オブシディアンは、黒くてつやのある石です。パワーストーンの解説では「最強の浄化石」「魔除けの石」として紹介されます。日本では黒曜石(こくようせき)と呼ばれ、こちらの名前なら学校で習った覚えがある人も多いでしょう。
ここでは、この石が何でできているのか、なぜ石器に使われたのか、日本のどこで採れるのか、そして「魔除け」と呼ばれる話がどこまでたどれるのかをまとめます。
鉱物ではなく、火山岩

黒曜石は、辞書では「流紋岩やデイサイトとほとんど同じ化学組成をもつガラス質の火山岩」と説明されています。鉱物ではなく、岩石です。マグマが結晶をつくるひまもなく急に冷えて固まったもので、中身はガラスと同じように、規則正しい結晶の構造を持ちません。
比重は2.3から2.5。モース硬度は5.5ほどで、水晶(7)より傷がつきやすい石です。よく似た岩石との区別には、含まれる水の量が使われます。黒曜岩は1%以下、パーライトは4%以下、ピッチストーンは4から10%というように差があります。
「天然のガラス質鉱物」という紹介をよく見かけますが、鉱物と岩石は別の言葉です。黒曜石は、鉱物が集まってできた岩石ですらなく、ガラスの状態で固まった岩石です。
割ると鋭い——だから石器に使われた
黒曜石を割ると、貝殻の内側のような曲がった面ができ、縁がかみそりのように鋭くなります。この性質のおかげで、旧石器時代から縄文時代にかけて、矢じりや槍の先、ナイフ、工具として使われてきました。
鋭さは今でも通用します。土浦市の広報は、黒曜石が切れ味の鋭さから外科手術のメスとして使われることがあると紹介しています。また、熱を加えると発泡してパーライトになり、土壌改良剤や断熱材として使われています。
一方で、鋭く割れるということは、欠けやすいということでもあります。ブレスレットの玉を硬いものにぶつけると、ふちが欠けて鋭くなることがあります。手を切らないよう気をつけてください。
日本の産地
黒曜石は火山地帯でしか採れません。日本では、北海道の十勝(十勝石と呼ばれます)、長野県の和田峠、島根県の隠岐島後がよく知られ、伊豆七島の神津島、大分県の姫島、佐賀県の腰岳、長崎県の針尾島、熊本県の阿蘇山など、100か所以上で産出するとされています。
ただし、石器に使えるほど質のよい産地は限られます。だから、産地から遠い場所の遺跡でも黒曜石の石器が見つかります。どこの石かは、エックス線を当てて元素の組成を調べると確かめられます。この方法で、縄文時代の人々が石を手に入れていた範囲が分かってきました。
国宝になった黒曜石の石器
北海道の白滝遺跡群から出た石器1,965点は、2023年6月27日に国宝に指定されました(2011年に重要文化財)。この遺跡群は、わが国最大規模の黒曜石の産出地である赤石山の山麓にあります。全長36.3センチという超大形のものを含み、旧石器時代の出土品としては内容・質量ともに群を抜くと説明されています。
長野県長和町の星糞峠(ほしくそとうげ)黒曜石原産地遺跡は、2001年に国の史跡になりました。径10メートルほどのくぼみが200基ほど残っていて、縄文時代に黒曜石を掘り出した跡と考えられています。石を掘るために山に通った跡が、今も地面に残っているということです。
「魔除け」と呼ばれる話は、どこまでたどれるか
黒曜石を占いに使った歴史としてたどれるのは、磨いた黒曜石を鏡として使った例です。16世紀のイギリスでエリザベス一世の顧問だったジョン・ディーが霊視に使った黒い鏡は、大英博物館にある4点を調べた結果、メキシコ産であることが分かりました。アステカで作られた黒曜石の鏡です。
一方、いまパワーストーンの解説で言われる「最強の浄化石」「第一チャクラに対応する」「グラウンディング」といった意味づけは、いつ誰が言い始めたのかをたどれませんでした。アステカの鏡と、今の魔除け説がつながっているという説明も見つかりません。
