水を替えなくてよく、いつまでも色が変わらない造花は、忙しい人や一人暮らしの部屋でも飾りやすい花です。けれども風水では生花がよいと聞き、造花は飾らないほうがいいのか、飾るならどこに置けばいいのか、と迷う人もいるでしょう。
ここでは、まず「造花をどこに飾るか」に、消防や自治体の資料で確かめられる理由と、風水の説とを分けて答えます。そのうえで、風水の記事や本が造花をどう書いているか、日本で造花がどう使われてきたかを辞典やお寺の案内で確かめ、本物の花と造花を見比べた研究、室内の植物と気分の研究、造花のほこりの手入れを紹介します。
先に答え:造花を飾る場所

確かな理由があるものと、風水の説によるものを分けて並べます。
- ストーブやろうそく、コンロのそばに置かない
東京消防庁は、住まいの火事を防ぐ心得として、ストーブの周りに物を置かないよう呼びかけています。造花は布や紙、プラスチックなどでできていて、燃える素材です。仏壇のろうそくや、季節の暖房器具の近くは避けます。(確かな理由) - 窓辺の強い日差しを避ける
染めた布は日光で色があせやすく、窓辺に透明な花瓶やガラス玉を置くと、日光が集まって物を焦がすことがあります。色あせはカーテン風水の記事、日光が集まる火事は寝室の鏡の記事で紹介しています。(確かな理由) - 浴室やトイレなど、湿気のこもる所は手入れを多めに
ダニやカビは湿気を好み、東京都の資料は部屋の湿度が60%を超えないよう勧めています。湿った所の造花はほこりと湿気が一緒にたまりやすいので、置くなら換気と拭き掃除をこまめにします。水回りのカビの話は洗面所の風水の記事にあります。(確かな理由) - 寝る場所の真上に、重い花器や額を掛けない
地震で落ちたとき、寝ている人に当たる位置だからです。もとの記事は、ベッドの真上や枕元に大きな造花を置くのを避けるよう書いていましたが、理由は気の話だけでした。(確かな理由) - 手が届いて、拭きやすい所に
ほこりは、アレルギーのもとになるダニのえさになります。高い棚の奥より、ふだんの掃除で手が届く所のほうが、きれいに保てます。(確かな理由) - 方角に合わせた色を選ぶ
風水の説です。もとにある五行の考えでは、東は青、南は赤、西は白、北は黒、中央は黄が配されます(日本語の「あお」は緑も含みます)。(風水の説)
もとの記事は、東にグリーンや白、薄いピンク、西に白やゴールド、北のトイレに白や淡いラベンダーを勧め、方角に合った色を選んでいるかをチェックリストの条件にもしていました。けれども、東の白、西のゴールド、北の白やラベンダーは、古典の色の配当と食い違っていて、方角と運の組み合わせにも出典は見つかりませんでした。北東と南西に白や黄を勧める説明も、五つの方角の配当の表には出てきません。方角と運の割り当てが辞典に見当たらないことは、ぬいぐるみと風水の記事にまとめています。また、もとの記事は北東の鬼門と南西の裏鬼門を、風水で気がよどみやすい方角としていましたが、鬼門を忌む決まりは日本の家相で育った考えです。
風水の記事や本では、造花の評価が分かれる
もとの記事は、造花は気を発しないか死んだ気をもたらすと考える流派もあるが、大切なのは清潔さだと多くの風水家が伝えている、と書いていました。どちらにも出典はありませんでした。実際に、書き手や監修者の分かる記事を読み比べると、言い分は分かれています。
- 「悪いわけではないが、ほこりに注意」
開運花風水師が監修した楽天の特集ページ(2021年)は、造花やドライフラワー、プリザーブドフラワーが悪いわけではないものの、生花でない花から生の気は出ず、ずっと飾るとほこりや汚れで運気を下げる、として生花を勧めています。枯れた花からは死の気が出る、とも書いています。 - 「花風水に使うのは生花に限る」
小学館の育児情報サイトに占星術家が書いた記事(2023年)は、花風水で使う花は生花に限る、と書いたすぐ後で、プリザーブドフラワーなどはよく、ドライフラワーは死んだ気を発するのでなるべく使わない、としています。造花には触れていません。 - 「生花が続かないなら、花の写真を」
李家幽竹さんの監修で、2015年に『幸運の扉を開く花風水フォトブック』(世界文化社)が出ています。出版社の紹介によると、生花を絶やさず飾れればいちばんよいが続けるのは難しい人に向けて、写真から花の力をもらう、という本で、切り取って飾れるカードが付いています。
どれも占いの立場から書かれた記事や本で、確かめられた決まりではありません。国立国会図書館の目録では、書名に「花風水」が入る本は1997年から出ていて、2001年から2002年にかけて李家幽竹さんや小林祥晃さんの本が続き、2019年まで少なくとも8冊ありました。それぞれの本が造花をどう扱っているかまでは、確かめられませんでした。
古い風水の書物に、部屋に飾る花の決まりはない
