頭のてっぺんにあるとされるクラウンチャクラ。「第7チャクラ」「色は紫」と紹介されることが多く、整えると直感や心の平和につながる、と説明されます。
ここでは、頭頂のチャクラがもとのインドの文献でどう書かれているかを、英訳と辞典で確かめます。東洋医学の頭頂のツボ「百会」とのちがい、瞑想で起こりうる副作用、頭痛やしびれが出たときの受診の目安もまとめます。
16世紀の本では「6つのチャクラの上」

チャクラを説明した古典としてよく知られるのが、1577年に書かれた本の一部『シャット・チャクラ・ニルーパナ』です。題名の意味は「6つの中枢(チャクラ)の記述」で、会陰から眉間までの6つのチャクラを順に説明しています。
頭頂のサハスラーラ(千の花弁の蓮)は、この6つの「すべての上」に、別のものとして置かれています。1919年に英訳を出したウッドロフは、「7つの中枢」という言い方に「6つのチャクラと、その上の脳の中枢であるサハスラーラ」と注をつけています。百科事典も「ふつうチャクラは六つ」とし、数えるなら会陰の下のアグニ・チャクラと頭頂のサハスラーラの2つを加える、と書いています。「7つのチャクラの7番目」というのは、後の数え方です。
もとの文献が描く頭頂の蓮
英訳の第40節は、サハスラーラを次のように描いています。
これらすべての上に、千の花弁の蓮がある。輝き、満月より白く、頭を下に向けている。花糸は若い太陽の色を帯び、体はサンスクリットの文字で輝き、至上の歓喜である。
サンスクリットの文字をひとそろい20回くり返して千の花弁とし、ここに至上のシヴァがいるので「シヴァの座」とも呼ばれる、と訳者は説明しています。会陰で眠っていたクンダリニーが目覚めて上り、ここでシヴァと一つになる、というのがこの文献の考えです。この文献は「ラヤ・ヨーガ(溶かし込むヨーガ)」の書で、行者は三昧に入る前に、粗いものから細かいものへ順にすべてを溶かし込むべきだ、と注釈は書いています。もとの記事の「エネルギーが下から積み重なって頭頂へ昇る」という説明とは、考え方が違います。
訳者の注では、サハスラーラは頭の「泉門」の位置にあるとされます。赤ちゃんの頭のてっぺんにある柔らかいところ(大泉門)で、1歳から1歳半ごろに閉じます。もとの記事の「大泉門のあたり」という説明は、この注と合っています。
「紫」はいつから
もとの文献の頭頂の蓮は白で、花糸は若い太陽の色です。チャクラに虹の7色を1つずつ当てる方式は20世紀の西洋で広まったもので、色と心の性質を並べた一覧が一緒に印刷されたのは1977年の本からとされます。紫や「宇宙意識」「悟り」の説明は、そうした後の本の考えです。
東洋医学の「百会」とは別のもの
頭頂の話でよく一緒に出てくるのが、鍼灸のツボ「百会」です。辞典では、百会は頭の頂上で、多くの経絡が出合う所として鍼灸で最も重んじられるツボとされ、日本では1457年の日記に、百会に灸をすえた記録があります。世界保健機関がまとめた経穴の位置の標準では、左右の耳の先を結んだ線の真ん中あたりです。
百会は中国の経絡の考え、サハスラーラはインドのタントラの考えで、成り立ちが違います。場所が近くても、同じものとして扱わないほうが正確です。
「乱れのサイン」と心の不調
もとの記事は、人生に意味を感じられない、孤独感が続く、喜びを感じにくい、といった状態をクラウンチャクラが乱れているサインとしていました。これは、うつ病の症状として挙げられる「何をしても楽しめない」などと重なります。
内閣府の2025年の全国調査では、孤独感が「しばしばある・常にある」人は4.5%で、心や体の健康状態が「よくない」人では32.9%にのぼりました。孤独や虚しさが続くときは、チャクラの問題として抱え込まず、内閣府の「あなたはひとりじゃない」や、働く人の相談窓口「こころの耳」などに相談してください。