「左手首に着けると落ち着く」「感受性の高い人は強いエネルギーを感じすぎる」といった説明も、同じく出どころがありません。身につける手を決める作法も、確かめられる由来は見つかりませんでした。好きな手に着けてかまいません。
黒い石を身につけると気持ちが引き締まる、という感じ方は、それ自体が本物です。ただ、それを石の力の証しとして説明すると、話が合わなくなったときに置きどころがなくなります。石の歴史と性質を知って持つほうが、長く付き合えます。
模様で呼び分けられるが、成因の説明は見つからない
黒曜石には、白い斑点のあるもの、光の向きで虹色に見えるもの、赤茶色が混じるものがあり、それぞれ雪の結晶、虹、マホガニーなどにたとえた呼び名が付いています。見た目で付けられた売り場の呼び名です。
白い斑点は、ガラスの状態だった部分が一部だけ結晶に変わってできたものとされますが、公的な資料で確かめられませんでした。虹色や赤茶色の成因も同じです。「成分が違うから模様が違う」と書かれていることがありますが、その裏づけは見つかりません。
人工のガラス玉との見分け方についても、一般の人が確かめられる方法は見つかりませんでした。考古学では元素の組成を調べて産地まで特定しますが、これは装置がいる話です。買うときは、産地や素材が書かれているかを見て、書いていなければ分からないと考えるのが正確です。
扱い方
- ぶつけない
硬度5.5で、水晶より傷がつきやすく、欠けると縁が鋭くなります。ほかの石とは分けて保管してください。 - 水と塩について
浸けてよいかどうかについて、公的な説明は見つかりませんでした。ひもや金具のある品は、濡らしたらよく乾かしてください。 - 傷が気になるとき
柔らかい布でふくのが基本です。研磨剤入りの布は、つやのある面を傷めます。
「水に比較的強い」「浄化は月に一度」といった説明は、出どころが見つかりませんでした。黒曜石について確かに言えるのは、ガラスのように割れる石だから、ぶつけないほうがよい、ということです。
よくある質問
Q. オブシディアンと黒曜石は、同じものですか?
A. 同じ石です。黒曜石が日本語の呼び名で、辞書では「流紋岩やデイサイトとほとんど同じ化学組成をもつガラス質の火山岩」と説明されています。
Q. オブシディアンは鉱物ですか?
A. 鉱物ではなく岩石です。マグマが急に冷えて固まり、結晶の構造を持たないガラスの状態になっています。
Q. 日本ではどこで採れますか?
A. 北海道の十勝(十勝石)、長野県の和田峠、島根県の隠岐島後がよく知られ、神津島、大分県の姫島、佐賀県の腰岳など100か所以上とされています。
Q. 石器に使われたのは、なぜですか?
A. 割ると貝殻状の面ができ、縁がかみそりのように鋭くなるからです。旧石器時代から縄文時代にかけて、矢じりやナイフ、工具に使われました。
Q. 魔除けの効果はありますか?
A. それを確かめた調べものは見つかりませんでした。歴史としてたどれるのは、アステカで作られた黒曜石の鏡が占いに使われたことまでです。
Q. 水に浸けて浄化してもいいですか?
A. 浸けてよいかどうかの公的な説明は見つかりませんでした。ひもや金具のある品は傷みの原因になるので、濡らしたらよく乾かしてください。
Q. スノーフレークやレインボーは、何が違うのですか?
A. 見た目で付けられた呼び名です。白い斑点はガラスの状態だった部分が一部だけ結晶に変わったものとされますが、公的な資料では確かめられませんでした。
Q. 人工のガラス玉と見分けられますか?
A. 一般の人が確かめられる方法は見つかりませんでした。考古学では元素の組成を調べて産地まで特定しますが、装置が必要です。販売ページに産地や素材の表示があるかを見てください。


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