好きな人に送ったメッセージに既読が付いたのに、返事が来ない。嫌われたのか、何か意味があるのかと、何度も画面を見てしまうことがあります。
ここでは、既読スルーをサインとする話の出どころを確かめ、既読という機能がどうして生まれたのかを紹介します。返信の速さについての研究、返事を待つ側と返せない側の気持ちを調べた研究、連絡を続けるときに知っておきたい法律と相談先もまとめます。
既読スルーを「サイン」とする話

もとの記事は、既読スルーを、相手が無視しているのではなく、縁が次のステージに進む前の「間」の時間かもしれない、宇宙が「今は行動より準備の時」と伝えているサイン、ツインレイやソウルメイトとの「テスト期間」の可能性、などと説明していました。けれども、「静止の時期」という言い方の出典は見つかりませんでした。連絡が途絶える時期を指す「サイレント期間」も、国立国会図書館の本の書誌に出てくるのは2024年と2025年の2冊だけの、新しい言い方です。
もとの記事は「と言われています」とぼかしてはいましたが、相手の事情を考える前に、まず「サイン」として受け取るよう導く書き方でした。返事が来ない理由を考えるには、既読という機能そのものを知っておくのが近道です。
「既読」は、震災のときの安否確認から
ラインの運営会社は、ラインは東日本大震災をきっかけに、大切な人とつながる手段として生まれた、と説明しています。震災で家族や友人の安否を確かめられなかった経験から、電話回線が止まってもインターネットで連絡が取れるサービスを考え、2011年6月23日に公開したといいます。
運営会社の社長を務めた森川亮さんは、2017年のインタビューで、既読の機能も震災のときの安否確認から考えたと振り返っています。非常時には、1日2回決まった時刻に連絡するといった約束は守れない。「見た」というしるしがあれば十分で、困ったことがあれば何か書き込むはずだ、という考えだったそうです。既読の印は、読んだことを知らせるために作られたもので、返事をしない理由を表すものではありません。
辞典によると、既読スルーは、俗に、ラインで既読になったメッセージに返事をせず放っておくことで、既読無視ともいいます。国立国会図書館で、題名に「既読スルー」を含む図書でいちばん古いのは2015年の小説です。総務省の2025年度の調査(13〜79歳の1,800人)では、ラインを使っている人は92.9%で、10代から60代では9割を超え、70代でも77.8%でした。多くの人が毎日使う道具なので、読んだ時と返事をする時のずれは、だれにでも起こります。
返信の速さは、相手に合わせて決まっていく
大学生196人に直近のラインのやりとりを尋ねた研究では、自分の返信にかかった時間の中央値は4分、相手からの返信は5分で、自分と相手の返信の時間には強い関係がありました。「返信すべき最低限の時間」は、中央値も最も多い答えも30分でした。別の調査(84人)では、早く届いたメッセージには平均4.3分で、遅く届いたメッセージには平均64.5分で返していました。研究者は、返信の速さや長さは相手に合わせて釣り合っていく傾向があり、その背景に、早く返してもらったことへの負い目があると考えています(2023年)。
大学1年生9人へのインタビュー(2014年)では、既読無視かどうかは受け取る側の判断しだいで、かなり短い間隔でも既読無視とみなされることがありました。質問に答えない既読無視は責められやすい一方、雑談なら返事がなくても気にしないという声もあり、あまり親しくない相手からの既読無視ほど心配になる傾向がありました。
大学生22人の実験(2017年の学会発表)では、1人目が速く返し、2人目が60秒後に返す条件で2人目の印象が下がりましたが、順番を逆にした条件では差が出ませんでした。研究者は、遅さそのものより、先に経験した速さが基準になったためと考えています。待つ時間の長さの感じ方は、それまでのやりとりに左右されます。
返事を待つ側と、返せない側
高校生155人に、親しい友人に遊びの誘いを送ったのに返事がない場面を想像してもらった研究(2021年)では、人との関係に強い不安を抱きやすい人ほど、恐れや悲しみを強く感じていました。待つつらさは、相手の事情だけでなく、自分の不安の感じやすさにも左右されます。
