付き合ってしばらくたち、会っても前ほど胸が躍らない。話す内容も決まってきて、関係が先に進んでいる気がしない。こうした時期を「停滞期」と呼び、魂が成長するための準備の時間だ、宇宙からの問いかけだ、と説明するスピリチュアルの記事もあります。
ここでは、まず「停滞期」に近い言葉を辞典で確かめ、付き合いが長くなると関係の満足度がどう変わるのかを、16万人あまりのデータをまとめた分析や、同じ夫婦を何年も追った調査で見ていきます。そのうえで、別れに向かう関係で満足度がどう下がるかを調べた研究、二人で新しいことをすると関係がどう変わるかの実験と、別の研究者による確かめ直し、けんかの受け止め方を書き直す短い方法を紹介します。
「停滞期」は辞典にない。近いのは「倦怠期」

コトバンクで引ける辞典には、「停滞期」という見出しはありませんでした。「停滞」は、一か所にとどまって動かないこと、物事が順調に進まないことで、似た言葉として「踊り場」「横ばい」「足踏み」が挙げられています。踊り場は階段の途中の平らなところです。止まっているように見えても、上り下りの途中にある、という見方もできます。
恋愛や結婚の時期を表す言葉として辞典に載っているのは「倦怠期」です。辞典は、飽きて嫌になる時期で、特に夫婦の間柄についていう、と説明しています。日本国語大辞典が最初の用例に挙げているのは、1930年に婦女界社の編集部がまとめた『結婚心得帖』で、「一年目の倦怠、三年目の危機」という一節が引かれています。結婚生活が長くなると気持ちが落ち着いてくる、ということは、少なくとも90年以上前から言われていたことになります。
付き合いが長くなると、満足度はどう変わるか
心理学者のビューラーらは2021年、恋人や夫婦の関係の満足度を調べた165の調査、16万5,039人分のデータを一つにまとめて分析しました。同じ二人を何年も追った調査の結果をまとめると、満足度は同じ関係の中で少しずつ下がっていく傾向があり、下がり方が最も大きいのは、年齢の若い時期と、付き合い始めて最初の数年でした。
一方、年齢や付き合いの長さが違う人どうしを比べると、平均の満足度は、いったん低くなったあと、再び高くなる形をしていました。年齢でいうと、40歳前後の人の平均が最も低く、65歳ごろまでは年齢が上の人ほど高くなっていました。ただし、これは別々の人を並べて比べた結果で、一組の二人がこの道すじをたどる、という意味ではありません。子どもがいるかどうかや、満足度の測り方によって平均の高さに違いがありましたが、結婚しているかどうか、国、性別などでは同じ形が見られました。
結婚1年目の522組を10年間追った1999年の調査でも、結婚生活の質は高いところから始まり、最初の数年でかなり速く下がって、いったん落ち着き、また下がる形でした。実の子どもだけと暮らす夫婦は、ほかの夫婦より下がり方が急でした。ただ、10年目まで答え続けたのは93組で、途中で調査から抜けた組が多いことは差し引いて考える必要があります。
「誰にでも来る」とは限らない
もとの記事は、恋愛の停滞期は誰もが一度は経験する時期だ、と書いていました。平均を見れば満足度は下がっていきますが、一人ひとりを見ると話は変わります。
新婚の464人に4年間で8回答えてもらった調査では、満足度の変わり方は5つの型に分かれ、その中には、高いまま下がらない型もありました。妻のほうが夫より、満足度の高い型に入りやすい傾向がありました。別の新婚251組(502人)の4年間の調査では、多数の人が高く安定した満足度のままで、下がっていたのは、結婚したときの満足度が比較的低かった組でした。どの型に入るかは、4年間の変化よりも、最初の時点での関係の問題の多さや攻撃のあるなしといった違いで、よく見分けられました。
平均が下がっていくからといって、誰もが同じように下がっていくわけではありません。付き合いが長くなれば誰でも停滞するものだ、と今の違和感を流してしまうより、何が気になっているのかを具体的に見るほうが役に立ちます。
待っていれば戻る、とは言えない
もとの記事は、停滞期は再出発のための準備期間で、無理に動こうとせず、最善の流れに委ねていれば、停滞期はいつしか流れに変わる、と書いていました。けれども、研究からはそうは言えません。
ビューラーとオルトは2025年、イギリス、オーストラリア、ドイツ、オランダの全国規模の長期調査を使い、のちに別れた人たちの満足度の移り変わりを、似た条件の別れなかった人たちと比べました。別れた人は、調査ごとに987〜3,373人でした。満足度は別れが近づくにつれて下がり、その下がり方は、ゆるやかに下がる段階と、急に下がる段階に分かれていました。急な段階が始まるのは、調査によって別れの0.58〜2.30年前、およそ7か月前から2年4か月前でした。満足度の変化は、付き合い始めてからの年数よりも、別れまでの残りの年数のほうが、ずっとよく説明できました。
別れを告げられた側の人は、告げた側の人より、急に下がり始めるのが遅く、そのあと大きく下がっていました。また、生活全体の満足度では、こうした別れの前の下がり方ははっきりしませんでした。暮らし全体には満足していても、恋人や夫婦の関係の満足度だけが下がっていることがある、ということです。
