好きな人と話しているとき、その人のことを考えたとき、ふいに腕に鳥肌が立つ。特別な縁のしるしでは、と感じる人もいるでしょう。
ここでは、鳥肌が立つ仕組みを辞典で確かめ、「感動して鳥肌が立つ」という言い方がいつごろ広まったのかを調べた資料を紹介します。心が動いたときの鳥肌の研究、体のドキドキを好意と取り違えやすい「吊り橋効果」、寒気が続くときの受診の目安もまとめます。
鳥肌が立つ仕組み

辞典によると、鳥肌は、寒さや恐怖、強い感動などで皮膚の立毛筋という小さな筋肉が縮み、毛が立って皮膚がぶつぶつになる現象です。立毛筋は交感神経に支配されているので、自分の意思とは関係なく起こります。交感神経が強く緊張すると鳥肌が立ちやすく、大事な場面の前の武者震いにもたいてい鳥肌が伴う、と辞典は書いています。発熱の直前にも起こります。
2020年のマウスの研究では、鳥肌をつくる立毛筋と交感神経が、毛を生やす幹細胞のすみかになっていて、毛の生え替わりにも関わっていることが分かりました。鳥肌の仕組みは、ただの名残ではないのかもしれません。
感動で「鳥肌が立つ」はいつから
「鳥肌が立つ」は、もとは寒さや恐ろしさで使う言葉でした。文化庁の平成13年度「国語に関する世論調査」は、「余りのすばらしさに鳥肌が立った」と「余りの恐ろしさに鳥肌が立った」のどちらを使うかを尋ねています。
- 全体では「すばらしさ」が22.8%、「恐ろしさ」が46.8%、「どちらも使う」が17.8%
- 感動の意味でも使う人(「すばらしさ」と「どちらも」の合計)は40.6%
- 20代では55.9%が感動の意味でも使い、60歳以上では32.0%だった
小学生向けの国語辞典に「鳥肌が立つほどすばらしい演奏」という例文を載せたところ、大人の読者から削除すべきだという意見が届いたこともあったそうです。その後に改訂された国語辞典では、『広辞苑』第6版や『三省堂国語辞典』第6版など、感動で鳥肌が立つ意味を加えるものが増えました。北海道大学の研究者が朝日新聞の1984年から2014年の記事を調べると、「鳥肌が立つ」の用例1,747件のうち、感動や興奮の意味が78.48%を占め、1990年代ごろから恐怖などの意味を上回っていました。野球の記事が特に多かったそうです。
感動の鳥肌の研究
音楽を聴いて背筋がぞくっとする感覚は「チル」と呼ばれ、研究されています。チルを感じるとき、脳では食べ物などの快感にも反応する報酬の領域が働き(2001年)、感動が頂点に達したときにはドーパミンが出ていました(2011年)。
日本の大学生154人を調べた2017年の研究では、音楽でぞくっとしたことも泣いたこともない人が11人いて、感じ方には個人差があります。皮膚をカメラで撮った実験では、目に見える鳥肌が出たのは参加者の40%で、鳥肌が出たときの34%は本人が気づいていませんでした。「ぞくっとした」感覚と、実際に肌が粟立つことは、同じではないということです。強い音楽体験の調査では、体の反応として挙がったのは涙が24%、寒気や震えが10%、鳥肌が5%だったと紹介されています。
好きな人の前で鳥肌が立つのは
好きな人を見たときや考えたときの鳥肌を直接調べた研究は、見つかりませんでした。近い研究として、人とのつながりが急に強まったと感じたときの「胸がいっぱいになる」感情を、研究者は「カーマ・ムタ」と名づけて調べています。19か国3,542人の研究では、この感情には、胸が温かくなる、目がうるむ、寒気や鳥肌、のどが詰まる感じがよく伴っていました。
好きな人との距離が縮まったと感じた瞬間の鳥肌は、国を越えて見られる「心を動かされた」反応として説明できます。ただし、それは自分の側の感動で、相手も同じ気持ちだという証拠ではありません。
ドキドキを好意と取り違える「吊り橋効果」
