カードを1枚引いて、そこに書かれた言葉を読む。今の自分にぴったりだと感じることもあれば、何を伝えているのか分からず戸惑うこともあります。
ここでは、「オラクル」という言葉の本来の意味と古代の神託を辞典で確かめ、占いに使うカードの歴史をたどります。だれにでも同じ言葉が自分のことに感じられる心理の研究、引き直したくなるときのこと、占いサイトのトラブルもまとめます。
「オラクル」は神のお告げ、神託

辞典によると、「オラクル」は英語から来た外来語で、意味は「神のお告げ。神託。託宣」です。1914年の外来語辞典にすでに載っています。もとの記事は「神託」「啓示」を意味する言葉と書いていましたが、辞典の語義に「啓示」は入っていません。啓示は、人の力では知ることのできない宗教的な真理を神が示すことで、別の言葉です。
古代ギリシアのデルフォイの神託では、巫女ピュティアが神託を告げ、依頼する人は男性の神官を通して質問しました。巫女が大地の割れ目から立ちのぼる霊気を吸って神の言葉を語った、という言い伝えは、今では一般に信用されていないといいます。神託所は、キリスト教を国の宗教としたテオドシウス1世のもと、4世紀の終わりに閉じられました。その神殿に刻まれていたといわれるのが、「汝自身を知れ」という言葉です。
日本にも、くじで神の意思を問う習わしがありました。1428年に将軍の足利義持が後継ぎを決めないまま亡くなると、石清水八幡宮でのくじの結果に従って弟の義円が家督を継ぎ、のちの足利義教になりました。番号の付いた棒を引いて吉凶の紙を受け取る今のおみくじの形は、中世より古くはさかのぼらないようだ、と百科事典は書いています。
占いのカードの歴史は新しい
もとの記事は、オラクルカードを、古代から人が求めてきた神のメッセージを受け取る「現代的なツール」としていました。けれども、占いのカードの歴史は、古代の神託ほど古くはありません。カード遊びは14世紀にスペインへ伝わったとされ、占いを主な目的に作られたデッキでいちばん古いのは、1665年のイギリスのものとされます。
1799年にドイツのニュルンベルクで出た「希望のゲーム」の36枚は、のちのルノルマン・カードと同じ絵柄でした。ルノルマンの名を付けたデッキは、占い師ルノルマンが亡くなったあとの1840年代に出たもので、本人がこのカードを作ったり使ったりした歴史上の証拠はありません。「オラクルカード」という名前の商品は、確かめられた範囲では、エンジェルナンバーを広めたドリーン・バーチューの1999年の英語のデッキが早い例です。国立国会図書館の書名で確かめられる範囲では、日本語の「オラクルカード」は2008年のものが早く、書名にこの言葉を含む資料は今31件あります。
だれにでも同じ言葉が、自分のことに感じられる
一枚ずつのカードに書かれた言葉は、同じデッキを買った人すべてに同じです。それでも自分へのメッセージに感じられるのは、だれにでも当てはまる説明を自分のことだと受け取る「バーナム効果」で説明できます。研究をまとめた1985年の総説によると、一般的な説明が受け入れられるかどうかは、自分に関係があると思えるか、好ましい内容かで決まります。もとの記事が魅力に挙げていた「ポジティブなメッセージ」は、まさに受け入れられやすい形です。
48人の実験(1988年)では、同じ一般的な性格の説明でも、親しい友人どうしで受け取った組のほうが、初対面の組より正確だと評価し、よく覚えていました。相手の反応を見ながら言葉を言い直して、心を見抜いたように感じさせる「コールドリーディング」も、出発点はこの効果だとされます。
日本の研究(2005年)では、女性誌の占いの文章を使った4つの研究で、悪い内容や、運命として変わらないものとして書かれた内容が「当たった」と判断されやすく、占いを信じやすいのは、権威に従いやすいからではなく、解釈が柔軟だからだと示唆されています。日記を付けてもらった別の研究では、占いを見ずに出来事を思い出して「当たった」と感じた経験が、全体の当たった感じに影響していました。
第一印象を大切にする、本当の理由
もとの記事は、カードを見た第一印象こそが自分へのメッセージで、最初に引いたカードこそ必要なメッセージだ、という考え方を紹介していました。これには別の説明ができます。迷っているときにコイン投げのような偶然の道具を使うと、示された選択肢を選んだ場面をはっきり思い描き、自分の気持ちが強まる、という実験があります(2019年、オンラインで78人と87人の小さな研究)。カードがメッセージを運んでくるというより、出た言葉に自分がどう反応したかで、本音に気づくのだと考えられます。決めるのは、カードではなく自分です。