この研究は、満足度が下がっている一組の二人が、ただ落ち着いてきただけなのか、別れの前の段階にいるのかを見分ける方法を示したものではありません。ただ、関係の中で起きている下がり方には、時間がたてば自然に戻るとは限らないものがある、ということは言えます。研究者たちは、関係を良くするための手助けをいつ始めるかを考えるうえで大切な結果だ、としています。
マンネリは、9年後の満足度に響く
ミシガン大学などの研究者は、結婚7年目の夫婦123組に、この1か月に結婚生活がマンネリになっていると感じたことがどれくらいあったかを尋ね、9年後の16年目にもう一度調べました。対象は、アメリカのデトロイト周辺の、どちらも初婚の夫婦です。
7年目にマンネリを強く感じていた人ほど、16年目の満足度が低くなっていました。逆に、7年目の満足度から16年目のマンネリを予測することはできませんでした。研究者は、退屈が二人の親しさを損ない、それが満足度を下げる、と説明しています。同じ人を長く追った調査ではありますが、退屈が原因だと実験で確かめたものではありません。
二人で「わくわくすること」をする実験
では、何をすればよいのでしょうか。心理学者のアーサー・アロンらの「自己拡大」という考え方では、付き合い始めは新しさとときめきで自分が広がっていく感じが強いが、月日とともにそれが薄れて退屈が生まれる、とされます。そこで、二人で新しくてわくわくすることを一緒にすれば、その経験が相手や関係と結びつく、と考えます。これを確かめた研究を、年の順に並べます。
- 1993年・夫婦53組・10週間
夫婦を3つに分け、二人とも「わくわくする」と評価した活動、二人とも「楽しい」と評価した活動を、それぞれ毎週1時間半ずつ10週間してもらい、残りの組は特別なことをしませんでした。活動をした2つの組と何もしなかった組の差は小さく、はっきりしませんでした。一方、わくわくする活動の組は、楽しい活動の組より満足度が高くなり、その差は中くらいでした。 - 2000年・2つの調査と3つの実験
新聞の質問紙と家を訪ねる調査では、二人でする事がわくわくするものである人ほど満足度が高く、その間を「関係の退屈」がつないでいました。実験では、二人の手首と足首を片側ずつ結び、障害物を越えながら長いマットの上を這って往復する、といった7分間の課題をしてもらいました。一人ずつボールを転がすような単調な課題の組と比べると、3つの実験すべてで、課題の前後の関係の質の上がり方が大きくなりました。課題の前後の会話を録画して、組み分けを知らない人が評価しても同じでした。 - 2013年・101組・4週間
別の研究者たちが、形を変えて確かめました。わくわくする活動の案を受け取り、週に90分ずつ一緒にするよう勧める4週間のオンラインの取り組みの組と、順番待ちの組に分けたところ、終わったときには、取り組みの組のほうが、わくわく感、前向きな気分、関係の満足度が高くなっていました。取り組みの組は4か月後も、始める前より高いままでした(この比較は組の中だけのものです)。 - 2019年・3つの研究
長く付き合う二人が、自分を広げてくれる新しい活動を一緒にすると、性的な欲求が高まり、それを通して満足度も高くなっていました。前向きな気分や一緒にいた時間、そのときの親しさだけでは説明できませんでした。 - 2025年・仮想現実の2つの実験
仮想現実の中で、新しい活動とありきたりの活動をしてもらった実験(141組)では、新しい活動をした組のほうが退屈が少なく、親しさが高くなりました。ただ、自分が広がった感じと関係の満足度は上がりませんでした。
1993年の研究では、活動をした2つの組を合わせて何もしなかった組と比べても、はっきりした差は出ませんでした。差が出たのは、わくわくする活動と楽しい活動の間です。一緒に過ごす時間を増やすことより、何を一緒にするかが大事だ、ということになります。ただし、1993年と2000年の研究には、この考え方を唱えたアロン自身が加わっています。2026年にアロンらが書いた総説も、提唱者によるまとめです。仮想現実の実験のように、満足度までは上がらなかった結果もあります。
どんな活動がよいかに決まりはありません。研究で使われたのは、二人ともが「わくわくする」と思えることでした。行ったことのない土地に出かける、二人とも初めての料理や運動に挑む、といったことが考えられます。
けんかを「第三者の目」で書き直す
もとの記事は、停滞期には気持ちをノートに書き出すのがよく、書くこと自体がエネルギーを整える浄化の行為だ、と書いていました。浄化という説明の根拠は見つかりませんでしたが、書くことで結婚生活の質を保てた、という実験はあります。
アメリカのフィンケルらは、2年間の調査に参加した夫婦120組の半分に、2年目に、7分ずつ3回、合わせて21分の短い課題をしてもらいました。最近のけんかを、二人のどちらの味方でもなく、関わる全員のためを願う第三者ならどう見るか、と考えて書く課題です。1年目は、どちらの組も結婚生活の質が下がりました。2年目、課題をしなかった組では下がり続けましたが、課題をした組では下がらなくなりました。けんかにまつわる苦しさが減ったことを通した効果だった、と研究者たちは分析しています。