住まいの吉凶を見る中国の古い書物『宅経』を上下巻とも調べると、花が出てくるのは下巻の1か所だけでした。家の外のある方位について、常に清らかに保ち、林に連なり、花の咲く木がこんもり茂るとよい、と書く部分で、敷地や庭の話です。南東の外には園や池、竹を作るとよい、とも書いていますが、部屋の中に飾る花や、生花と造花の違いには触れていません。
もとの記事は風水を、中国に古くから伝わる環境学・哲学のひとつと書いていましたが、辞典では、占いの技術である術数の一派、陰陽家の術、または中国の伝統的な自然観・環境観と説明されています。風水の効き目を調べた研究についてはリビングの風水の記事で紹介しています。
日本の造花は、仏前の供え物であり、祝いの花だった
「造花は死んだ気」という説明とは反対に、日本では造花が、仏さまに供える花や、婚礼などの祝いの花として作られてきました。辞典とお寺の案内で、その流れをたどります。
- 奈良時代から平安時代
百科事典は、日本では奈良時代のころにすでに造花が使われた記録があると書いています。絹や紙、金箔を花の形に切り抜いて屏風などに貼る「剪綵(せんさい)」という手工芸があり、正倉院に残っています。万葉集の歌にもうたわれ、当時はあや絹で作られたといわれ、枕草子には梅の造花が出てきます。国語辞典が「造花」という言葉の最も古い用例に挙げるのは、平安時代の終わりの『今昔物語集』で、さまざまな造花を瓶に差した、という場面です。 - 薬師寺の花会式
奈良の薬師寺では、毎年3月25日から31日の修二会で、十種の造花を本尊の薬師如来に供えるため、この行事を「花会式(はなえしき)」と呼びます。寺の伝えでは、1107年に堀河天皇が皇后の病気の回復を祈り、回復した翌年に皇后が女官に十種類の造花を作らせて供えたのが始まりとされます。今も造花は寺の近くに代々住む2軒の家が一つずつ手作りし、合成の染料を使わず、薬草などで染めています。東大寺のお水取りなど、古いしきたりの法会にも造花が使われてきました。 - 江戸時代
本格的に発達したのは江戸時代で、「お細工物」と呼ばれました。宮中の御用造花師や町の造花師が現れ、雛飾りの右近の橘と左近の桜、節句の菖蒲、婚礼の蓬莱や高砂の飾り、江戸の名物になった花かんざしなどを作りました。江戸の京橋には、婚礼用の造花を専門にする造花師もいたと百科事典は書いています。 - 明治から戦後
明治に入ると、洋装が広まるとともに、服に付ける造花が急に発達しました。明治の終わりには、女学校の教科書や家庭向けの造花の手芸の本が次々に出ています(1903年から1908年に少なくとも6冊)。第二次世界大戦の後には、プラスチックの「香港フラワー」が出回りました。形や色が変わりにくく、汚れを洗い落とせるのが特徴とされます。 - 大正時代からの花輪
葬儀や開店祝いに贈る花輪は、大正時代に葬儀社の発案で広まった習慣で、ほとんどに造花が使われる、と百科事典は書いています。造花は、弔いの場にも祝いの場にも置かれてきたことになります。
もとの記事は、枯れた雰囲気や死を連想させるドライフラワーと造花を混ぜて飾るのは避ける、と書いていました。そう感じるなら分けて飾ればよいことですが、造花そのものが日本で不吉なものとされてきたわけではありません。
本物の花と造花で、気分は違うのか
生花と造花を、実際に見比べてもらった研究があります。千葉大学の研究者らが、千葉県立の高校の生徒40人に、プランターに植えた本物の黄色いパンジーと、ポリエステルでできた黄色いパンジーの造花を、3分ずつ見てもらいました(2人1組で順番を入れ替えています)。本物を見たときは、造花のときより、心拍のゆらぎで測る、交感神経の働きを表す指標が下がり、気分の評価でも「快適」「リラックスした」「自然な」と感じられていました。
ただし、対象は高校生だけで、同じ比べ方の追試は見つかりませんでした。本物のパンジーには弱い香りもあり、見た目のほかに香りの違いが混ざった可能性もあります。研究費は、農林水産省の農林水産政策研究所から出ていました。本物の花のほうが落ち着く、という結果は一つの研究のものと受け止めてください。
本物でなくても気分に働いた例もあります。オランダの病院の待合室で、患者457人を対象に、本物の植物、植物のポスター、何もなし、を交互に置いた実験では、本物でもポスターでも、何もないときより感じるストレスが低くなりました。効果は小さく、待合室が魅力的に感じられたことで一部が説明されました。造花を使った研究ではありませんが、部屋を心地よく整えること自体に意味がある、と読めます。
室内の植物の研究をまとめた2022年の分析では、植物があると、血圧の下の値が少し下がり、学業成績が上がっていましたが、脳波や注意力にははっきりした差がなく、指標ごとに2〜3件の研究しかまとめられていませんでした。花を贈られた女性は必ず目元まで笑い、3日後の気分もよかった、という2005年の研究もあります。
