道ばたやベランダに、白くやわらかな羽根が一枚落ちていた。悩みごとがあるときや、大切な人を亡くしたあとだと、何かのしるしではないかと感じることがあります。
ここでは、白い羽根を天使のしるしとする話がどこから来たのかを確かめ、反対に白い羽根が臆病者のしるしだった英国の歴史を紹介します。日本の白い鳥の言い伝え、亡くなった人を身近に感じる体験の研究、羽根の持ち主の見当のつけ方、拾うときの決まりもまとめます。
羽根を天使のしるしとする話は、2000年代の天使本に

もとの記事は、白い羽根を「天使が近くにいる証拠」とする言い伝えが西洋に広く根づいていて、世界中の文化や宗教に白い羽根を神聖なしるしとする歴史がある、と書いていましたが、出典はありませんでした。
確かめられた範囲では、天使は自分がいるしるしとして思いがけない場所に羽根を残す、という文が、エンジェルナンバーを広めたドリーン・バーチューが2006年に出した英語の天使の入門書にあります。2009年に出た別の著者の天使の本にも、しるしを頼んだときに白い羽根を見つける、という話が出てきます。これより古い出どころは確かめられませんでした。なお、バーチューは2017年に洗礼を受け、それまでのニューエイジの考えから離れたと公表しています。
英国では、白い羽根は臆病者のしるしだった
英語には、白い羽根を臆病者のしるしとする言い方があります。1811年の俗語辞典は、闘鶏で尾に白い羽があるのは本物の闘鶏の血筋ではない証拠とされたから、と由来を説明しています。1902年には、臆病だとして白い羽根を4枚受け取る主人公の小説『四枚の羽根』も出ています。
第一次世界大戦が始まった1914年8月30日、イングランドのフォークストンで、海軍の提督が30人の女性に、軍服を着ていない男性へ白い羽根を渡させました。恥をかかせて入隊させるねらいで、この「白い羽根」の運動は各地に広がりました。1916年9月には、けがなどで除隊した兵士に銀の記章が配られ、私服で戻った兵士が間違われないようにされました。同じ白い羽根が、100年前の英国では、渡されると恥になるしるしだったのです。羽根の意味は、時代と場所によって大きく変わります。
天使に翼が描かれるのは4世紀から
もとの記事は、キリスト教の伝統では天使は白い翼を持つ存在として描かれてきた、と書いていました。百科事典によると、キリスト教美術の天使は一対の翼をもつ人の姿で表され、古代ギリシア・ローマの翼のある勝利の女神ニケが原型と考えられています。けれども初期には翼がなく、ローマのカタコンベの受胎告知の絵(3世紀ごろとされます)の天使ガブリエルも、翼のない人の姿です。
翼のある天使が現れるのはコンスタンティヌス帝の時代からで、残っている古い例は4世紀のものです。6世紀の写本にも翼のない天使が描かれています。翼の色が白と決まっていたという資料は見つかりませんでした。
日本の白い羽と白い鳥
日本には「白羽の矢が立つ」という言い方があります。人身御供を求める神が、望む娘の家の屋根にしるしの白羽の矢を立てるという俗説から来た言葉で、今は多くの中から選ばれるという意味で使われます。文化庁の2017年度の調査では、「白羽の矢が立つ」を使う人が75.5%、本来の言い方ではない「白羽の矢が当たる」が15.1%でした。
650年には、白いキジが献じられたことから年号が「白雉(はくち)」と改められました。白いキジは突然変異でまれに現れ、古代にはめでたいしるしとされました。ハトは、白いハトを中心に、古くから八幡神の使いと考えられてきました。『古事記』『日本書紀』では、倭建命(やまとたけるのみこと)が亡くなったあと白い鳥になって飛び去り、この話を由来とする神社が各地にあります。白い鳥を、めでたいしるしや魂の姿とする言い伝えは、日本にもあるのです。もとの記事の、白鷺を神の使いとする話は辞典では見つかりませんでした。
亡くなった人を身近に感じる体験