- 最近、相手と意見が食い違った場面を一つ思い出す
- 二人のどちらの味方でもなく、二人のためを願う第三者なら、その場面をどう見るかを考えて書く
- 次に意見が食い違ったときも、その見方を思い出せるようにしておく
幼い子どもを育てるカナダの140組で、同じ考え方を試した2025年の実験もあります。けんかの見直し方を学んだ組は関係の質が上がり、それを通して子育ての協力もうまくいっていました。ただ、けんかの回数そのものは減りませんでした。けんかをなくす方法というより、けんかを受け止めるときのつらさを小さくする方法と考えるとよさそうです。
1回の講座でも、別れが少なかった
婚約中や新婚の174組を、けんかと問題の解決の技術を学ぶ講座、受け入れと支え合いの技術を学ぶ講座(どちらも4回で15時間)、技術の練習をしない1回だけの「関係に目を向ける」講座、何もしない組、に分けて3年間追った研究があります。
3年のうちに別れた割合は、何もしない組が24%だったのに対し、講座を受け終えた組はどれも11%で、技術を学ぶ講座と1回だけの講座の間に差はありませんでした。別れた割合はおよそ半分です。一方で、技術の講座どうしを比べると、受け入れと支え合いの講座の組で前向きなふるまいが早く減るなど、思わぬ影響も出ていました。二人の関係についてあらためて考える機会を持つことにも意味がある、と読める結果です。
連絡が途絶えたとき、怖さがあるときは「停滞期」ではない
もとの記事は、ツインレイやソウルメイトとの関係では、二人が成長するために一時的に距離ができる「サイレント期間」が訪れる、と書き、停滞期の一つとして扱っていました。けれども、相手から説明なく連絡が途絶えるのは、心理学では関係の終わらせ方の一つとして研究されていて、運命の相手を強く信じる人ほど、こうした終わり方を受け入れやすいという結果もあります。拒まれているのに連絡を続けると、法律の上で問題になることもあります。くわしくはツインレイのサイレント期間の記事で紹介しています。
また、相手の言葉や態度が怖い、行動を細かく制限される、といった関係は、停滞ではなく暴力や支配の問題です。待つことや、自分の内側を見つめ直すことを勧める考え方は当てはまりません。交際相手からの暴力の相談先は、悪縁を断ち切るにはの記事にまとめています。
裸足のグラウンディングと、カードについて
もとの記事は、裸足で芝生の上に立つグラウンディングで、乱れたエネルギーが整う、とも勧めていました。地面に触れることの研究には質の問題があり、素足で歩くときには、けがから入る破傷風や、糖尿病の人の足の傷に気をつける必要があることを、グラウンディングの記事で紹介しています。外を歩いて気分を変えること自体は悪くありませんが、靴をはいたままでかまいません。
停滞期にオラクルカードを取り入れる人が多い、とも書かれていましたが、それを示す調査は見つかりませんでした。カードを引くのは、自分の気持ちを言葉にするきっかけとして使う程度にとどめ、相手の気持ちは相手に確かめるのが確実です。
恋人どうしの関係が続くしくみを心理学の研究から知りたいときは、松井豊さん監修の『対人関係を読み解く心理学』(サイエンス社、2019年)があります。目次によると、第5章「恋愛関係の維持」で、「相互依存する恋人たち」、コミットメント(関係を続けようとする気持ち)と関係の維持、その近年の研究、コミットメントのよくない面、「別れられない」コミットメントを取り上げています。
よくある質問
Q. 恋愛の停滞期は誰にでも来るものですか?
A. 平均を見ると、付き合いが長くなるにつれて満足度は下がる傾向があります。ただ、新婚の夫婦を4年間追った調査では、多数の人が高い満足度のまま変わらず、下がっていたのは最初から満足度が比較的低い組でした。
Q. 停滞期と、別れの前触れは見分けられますか?
A. のちに別れた人の満足度は、調査によって別れの7か月前から2年4か月前ごろに急に下がり始めていた、という研究があります。ただし、ある二人がどちらにいるかを見分ける方法は示されていません。気になることは二人で話してみてください。
Q. 停滞期を抜けるには、何をすればいいですか?
A. 二人ともがわくわくすると思えることを一緒にすると満足度が上がった、という実験があります。けんかを第三者の目で見直して書く短い課題で、結婚生活の質が下がらなくなった研究もあります。
Q. 停滞期はどれくらい続きますか?
A. 一組の二人の停滞がどれくらい続くかを示した研究は見つかりませんでした。同じ二人を追った調査では、付き合い始めて最初の数年に満足度が最も大きく下がる傾向がありました。
Q. 相手から連絡が来なくなったのも停滞期ですか?
A. 説明なく連絡が途絶えるのは、心理学では関係の終わらせ方の一つとして研究されています。拒まれているのに連絡を続けると、法律の上で問題になることもあります。


コメント