作法の出どころを気にする必要はありません。自分で決めた合図として続けるほうが、作られた決まりに従うより長続きします。
鈴を使うなら
- 部屋で鳴らすのは、気持ちを切り替える区切りとして使う
- 集合住宅では、夜や早朝に大きな音を出さない
- 授与品の鈴は、受けた神社の説明に沿って扱う
- 山では熊よけの鈴に頼りきらず、ほかの対策と組み合わせる
鈴の音には、日本の祭りと信仰の長い歴史があります。その歴史を知ったうえで、家で鳴らす鈴を自分なりの区切りとして使うなら、それで十分に意味があります。
よくある質問
Q. 神社の鈴は、何のために鳴らすのですか?
A. 神社本庁は、拝殿の鈴(本坪鈴)の音色で参拝者を敬虔な気持ちにさせ、祓い清め、神霊の発動を願うためのものと説明しています。
Q. 鈴の音で部屋を浄化できますか?
A. 部屋で鳴らして清める作法は、出どころをたどれませんでした。気持ちを切り替える区切りとして使うのは悪くありませんが、目に見えない汚れが落ちるという根拠は見つかりませんでした。
Q. 部屋の四隅で鳴らす、満月に行う、という作法には決まりがありますか?
A. どれも出どころが見つかりませんでした。神社本庁や辞典の説明には出てこない、後から作られた方法と考えられます。
Q. 鈴はいつから日本にあるのですか?
A. 縄文時代に土で作った鈴とみられるものがあり、青銅の鈴は古墳時代に伝わったとされています。5〜6世紀には、ふちに鈴をつけた日本独自の鈴鏡も作られました。
Q. 熊よけの鈴は効果がありますか?
A. 環境省は山で鈴やラジオを持つことを勧めていますが、過信しないよう注意しています。立ち止まっていると鳴らず、沢の音でかき消されることがあります。
Q. 夜に鈴を鳴らしてはいけないのですか?
A. そうした決まりの出どころは見つかりませんでした。集合住宅では、近所への音の配慮として夜や早朝は控えるのが無難です。
Q. 神楽鈴と拝殿の鈴は、意味が違いますか?
A. 神社本庁は、神楽鈴も拝殿の鈴と同じく、祓い清め、神霊の発動を願う意味を持つと説明しています。
Q. 授与品の鈴は、どう扱えばいいですか?
A. 神社本庁は、授与品の鈴は魔除けや厄除け、開運のためともいわれると説明しています。扱い方は、受けた神社の説明に沿ってください。古くなったものの返し方も、その神社に尋ねるのが確実です。
Q. 家で鈴を鳴らすのは、意味がないのですか?
A. 部屋を清めるという根拠は見つかりませんでしたが、掃除の終わりや仕事の始まりの合図として鳴らすのは、気持ちを切り替える区切りになります。回数や向きは自分で決めてかまいません。
Q. 風鈴にも浄化の意味がありますか?
A. 風鈴のもとは寺のお堂の軒に下げる風鐸で、暮らしの中では音で涼しさを感じる道具として親しまれてきました。浄化の道具として使われてきたという出典は見つかりませんでした。


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