嫌なことが続くと「カルマかもしれない」と言い、ひどいことをした人には「いつかカルマが返ってくる」と言う。カルマは、日常でもよく使われる言葉になりました。スピリチュアルの解説では、「魂が成長するための学び」と説明されることが多い言葉です。
ここでは、カルマがもとはどんな意味の言葉だったのかを、仏教とインドの思想から確かめます。そのうえで、「魂の学び」という読み方がどこから来たのか、そしてカルマを理由に高いお金を求められたときの対処をまとめます。
カルマのもとの意味は「行為」

カルマは、サンスクリット語の「カルマン」から来た言葉で、もとの意味は「行為」です。仏教では漢字で「業(ごう)」と訳されました。
インドでは、古い哲学の書物の中で、行いが次の生まれ変わりの姿を決める、という考え方として理論になりました。よい行いはよい結果を、悪い行いは悪い結果をもたらし、その結果は生まれ変わりを通して続いていく。これが、もとの業の考え方です。
カルマは「行為」そのものを指す言葉で、「エネルギーの流れ」や「宇宙の均衡を保つ法則」という意味ではありません。そうした言い方は、19世紀末に西洋で生まれた読み替えです(後で説明します)。
仏教での業の分け方
仏教では、業をいくつかの観点から分けて考えます。辞典に載っている主な分け方を挙げます。
- 身・口・意の三業
体で行うこと(身業)、口で言うこと(口業)、心で思うこと(意業)の三つです。言葉や思いも、行いに数えられます。 - 善業・悪業・無記業
よい行い、悪い行い、そのどちらでもない行いの三つに分けます。 - 共業・不共業
多くの人が共通して受ける結果を生む業(共業)と、その人だけが受ける業(不共業)です。
仏教には、自分の行いの結果は自分が受けるという「自業自得」の考え方があります。いまでは悪い意味で使われる言葉ですが、もとは善悪どちらの行いにも言う言葉でした。「先祖のカルマ」「家族のカルマ」を背負うという説明は、この原則とは食い違います。
因果応報も、もとは仏教の言葉
「因果応報」は、辞典では仏教語とされ、善悪の因縁に応じて、吉凶禍福の報いを受けること、と説明されています。「原因があれば必ず結果がある」という物理の法則のような意味ではなく、善い行い・悪い行いとその報いの話です。
同じ辞典は、いまでは悪い行いに悪い報いがある、という意味で使うことが多い、とも書いています。「因果応報だ」と言うとき、多くの人は誰かの悪い行いの報いを思い浮かべます。
解脱は、業から離れること
インドの思想では、生まれ変わりの繰り返しから抜け出すこと(解脱)が目標とされ、そのためには業を滅することが必要だと考えられてきました。業は、積み重ねて成長に使うものというより、離れるべきものだったということです。
考え方は宗教によっても違います。ジャイナ教では、業を魂にまとわりつく物質のようなものと考えました。ヒンドゥー教の聖典『バガヴァッド・ギーター』は、結果を顧みずに自分の務めを果たすこと(カルマ・ヨーガ)を説いています。仏教は、変わらない「自分」がいるという考えを認めません。
「魂の学び」という読み方は、西洋で生まれた
いまのスピリチュアルの解説でよく見る「カルマは魂が成長するための学び」という読み方は、19世紀末の西洋の神智学の中で生まれたものです。1889年の神智学の本は、カルマを「乱れた均衡を取り戻す法則」と説明しました。
その後、20世紀のアメリカの霊能者の語りや、1970年代以降のニューエイジの本を通して、「前世から持ち越した課題」「魂の成長のための学び」という形に変わっていきました。
日本では別の変化もありました。辞典は、前世の業で今の境遇が決まるという「宿業」の考え方が、あきらめを助長するものになり、業の考え方の本来の姿から遠ざかったと指摘しています。どちらも、もとの意味からの読み替えです。
カルマを理由に、お金を求められたら
「先祖のカルマが原因で不幸が続いている」「カルマを解消するには特別な祈祷が必要だ」と言われ、高額な品物や鑑定を勧められることがあります。
2023年1月に改正された消費者契約法では、こうした霊感などによる勧誘で結んだ契約を取り消せる範囲が広がりました。取り消せる期間も、取り消せると分かった時から3年、契約から10年に延びています。
- 法テラスの霊感商法等対応ダイヤル
0120-005931。お金を払ってしまった、契約をやめたいといった相談ができます。 - 消費者ホットライン
188(いやや)。近くの消費生活センターにつながります。
日常でカルマという言葉を使うとき
- もとの意味は「行為」。自分の行いを振り返る言葉として使うのが、いちばん本来の使い方に近い
- つらい境遇を「前世のカルマ」と受け止めて、あきらめる理由にしない
- 他人の不幸を「カルマだ」と言わない。病気や災害に遭った人を責める言葉になってしまう
- カルマの解消をうたう高額な勧誘は、その場で決めずに相談する
行いが結果を生む、という考え方そのものは、日々の暮らしを振り返る手がかりになります。それを、自分を責める道具や、誰かに支払う理由にしないことが大切です。
もとの意味に沿って使うなら、たとえばこうなります。その日にした行いを、体・口・心の三つに分けて振り返る。手を貸したこと、言った言葉、心の中で思ったこと。三業という分け方は、言葉や思いも行いに数えるところに特徴があり、自分の一日を見直す枠組みとして、今でも使いやすいものです。
よくある質問
Q. カルマとは、どういう意味ですか?
A. サンスクリット語のカルマンから来た言葉で、もとの意味は「行為」です。仏教では「業」と訳され、行いがのちの結果を生むという考え方を指します。
Q. 因果応報とカルマは同じですか?
A. 近い考え方です。因果応報は仏教語で、善悪の因縁に応じて吉凶禍福の報いを受けることを言います。いまでは悪い行いに悪い報いがある、という意味で使うことが多い言葉です。
Q. カルマは魂の成長のための学びなのですか?
A. その読み方は、19世紀末の西洋の神智学から生まれ、ニューエイジを通して広まったものです。インドの思想では、業は生まれ変わりから抜け出すために滅するべきものと考えられてきました。
Q. 先祖のカルマを背負うことはありますか?
A. 仏教の「自業自得」は、自分の行いの結果は自分が受けるという考え方で、先祖の業を背負うという説明とは食い違います。
Q. カルマの解消のためにお金を払ってしまいました。
A. 2023年1月の改正消費者契約法で、霊感などによる勧誘の契約を取り消せる範囲が広がりました。法テラスの霊感商法等対応ダイヤル 0120-005931 か、消費者ホットライン 188 に相談してください。
Q. 仏教の業には、どんな種類がありますか?
A. 体・口・心の三業、善業・悪業・無記業、多くの人が共通して受ける共業と自分だけの不共業、といった分け方があります。
Q. カルマを解消する方法はありますか?
A. インドの思想では、業から離れることが解脱の条件とされてきました。お金を払えば業が消えるという説明は、辞典の業の解説には見当たりません。カルマの解消をうたう高額な勧誘は、その場で決めずに相談してください。
Q. つらいことが続くのは、前世のカルマのせいですか?
A. そう言い切れる根拠はありません。辞典は、前世の業で境遇が決まるという日本の「宿業」の考え方が、あきらめを助長し、業の考え方の本来の姿から遠ざかったと指摘しています。つらさが続くときは、身近な人や相談窓口を頼ってください。


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