一方、「植物は空気をきれいにする」は、生花を選ぶ理由になりません。鉢植えが空気中の化学物質を取り除いたという実験をまとめ直した2020年の論文によると、ふつうの部屋の換気と同じ働きをさせるには、床1平方メートルあたり10鉢から1000鉢が必要でした。
風水の効き目を調べた研究では、病院の一人部屋の画像をオンラインで見比べてもらった2024年の試験(558人)で、風水に沿って作り直した部屋は、心地よさと人の支えを感じることを通して、間接に不安を下げていました。不安が直接下がったのは、研究の根拠に基づいて設計した部屋でした。方角や色の決まりそのものを確かめた研究ではありません。
猫を飼っている家では、生花のユリを飾らないでください。猫がユリやワスレグサ(デイリリー)の仲間を口にすると腎不全になることがあり、アメリカの中毒相談の記録を調べた研究では、飼い主の27%しかその毒性を知りませんでした。口にしたかもしれないときは、症状がなくても早めに動物病院に相談してください。
造花のほこりの手入れ
もとの記事は、2週間に1回程度、ブラシや乾いた布でほこりを払うよう勧めていましたが、回数の出典は見つかりませんでした。東京都のぜん息の予防の資料は、ダニのえさになるチリがたまらないよう整理整頓と掃除を心がけ、掃除機をかけたり水拭きをしたりしてほこりを取り除き、洗えるものは洗うよう勧めています。ダニが増えやすい温度と湿度、掃除機のかけ方の目安は、ぬいぐるみと風水の記事で紹介しています。
- 乾いた布で払うより、軽く湿らせた布で拭き取るほうが、資料の勧める水拭きに近いやり方です
- プラスチックの造花は、汚れを洗い落とせると辞典にあります。布や紙でできたもの、接着剤で組み立てたものは、水に強いかを製品の表示で確かめてから洗います
- 花瓶や器も一緒に拭きます。湿った所に置いた造花は、ほこりと湿気が一緒にたまりやすいので、手入れを多めにします
- 生花と組み合わせるなら、花瓶の水をこまめに替えます。病棟の花瓶の水からは、病気の原因になりうる細菌が多く見つかった、という1975年の研究があります(傷の感染との結びつきは見られませんでした)
もとの記事は、シルクなど天然素材に近い質感の造花は自然のエネルギーに近い雰囲気を持つ、とも書いていましたが、出典は見つかりませんでした。造花の素材は布、紙、プラスチックなどさまざまで、さきほどの研究で使われた造花はポリエステル製でした。素材は、手入れのしやすさと燃えにくさで選ぶほうが確かです。季節ごとに飾る場所を見直すなら、その日を拭き掃除の日にすると、気持ちよく続けられます。
部屋にいるとせきやくしゃみ、鼻水が続く、ぜん息の発作が増えたといったときは、ほこりやダニが関わっていることがあります。掃除で様子を見るだけにせず、医療機関で相談してください。
風水の考え方を、掃除やインテリアから一通り知りたいときは、紫月香帆さん監修の『神さまが教える風水の教科書』(ナツメ社、2014年)があります。目次は、おうちの掃除、開運インテリアの選び方、開運行動の習慣、オフィス、方位、吉方位の六つの章に分かれています。造花について書かれているかは確かめていません。
よくある質問
Q. 風水では、造花はよくないのですか?
A. 風水の記事でも分かれていて、「悪いわけではないが、ほこりに注意」とするものと、「花風水に使うのは生花に限る」とするものがあります。古い風水の書物に、部屋に飾る花の決まりは見当たりませんでした。日本では造花が、寺の本尊に供える花や祝いの花として作られてきました。
Q. 造花はどこに飾ればいいですか?
A. ストーブやろうそくのそば、窓辺の強い日差し、寝る場所の真上は避け、手が届いて拭きやすい所に飾ります。湿気のこもる浴室やトイレに置くなら、換気と拭き掃除を多めにします。方角に合わせた色は風水の説として取り入れてください。
Q. ドライフラワーやプリザーブドフラワーはどうですか?
A. ドライフラワーは死んだ気を発するので避ける、とする記事がある一方、悪いわけではないとする記事もあり、決まった答えはありません。どれも、ほこりをためないことと、火や強い日差しから離すことは同じです。
Q. 造花のほこりは、どう取ればいいですか?
A. 乾いた布で払うより、軽く湿らせた布で拭き取るほうが、東京都の資料が勧める水拭きに近いやり方です。プラスチックの造花は洗えますが、布や紙、接着剤を使ったものは製品の表示を確かめてください。部屋の湿度は60%を超えないようにします。
Q. 本物の花と造花で、気分は変わりますか?
A. 高校生40人に本物と造花のパンジーを見比べてもらった研究では、本物のほうが交感神経の働きを表す指標が下がり、快適でリラックスしたと感じられていました。ただし研究は一つだけです。病院の待合室では、植物のポスターでも感じるストレスが下がった研究があります。


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