時計を見たら11:23、レシートの合計が1,123円、前を走る車のナンバーが11-23。11月23日生まれの人なら、自分の誕生日の数字ばかりが目に入る気がして、何かの知らせではないかと思うことがあります。
ここでは、誕生日の数字が時計やナンバー、レシートにどれくらい出てくるのかを、まず計算で確かめます。そのうえで、人が自分の誕生日の数字を好むことを調べた心理学の研究と、その先で起きた論争、そして「一度気にすると何度も目に入る」という感じ方に名前を付けた言語学者の文章を紹介します。
誕生日は、どの日付でも時計の時刻になる

まず、誕生日を「月:日」の時刻に置きかえてみます。月は1から12まで、日は1から31までです。時計の「時」は0から23まで、「分」は0から59まであるので、どの誕生日も、そのまま時刻として成り立ちます。(計算)1月1日の1:01から12月31日の12:31まで、366日すべてが時刻になります。2月29日生まれの人にも、2:29があります。
12時間表示の時計では、同じ表示が午前と午後に1回ずつ出ます。つまり、誕生日の時刻は毎日2回、必ず時計に現れます。24時間表示なら1日1回です。日と月を入れかえた「日:月」(11月23日なら23:11)も数えると、24時間表示では、日が23以下の誕生日でもう1回増えます。(計算)日が1から23の誕生日は、12か月×23日で276日あります。
誕生日の数字が時計に出ない人は、一人もいません。見かけるたびに驚くのは自然なことですが、出てくること自体は、時計の仕組みから決まっています。
1年に何回、誕生日の数字に出会うか
では、ふだんの暮らしで何回くらい出会うのでしょうか。見る回数に前提をおいて、計算してみます。
- 時計(1日20回見る場合)
(計算)12時間表示なら、でたらめな時刻に1回見て誕生日の時刻に当たる確率は、2÷1440=720分の1です。1日20回見る人なら、1年で20×365÷720=約10.1回になります。24時間表示なら、20×365÷1440=約5.1回です。 - 車のナンバー(1日100台見る場合)
(計算)ナンバーの4けたの数字は1から9999まであります。均等に出るとすれば、11-23のような特定の番号に当たるのは9,999分の1です。1日100台のナンバーを目にする人なら、1年で100×365÷9,999=約3.7回。1年のうちに1回以上見る確率は、1−(1−1/9,999)の36,500乗で約97%です。 - レシートの合計(1日3枚の場合)
(計算)合計の下3けたが均等に出るとすれば、6月4日生まれの人の「604」のような3けたに当たるのは1,000分の1です。1日3枚なら、1年で3×365÷1,000=約1.1回です。 - 合わせると
(計算)約10.1回+約3.7回+約1.1回で、1年に約15回。365÷15で、およそ24日に1回の割合です。
時計だけでも、出会う見込みはかなりあります。(計算)12時間表示の時計を1日20回見る人が、30日のうちに一度でも誕生日の時刻を見る確率は、1−(1−1/720)の600乗で約57%です。1か月に一度は見かけるほうが、見かけないより起きやすいのです。
実際のナンバーは均等ではなく、希望番号で人気のある番号ほど多く走っています(車のナンバーのゾロ目の記事)。また、11:32や2311のように並びが近い数字や、毎月の23日の日付まで「誕生日の数字」に数えれば、当たりの範囲が広がって、回数はさらに増えます。近いものまで一致に数えると偶然が増える、という統計学者の指摘は、シンクロと引き寄せの記事で紹介しています。
それに、時計を見る時刻はでたらめではありません。毎朝同じ時刻に家を出る、同じ電車に乗る、といった習慣があり、その時刻が誕生日の時刻に近ければ、見る回数はもっと増えると考えられます。
もとの記事の「偶然ではない」を確かめる
もとの記事は、よくある質問の中で、誕生日の数字をよく見るのは偶然ではないのか、という問いに、繰り返し目にする数字には意味があり、気づきそのものがサインかもしれない、と答えていました。けれども計算のとおり、誕生日の数字は時計に毎日2回出て、ナンバーやレシートを合わせると、年に十数回は出会うのがふつうです。よく見ること自体は、特別な理由がなくても起きます。
それでも、ほかの数字ではなく「誕生日の数字」だと強く心に残るのはなぜか。ここからは心理学の研究を見ていきます。
人は、自分の誕生日の数字を好む
心理学者の北山忍さんらが1997年に発表した研究は、日本で、文字や数字の好みを点数で答えてもらう方法で調べたものです。日本では、アンケートで直接たずねても、自分を高く評価する傾向が出にくいことが知られていたため、遠回しの測り方を使いました。