もとの記事は、大切な人を亡くしたあとの白い羽根を、その人の魂が伝えに来てくれたサインとし、世界中の多くの人が体験を報告していると書いていました。イギリスのウェールズ中部で、配偶者を亡くした293人に面接した1971年の研究では、半数近くが、亡くなった配偶者の姿や気配を感じる体験をしていました。死別から10年以内に多く、何年も続くこともあり、研究者は、死別に伴うふつうの、助けになる体験だとしています。そうした体験を人に話すことは、まれでした。
アメリカの介護施設で夫を亡くした46人を調べた1985年の研究では、28人が同じような体験をしていて、そのうち24人が、よい体験だった、助けになったと答えました。白い羽根を見て亡くなった人を思い出し、慰められるのは自然なことです。ただ、こうした研究は、羽根がその人から届いたことを示すものではありません。
どの鳥の羽根か
鳥は、繁殖の時期のあとなどに、決まった順序で羽が生え替わります(換羽)。街で見つかる白い羽根の持ち主として考えられるのは、市街地や公園、神社やお寺にいるドバト(白い個体もいます)、川や水田にいるコサギなどのシラサギです。冬なら、背と翼のほかは白いユリカモメが、公園の池などにも来ます。ハクチョウの渡来地の近くなら、ハクチョウの羽根かもしれません。
羽の軸がほとんどない、ふわふわした小さな羽は「綿羽(めんう)」といい、ふつうの羽の下に生えて体を温めています。羽毛布団やダウンの服にも、この羽毛が使われています。部屋の中で見つけた小さな白い羽は、布団や服から出たものかもしれません。
拾うとき、持ち帰るときの決まり
死んだ鳥のそばの羽根や、汚れた羽根には素手で触らず、触ったときは手を洗ってください。種の保存法では、希少野生動植物種に指定された鳥の羽毛は、拾ったものでも、人にあげたり、もらったり、売ったりすることが原則として禁じられています(羽毛が対象になるのは、ハト科やタカ科、キジ科などの9つの科の指定された種です)。ドバトのような街の鳥の羽根は当たりませんが、珍しい鳥の羽根をフリマアプリなどに出すのは避けてください。
アメリカでは、1918年にできた渡り鳥条約法で、保護される渡り鳥の羽根を持っているだけで違法になります。ワシの羽根は、国の保管所が、国の認める先住民の部族に登録した人だけに、宗教のために配る仕組みがあります。海外の旅行先では、羽根を拾って持ち帰らないようにしましょう。もとの記事の、先住民が白い羽根を特に神聖な儀式で用いてきたという話は、出典が見つかりませんでした。
白い羽根を見つけたら
白い羽根を見つけたら、どの鳥のものか調べてみるのも楽しみ方の一つです。季節と場所を手がかりにすると、見当がつきやすくなります。羽根を見分ける図鑑には、藤井幹さんの『羽根識別マニュアル』(文一総合出版)があり、2023年の増補改訂版は315種を載せ、拾った羽根の洗い方やしまい方も紹介しています。
よくある質問
Q. 白い羽根は天使のしるしですか?
A. 羽根を天使のしるしとする話は、2000年代の英語の天使本に出てきます。確かめた研究はなく、英国では白い羽根が臆病者のしるしとされた歴史もあります。
Q. 亡くなった人からのメッセージですか?
A. 羽根が故人から届いたと確かめた研究はありません。配偶者を亡くした人の半数近くが姿や気配を感じたという研究があり、慰めになる体験とされています。
Q. 白い羽根はどの鳥のものですか?
A. 街ならドバトの白い個体やシラサギ、冬ならユリカモメなどが考えられます。ふわふわの小さな羽は綿羽で、布団や服から出たものもあります。
Q. 拾って持ち帰ってもいいですか?
A. 死んだ鳥のそばの羽根には素手で触らないでください。希少種に指定された鳥の羽毛は人にあげたり売ったりできず、アメリカでは渡り鳥の羽根を持つだけで違法です。
Q. 白以外の色の羽根にも意味はありますか?
A. もとの記事の、グレーは平和、ピンクは愛といった色の意味には、出典が見つかりませんでした。


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