もとの記事の「毎日引くと直感力が磨かれる」には、根拠が見つかりませんでした。研究によると、直感が当てになるのは、規則性があり、結果を確かめながら学ぶ機会がある場面に限られます。偶然に引くカードには、当たり外れを確かめる仕組みがありません。「左手で引くと直感に繋がりやすい」にも出典がありません。左右の大脳はおもに体の反対側の運動を受け持ちますが、1,011人の脳の画像を調べた研究では、人ごとに右脳型・左脳型に分かれるという見方は支持されませんでした。
何度も引き直したくなるとき
もとの記事は、引き直しをしないよう勧めていました。その勧めはよいのですが、理由は「最初の一枚こそ必要なメッセージ」という出典のない考えでした。不安を減らそうとして何度も確かめると、かえって記憶のはっきりさと自信が下がる、という実験があります(2003年)。ストレスが強いときには、状況を自分で動かしたい気持ちの強さによって、縁起かつぎの行動の差が大きくなった、という研究もあります(2002年)。カードの引き直しを直接調べた研究は見つかりませんでしたが、何度も引きたくなるのは、カードの問題というより、不安が強くなっているしるしかもしれません。
家族や友人のためにカードを引くときは、親しい人からの言葉ほど当たっていると受け取られやすいことを覚えておきましょう。病気や妊娠、お金、人の生死にかかわることはカードで判断せず、医療機関などの専門家に相談するよう伝えてください。もとの記事の、月の光やセージ、音叉でカードを浄化する方法、カードが手から飛び出したら答え、という話は、出どころが見つかりませんでした。
占いサイトや鑑定のトラブル
国民生活センターは、占いサイトのトラブルの問題点として、無料のつもりが有料のやりとりに誘導される、自分だけに向けられたような言葉のメッセージが実際には多くの人に届いている、数字や記号を延々と送らされて高額になる、個人情報を入れると思いがけず会員登録される、を挙げています。宝くじの高額当選に導くと言われ、特定の言葉を1文字ずつ送るよう指示されて、2週間以上続けても結果が出ず、合わせて50万円あまりを払った例も紹介されています。
電話占いを無料の時間だけ使うつもりが途中で切れずに高額を請求された、占いアプリが無料なのは最初の3日間だけだった、という相談もあります。2025年には、スマートフォンの広告から占いサイトに登録した60代の人が、登録料約150円のつもりで、海外の事業者の定額の契約の料金を3回分、合わせて約1万5千円引き落とされていた、という例が紹介されました。
無料と書かれていても、名前や生年月日、カードの番号を安易に入れないでください。料金がかさんで困ったときは、消費者ホットライン188に相談できます。
カードを使うなら
カードの言葉は、自分の気持ちを振り返るきっかけとして使うと、無理がありません。デルフォイの神殿の「汝自身を知れ」のように、答えはカードの外ではなく、自分の側にあります。もとの記事が紹介していたカードは、国立国会図書館に記録がなく、正規の版かどうかも確かめられなかったので、紹介をやめました。占いのカードの歴史を知る本には、レティシア・バルビエ『タロットと占術カードの世界』(鏡リュウジ監訳、原書房、2022年)があり、タロットとカード占いの歴史を図版で解説しています。
よくある質問
Q. オラクルカードのメッセージは、だれからのものですか?
A. カードの言葉は同じデッキを買った人すべてに同じで、偶然に引いたものです。自分に当てはまると感じるのは、バーナム効果などで説明されています。
Q. 「オラクル」とはどういう意味ですか?
A. 辞典では、神のお告げ、神託、託宣のことです。「啓示」は語義に入っていません。
Q. 最初に引いたカードが答えですか?
A. そう確かめた研究はありません。偶然の結果を前にすると自分の気持ちがはっきりする、という実験があり、決めるのは自分です。
Q. 毎日引くと直感力が磨かれますか?
A. 確かめた研究は見つかりませんでした。直感が当てになるのは、結果を確かめながら学べる場面に限られます。
Q. 占いサイトの料金がかさんで困っています。
A. 消費者ホットライン188に相談してください。自分だけに向けたようなメッセージが、実際には多くの人に届いている例もあります。


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