返せない側の気持ちを調べた研究もあります。女子大学生183人に、グループのラインで返事を求められて返せないでいる場面を尋ねた研究(2018年の学会発表)では、恋人や好きな人がいるグループ、年上の人がいるグループで、短い時間のうちに不安や罪悪感が生じていました。恋愛のグループと友人のグループでは、既読を付けたまま待たせるほうが、未読のままより罪悪感が早く生じました。デンマークの学生の研究(2017年)でも、既読の通知は、既読を付けないための工夫や、アプリを何度も確かめること、不安と結びついていました(少人数の調査です)。返事をしていない側も、気にしていることがあるのです。
連絡を続けるとき、終わったとき
もとの記事は、しばらくたっても連絡がなければ軽いフォローのメッセージを送るのも一つ、と書いていました。一度連絡してみること自体は問題ありません。ただ、ストーカー規制法では、恋愛感情などを満たす目的で、拒まれたのに連続して電話をかけたり、メールや交流サイトのメッセージを送ったりすることは「つきまとい等」に当たります。同じ相手に繰り返し、相手に不安を覚えさせるような方法で行うと「ストーカー行為」になります。警察庁によると、2025年のストーカー事案の相談等は22,881件で、相手が交際相手(元を含む)のものが8,910件と最も多くなっています。
説明なしに連絡を断って関係を終えることを、研究ではゴースティングと呼び、恋愛の相手からこれを経験した大人は、アメリカの先行研究で13〜23%とされています。返事が長く来ないときは、関係が終わった可能性も考え、自分の暮らしに目を向けることも大切です。
相手からの連絡が止まらない、怖いと感じるときは、警察相談専用電話 #9110 に相談できます(緊急のときは110番)。占いのやりとりが長引いて高い支払いを求められたときは、消費者ホットライン188に相談してください。
カードや占いを使う前に
もとの記事は、オラクルカードやタロットカードで「今の恋愛の流れ」を確かめる方法を勧め、最後に恋愛のオラクルカードを紹介していました。そのカードは国立国会図書館に記録がなく、書誌を確かめられなかったので、ボタンを心理学の本に替えました。国民生活センターには、占いサイトでやめたいと言うと「もう少しだ」「最後まで受けないと不幸になる」と引き止められ、高い料金を払ったという相談が寄せられています。「宇宙から成功を引き寄せられる」と信じる度合いが高い人ほど、危険の大きい投資に引かれやすく、破産の経験も多かった、という研究もあります(相関の研究です)。
返事のない時間は、相手の気持ちを想像しすぎず、自分の気持ちを書き出したり、信頼できる人と話したりして過ごすと、少し楽になります。恋愛を心理学から考えた本には、越智啓太さんの『恋愛の科学 出会いと別れをめぐる心理学』(実務教育出版、2015年)などがあります。
よくある質問
Q. 既読スルーにはスピリチュアルな意味がありますか?
A. サインとする話の出典は見つかりませんでした。既読の印は、読んだことを知らせるために作られたものです。
Q. 既読スルーされたら、脈なしということですか?
A. 返信の速さはやりとりの中で相手に合わせて決まっていく傾向があり、既読無視と感じる間隔も人や場面によって違います。それだけで判断はできません。
Q. 返事が来ないとき、何度も送ってもいいですか?
A. 拒まれたのに連続して送ると、ストーカー規制法の「つきまとい等」に当たることがあります。
Q. 返事をしない側は、何も感じていないのですか?
A. 返せないまま既読を付けていると、未読のままより罪悪感が早く生じる、という調査があります。
Q. 占いで今の流れを確かめてもいいですか?
A. 占いサイトでやりとりが長引き、高い料金を払ったという相談が国民生活センターに寄せられています。困ったときは消費者ホットライン188に相談してください。


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