瞑想にも副作用がある
クラウンチャクラを整える方法として瞑想がよく勧められます。けれども、もとの文献を英訳したウッドロフ自身が、行者たちによれば、この行法は「ときにかなりの痛み、体の不調、さらには病気」を伴い、師が認めた資格のある者以外には勧められない、と書いています。
瞑想の副作用を調べた2020年の系統的レビュー(83の研究、6,703人)では、研究全体での有害事象の割合は8.3%で、多かったのは不安、気分の落ち込み、考え方の異常でした。心の病気になったことのない人にも起こりえます。西洋の瞑想の実践者60人に聞き取った2017年の研究では、電気のようなものが体を駆け上がる感覚を63%が、恐れや不安を82%が経験していて、頭痛を挙げた人もいました。ただしこの研究は意図して選んだ人たちへの聞き取りで、瞑想する人全体には当てはめられない、と著者は書いています。
一方、瞑想プログラムの研究をまとめた2014年の報告では、不安や落ち込み、痛みには中くらいの証拠がありましたが、前向きな気分や注意力への効果は、証拠が弱いか足りませんでした。瞑想をするなら短い時間から始め、つらい感覚が出たらやめて、続くときは医師に相談してください。
頭のしびれや頭痛は「開いたサイン」ではなく受診の目安
頭頂のチクチクや圧迫感、頭痛を「クラウンチャクラが開くサイン」とする説明もありますが、もとの文献の該当の節に頭痛やしびれの話はありませんでした。日本頭痛学会は、いつもと違う突然の強い頭痛はくも膜下出血のおそれがあるので病院に行くよう呼びかけています。頭痛にめまいやふらつき、声のかすれ、飲み込みにくさ、顔や体の感覚の異常が加わるときは、できるだけ早く専門医のいる病院へ、としています。
顔の片側がゆがむ、片方の手に力が入らない、ろれつが回らないといった症状が突然出たら、脳卒中のおそれがあります。すぐに救急車を呼んでください。迷うときは救急安心センター(♯7119)に相談できます。
クラウンチャクラという考えとのつきあい方
頭頂の白い蓮は、インドの行者たちが長い修行の先に思い描いたものでした。日々の暮らしでは、よかったことを書き出す、自然の中で過ごすといった、研究で気分の改善が報告されている方法を、無理のない範囲で取り入れるくらいがよいでしょう。チャクラについて手元で読みたいときは、矢尾こと葉さんの『はじめてチャクラの本』(永岡書店、2013年。CDつき)などがあります。本ごとに説明が違うことも知ったうえで読んでみてください。
よくある質問
Q. クラウンチャクラとは何ですか?
A. 頭頂のサハスラーラ(千の花弁の蓮)のことです。16世紀の文献では、6つのチャクラの上に別に置かれた白い蓮として描かれています。
Q. クラウンチャクラの色は紫ですか?
A. もとの文献では「満月より白い」蓮です。虹の7色を1つずつ当てる方式は、20世紀の西洋で広まったものです。
Q. クラウンチャクラと百会は同じですか?
A. 百会は中国の経絡の考えによる鍼灸のツボで、インドのタントラのサハスラーラとは成り立ちが違います。
Q. 頭のてっぺんがしびれるのはチャクラが開いたサインですか?
A. そう確かめた資料はありません。しびれや頭痛が続く、突然強く出たときは、医療機関を受診してください。
Q. 瞑想に危険はありますか?
A. 研究をまとめると、有害事象の割合は全体で8.3%で、不安や気分の落ち込みが多く報告されています。つらい感覚が出たらやめて相談してください。
Q. 虚しさや孤独感が続きます。
A. うつ病の症状と重なることがあります。「あなたはひとりじゃない」や「こころの耳」などの窓口に相談してください。


コメント