離れたいのに離れられない。同じような相手とばかり付き合ってしまう。そんな関係を「悪縁」と呼び、断ち切る方法を探している人もいるでしょう。
ここでは、「悪縁」という言葉の本来の意味を辞典で確かめ、江戸時代の縁切寺や、縁切りで知られる神社の由来を紹介します。同じような相手を選んでしまうことの研究と、交際相手からの暴力についての国の調査、相談先もまとめます。
「悪縁」の本来の意味

「悪縁」はもともと仏教の言葉で、辞典では「悪い結果をもたらす条件」「外的な悪い条件」と説明されています。仏教でいう縁は、結果を生む直接の原因(因)を助ける、まわりの条件のことです。平安時代の『往生要集』(984〜985年)には「煩悩は内からうながし、悪縁は外から引く」という意味の一節があります。
男女の関係では、江戸時代の浄瑠璃に、思うままにならない男女の関係、特に離れにくくなった縁という意味で使われています。似た言葉の「腐れ縁」は、離れようとしても離れられない関係を、批判的に、または自嘲して言うものです。もとの記事は悪縁を「魂の成長に合っていない縁」と説明していましたが、そうした意味はどの辞典にもありませんでした。書名に「悪縁」が入る開運の本が出てくるのは、国立国会図書館の所蔵では1998年からです。
江戸時代の縁切寺
江戸時代、妻の側から離婚することはほとんど認められていませんでした。そのなかで、妻が駆け込んで一定の期間を過ごすと離婚が成立したのが縁切寺です。幕府の領地で最後まで残ったのは、鎌倉の東慶寺と、いまの群馬県太田市にあった満徳寺の2つでした。
- 寺にいる期間は、東慶寺で24か月、満徳寺で25か月とされる
- 幕末には、寺が仲立ちして夫と話をつける示談の離縁がほとんどだった
- 東慶寺は1285年の開創で、江戸時代の終わりまでの150年で2,000人を超える女性が駆け込んだとされる
- 明治のはじめに縁切りの制度はなくなり、満徳寺は1872年に廃寺になった。跡地には太田市の縁切寺満徳寺資料館がある
縁切寺は、気持ちの上の「悪縁」ではなく、逃げ場のない結婚から女性が抜け出すための、現実の仕組みでした。
縁切りで知られる神社と縁切榎
京都の安井金比羅宮は、崇徳天皇が讃岐の金刀比羅宮で一切の欲を断って籠もったことから「断ち物の祈願所」とされてきた、と神社は説明しています。男女の縁のほか、病気や酒、たばこ、賭け事との縁を切る願いも受けていて、良縁で結ばれた夫婦が参っても縁が切れることはない、としています。
境内の「縁切り縁結び碑」は、高さ1.5m、幅3mの絵馬の形をした石です。形代(身代わりのお札)に願いを書き、碑の穴を表から裏へくぐって悪縁を切り、裏から表へくぐって良縁を結び、形代を碑に貼ります。
東京の板橋には「縁切榎」があります。江戸時代の地誌に、男女の悪縁を断とうとこの木に祈ると必ず験がある、と書かれ、嫁入りの行列が下を通ると縁が切れるとまで言われました。1861年に皇女和宮が中山道を通ったときも、わざわざ回り道を作って避けたことが記録から確かめられる、と板橋区は紹介しています。
同じような相手を選んでしまうのは
もとの記事は、同じパターンの恋愛をくり返すのは魂が何かに気づくよう促しているサインだ、と書いていましたが、出典は見つかりませんでした。ドイツで9年間追跡した調査では、元の恋人と今の恋人の性格に、偶然以上に似ているところがあり、人それぞれに相手の「タイプ」があるらしいことが分かっています。
2013年の研究では、独りになることへの恐れが強い人ほど、満足していない関係にも頼りがちで、自分から終わらせにくく、反応の薄い相手にも関心を持ちやすい傾向がありました。くり返しに気づいたら、魂のメッセージを探すより、「独りになるのが怖くて続けていないか」を振り返ってみるほうが手がかりになります。
その関係に暴力はありませんか
もとの記事は、相手のせいにせず自分の中を問い直す、すれ違いは双方に責任がある、突然連絡を断つと後悔する、と勧めていました。けれども、相手から暴力や支配を受けている場合、この勧めはとても危険です。
内閣府の令和5年度の調査では、交際相手がいた(いる)人の18.0%(女性22.7%、男性12.0%)が、体への暴力、人格を否定する暴言や行動の監視、お金を勝手に使われる、性的な強要のどれかを受けたことがありました。被害を受けた人の18.6%は、命の危険を感じていました。
- 誰にも相談しなかった人の23.5%が、その理由に「自分にも悪いところがあると思った」を挙げた
- 別れたいと思ったのに別れなかった人の理由は「相手が変わってくれるかもしれない」40.7%、「相手が別れることに同意しなかった」30.9%、「別れるとさみしい」27.2%
交際中の暴力は「デートDV」とも呼ばれます。殴る、蹴るだけでなく、ののしる、お金を要求する、性行為を強いることも含まれます。「自分にも悪いところがある」は、被害を受けても相談しなかった人の4人に1人近くが挙げた考えです。自分を責める前に、外の人に話してください。
DV相談+(プラス)0120-279-889(電話は24時間、チャットもあります)、DV相談ナビ #8008(近くの相談窓口につながります)。つきまといや脅しがあるときは警察相談専用電話 #9110、身の危険が迫っているときは110番へ。
縁を切るときに
暴力のない関係でも、別れを決めるのは大きなことです。気持ちを紙に書き出すと少し整理できますが、研究で分かっている効果は大きくありません。信頼できる友人や家族に話す、必要なら専門の相談窓口を使うなど、ひとりで抱えないことが大切です。縁切り祈願は、昔の人が苦しい関係から離れる気持ちを固めるために頼ったものとして、背中を押してもらう場に使うのもよいでしょう。
例として、「運命の人」に出会うための考え方とワークを紹介したエッセイ『運命の人 あなたに「愛の奇跡」を起こす本』(田宮陽子、マキノ出版、2019年)の販売ページです。目次には、悪縁や縁切りを扱った章はありません。
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よくある質問
Q. 悪縁とはどういう意味ですか?
A. もとは仏教の言葉で「悪い結果をもたらす条件」のことです。男女については、思うままにならない、離れにくくなった関係を指して使われてきました。
Q. 悪縁を断ち切るサインはありますか?
A. サインとされるものの出どころは見つかりませんでした。同じような相手を選ぶのは、人それぞれの好みの「タイプ」で説明できるという研究があります。
Q. 縁切寺とは何ですか?
A. 江戸時代、妻が駆け込んで一定の期間を過ごすと離婚が成立した尼寺です。鎌倉の東慶寺と群馬の満徳寺が知られています。
Q. 縁切り神社に夫婦で行っても大丈夫ですか?
A. 安井金比羅宮は、良縁で結ばれた夫婦やカップルが参っても縁が切れることはない、と説明しています。
Q. 別れたいのに相手が変わってくれる気がして別れられません。
A. 国の調査でも、暴力を受けて別れたいと思ったのに別れなかった人の4割が、同じ理由を挙げていました。DV相談+(0120-279-889)に相談してみてください。
Q. 相手にひどいことをされても、自分も悪い気がします。
A. 国の調査では、被害を誰にも相談しなかった人の23.5%が同じように考えていました。自分を責める前に、相談窓口や信頼できる人に話してください。



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