結果は二つありました。一つは、日本語の文字の中で、自分の名前に含まれる文字が、ほかの文字より好まれたことです。男性は名字の最初の文字を、女性は下の名前の最初の文字を、特に好んでいました。もう一つは、数字の中で、自分の誕生日の月と日にあたる数字が、ほかの数字より好まれたことです。
名前の文字を好む傾向は、1985年の研究で報告され、1987年にはヨーロッパの12の言語で確かめられるなど、くり返し確かめられてきました。オランダの2001年の研究では、名前の文字の好みと誕生日の数字の好みが互いに結びついていて、じっくり考えてから答えるように促すと、どちらの好みも弱まりました。考えずにぱっと答えたときに出る好みだ、ということです。
一方で、誕生日の数字の好みを調べた研究は、名前の文字に比べて多くありません。この分野を批判した研究者は、誕生日の数字の効果は小さく、安定しない、と見ています。ここで言えるのは、好みを点数で答えてもらうと、自分の誕生日の数字が好まれる傾向が報告されている、というところまでです。
自分に関係するものは、注意がほかに取られていても見落としにくい
自分に関係するものが目に留まりやすいことは、注意の実験でも示されています。1997年の研究では、画面に単語が次々に映る中から、目標の語を見つけてもらいました。人は、一つ目の目標を見つけた直後には、すぐ後に来る語を見落としやすくなります。ところが、その語が自分の名前のときは、見落としが起きにくかったのです。他人の名前やふつうの単語では、見落としが起きました。
注意がほかに取られている瞬間でも、自分の名前は見落としにくい、ということです。誕生日の数字で同じ実験をしたものは見つかりませんでしたが、自分に結びついた文字ほど目に留まりやすい、という方向の結果です。
もとの記事は、意識して探しているときより、自然にふと目に入ってくるときのほうが、サインとして受け取りやすい、と書いていました。けれども、自分に関係するものが、ほかのことに気を取られている瞬間でも拾われやすいことは、実験で示されています。ふと目に入ったことは、外からの知らせの手がかりというより、こうした心の働きで説明がつく場面です。
「誕生日の数字の町に住む」は再現されなかった
自分に結びつくものを好むこの傾向が、人生の大きな選択まで左右するのではないか、と考えた研究者もいました。2002年の研究は、この傾向を「暗黙の自己中心性」と名づけ、名前に似た地名の土地に住む人や、名前に似た職業を選ぶ人が多い、と報告しました。誕生日の数字についても、その数で始まる名前の町に住む人が多い、という結果を示しています。
けれども、この誕生日の数字の町の結果は、2011年に別の研究者が、亡くなった人の記録や、ニューヨークの有権者の記録を使い、方法を変えて4回確かめたところ、どれも再現しませんでした。同じ研究者は、名前と住む場所や職業などの結びつきを示した記録の研究も調べ直し、結果そのものは出るものの、生まれた年代・地域・民族の偏りや、原因と結果の向きが逆であることで説明できる可能性が高い、と結論しています。元の著者は反論しており、論争は続いています。
その批判をした研究者も、自分の名前の文字や誕生日の数字を好むという実験室での結果は豊富だ、と認めています。疑われているのは、その好みが住む場所や仕事まで動かす、という先の話です。恋愛との関係を調べた研究は、同じ誕生日の人との恋愛の記事で紹介しています。
誕生日そのものも、数字の好みに引っぱられていた
誕生日は、365日に均等にばらけているわけではありません。2021年の研究は、1890年から1910年ごろに生まれたアメリカ人の記録を調べ、届け出られた誕生日に、祝日が多すぎ、13日が少なく、1日と10日が多いことを見つけました。論文は、親が子の誕生日を、好ましい日に寄せて届けた跡だと見ています。
今の人に1から31までの数字の好き嫌いを答えてもらうと、その好みは、昔の日ごとの届け出の数とよく対応していました。13が嫌われ、1と10が好まれる、という具合です。同じ論文には、今のアメリカでは火曜日に生まれる子が日曜日より約7割多い、という数字も引かれています。誕生日の数字は、もともと人の好みや都合と無関係な数字ではないのです。
「一度気にすると何度も目に入る」に名前を付けた人
一度気になったものが、急にあちこちで目につくようになる。この感じ方を「頻度の錯覚」と名づけたのは、アメリカの言語学者アーノルド・ズウィッキーです。2005年8月7日、言語学者たちが書くブログに載せた文章で使いました。