1974年の有名な実験では、揺れる高い吊り橋の上で女性の調査員に声をかけられた男性は、低い固い橋の上の男性より、その女性に後で連絡しようとすることが多くなりました。1998年に多くの実験をまとめた分析では、体の高ぶりは、原因がはっきりしていても好意の判断に影響し、原因があいまいなほど影響が強いことが示されました。
鳥肌やドキドキを「この人が特別だから」と読みたくなりますが、緊張や寒さ、その場の雰囲気など別の原因から来ていても、目の前の人への好意と取り違えやすいのです。鳥肌が立ったから運命の相手、と決めてしまう前に、少し落ち着いて相手を見てみてください。このボタンで紹介している心理学の本も、出版社の紹介で「愛のつり橋効果の種明かし」を内容に挙げています。
「魂の縁」「波動の共鳴」の説明について
鳥肌は魂のレベルの縁や、波動が共鳴しているサインだ、と説明されることがありますが、出典は見つかりませんでした。健康商品などでいう「波動」は、物理学の波動とはまったく別のもので、科学的に確かめられていない、と物理学者の菊池誠さんは説明しています。守護霊のサイン、恋愛では繰り返し起きるのが特徴、といった説明にも根拠はありませんでした。
寒気が続くときは受診を
鳥肌は、熱が出る前の寒気でも起こります。辞典によると、感染などで体温の目標が上がると、熱を逃がさないように皮膚の血管が縮み、立毛筋が縮んで鳥肌になり、震えで熱をつくります。顔が青白くなり、体がガタガタ震えるものを悪寒戦慄といいます。
沖縄県立中部病院の医師らの研究では、急な発熱で救急外来に来た526人のうち、全身が震えるほどの寒気があった人は、寒気がなかった人に比べて、血液に菌が入っている危険が12.1倍でした。上着がほしい程度の軽い寒気でも1.8倍、厚い毛布がほしい程度では4.1倍で、寒気が強いほど危険が高くなっていました。
体が震えるほどの寒気、熱、意識がぼんやりする、息切れ、首の痛みやこわばりがあるときは、すぐに医療機関を受診してください。医師向けの事典の家庭版は、熱が24〜48時間以上続くときは医師に連絡し、3〜4日を超えるときは診察を受けるよう勧めています。恋愛のサインだと考えず、体の声として受け止めてください。
鳥肌とのつきあい方
好きな人を思って鳥肌が立つのは、心が強く動いたしるしで、それ自体はすてきなことです。けれども、それは相手の気持ちや二人の相性を教えてくれるものではありません。鳥肌を大切な感情の記録として受け止めつつ、相手とはふだんの言葉や行動で、少しずつ気持ちを確かめていきましょう。
よくある質問
Q. 好きな人を思うと鳥肌が立つのはなぜですか?
A. 強く心が動くと、交感神経を通して立毛筋が縮み、鳥肌が立ちます。人とのつながりを強く感じたときの感情に、鳥肌がよく伴うという研究もあります。
Q. 鳥肌は運命の人のサインですか?
A. そう確かめた研究はありません。体の高ぶりは、別の原因でも目の前の人への好意と取り違えやすいことが分かっています(吊り橋効果)。
Q. 感動で「鳥肌が立つ」と言うのは間違いですか?
A. もとは寒さや恐怖の言葉でしたが、文化庁の平成13年度の調査で4割が感動の意味でも使っていて、辞書にも加えられるようになりました。
Q. ぞくっとしたのに鳥肌が出ていないことがあります。
A. 「ぞくっとした」感覚と、実際に肌が粟立つことは同じではないと、実験で確かめられています。
Q. 寒気と鳥肌が続きます。
A. 熱が出る前の寒気かもしれません。体が震えるほどの寒気や高い熱があるときは、すぐに受診してください。
Q. 鳥肌は波動が合ったサインですか?
A. 健康商品などでいう波動は、物理学の波動とは別のもので、科学的に確かめられていません。


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