もとは言葉づかいの話でした。英語のある言い回しが最近広まった誤りだ、と言われていることに反論する中で、最近気づいたことを最近始まったことだと思い込む「最近性の錯覚」と並べて、一度ある現象に気づくと、それがしょっちゅう起きていると思ってしまう、と説明しています。言葉に関心のある人ほど、この錯覚に陥りやすいとも書いています。
数字も同じです。誕生日の数字に一度気づくと、その後の出会いは記憶に残り、出会わなかった時間のほうは数えません。確証バイアスや選択的注意など、ほかの心の働きはエンジェルナンバーの見つけ方の記事に、同じ名前をよく見るときの確かめ方は同じ名前をよく見るときの記事にまとめています。
もとの記事のほかの説明
- ピタゴラスと数秘術
もとの記事は、ピタゴラスが、数字には宇宙の法則や魂の性質が反映されていると説いた、と書いていました。ピタゴラス本人は何も書き残しておらず、数の考えがどこまで本人にさかのぼるのかは分かっていません。 - エンジェルナンバーの広まり
もとの記事は、1990年代にドリーン・バーチューが体系化し、日本では2000年代以降に大きく浸透した、としていました。数字の並びの意味を本に載せたのは1999年で、日本語版の本は2007年1月に出ています。大きく浸透したという根拠は示されていませんでした。 - ソウルナンバー
誕生日の数字はソウルナンバー(魂の数字)と深くつながっている、という説明には、出典がありませんでした。 - 前向きな言葉を唱える
誕生日の数字を見たときに前向きな言葉を唱えると自己肯定感が上がる、とも書いていました。自己評価の低い人が前向きな言葉をくり返すと、かえって気分が下がったという2009年の研究がありますが、2020年の二つの追試では、その結果は再現されませんでした。唱えて自己肯定感が上がることも、確かめられてはいません。 - 勧めていた本
もとの記事が勧めていた『エンジェルナンバーが教えてくれる、わたしの人生のヒント』は、国立国会図書館の検索で見つかりませんでした。中身の説明も確かめようがないので、ここでは取り上げません。
誕生日の数字を見たら
- 見た日・時刻・場所を書き留めて、1か月数えてみる。計算では、時計だけで30日のうちに一度は見る確率が約57%
- どこで多く見るかを確かめる。いつも同じ時刻なら、その時刻に時計を見る習慣があるということ
- 見るとうれしい気持ちになるなら、それは自分の数字を好む心の働きとも合っている。楽しむのは自由
- 大事な決断を、数字を見たかどうかで決めない。決めるのは、確かめた事実と自分の考えで
見たときの気持ちを大切にすることと、見た回数に特別な意味を読み込むことは、別のことです。出会う回数の計算と、自分の数字を好む心の働きを知っておけば、数字を楽しみながら、振り回されずにすみます。
エンジェルナンバーという読み方がどこから来たのかを確かめたいときは、もとになった本の日本語版『エンジェル・ナンバー 数字は天使のメッセージ』(ドリーン・バーチュー、リネット・ブラウン著、ダイヤモンド社、2007年)があります。0から999までの数字の意味が並ぶ本で、書かれている意味は、一人の著者の読み方として受け止めてください。
よくある質問
Q. 自分の誕生日の数字をよく見るのは偶然ですか?
A. (計算)誕生日はどの日付でも「月:日」の時刻になり、12時間表示の時計には毎日2回出ます。1日20回時計を見る人なら年に約10回、ナンバーやレシートも合わせると年に15回ほどになります。よく見ること自体は、特別な理由がなくても起きます。
Q. 誕生日の数字が気になるのはなぜですか?
A. 好みを点数で答えてもらう研究で、自分の名前の文字や、誕生日の月と日の数字が、ほかより好まれたと報告されています。自分に関係するものは、注意がほかに取られている瞬間でも見落としにくいことも、実験で示されています。
Q. 一度気にすると何度も目に入るのは、なぜですか?
A. 言語学者のズウィッキーが2005年に「頻度の錯覚」と名づけた感じ方です。一度気づくと、それがしょっちゅう起きているように思えてしまいます。見た日を書き留めて数えると、実際の回数が分かります。
Q. 誕生日の数字は、住む場所の選び方などに影響しますか?
A. 誕生日の数で始まる名前の町に住む人が多い、という2002年の報告はありますが、2011年に方法を変えて4回確かめた追試では再現しませんでした。確かめられているのは、点数で答える実験で好まれるところまでです。
Q. 誕生日が時計に出ない人はいますか?
A. いません。(計算)月は1から12、日は1から31なので、366日すべてが時刻になります。2月29日生まれなら2:29、12月31日生まれなら12:31です。


コメント