がんばっているのに、なぜかお金にも心にも余裕がない。豊かさを「受け取る」のが下手なのでは、と感じて、受け取り方を探している人もいるでしょう。
ここでは、お金と幸せの関係を調べた研究を紹介し、人に頼む、ほめ言葉を受け取る、支援を受けるといった「受け取る」場面で何が起きているのかを、研究と国の調査から確かめます。「お金のブロック」をうたう高額な勧誘への注意もまとめます。
お金と幸せの研究

2010年、心理学者のカーネマンと経済学者のディートンは、アメリカの45万件を超える回答を分析し、人生の評価は年収とともに上がり続けるが、日々の気分は年収約7万5千ドルで頭打ちになる、と報告しました。ところが2021年に、3万3千人あまりからその時々の気分を170万回以上集めた研究は、頭打ちは見られず、年収とともに気分も上がり続けたとしました。
食い違った研究者どうしが2023年に一緒にデータを分析し直すと、頭打ちが見られたのは、最も不幸な約2割の人だけでした。ほかの人では、年収が上がるにつれて気分もよくなっていました。
スウェーデンの宝くじの当選者を5〜22年後に調べた研究では、大きな賞金に当たった人の人生の満足度は10年以上上がったままでした。ただし、日々の幸福感や心の健康への効果はそれより小さく、満足度が上がったのは主にお金の面の満足を通じてでした。自分のためより人のためにお金を使ったほうが幸福感が上がる、という研究もありますが、大きな追試では、方法によって効果が小さかったり見られなかったりしました。
豊かさは、お金だけではない
もとの記事が「豊かさはお金だけじゃない」と書いていたのは、日本の調査とも合っています。内閣府の2026年の報告書で、生活全体の満足度と最も強く結びついていたのは「生活の楽しさ・面白さ」で、次いで「家計と資産」「健康状態」「住宅」でした。
人に頼むのをためらう理由
もとの記事は、助けを求めるのが苦手なのは受け取る力が弱いから、と説明していました。研究では、もっと具体的な理由が分かっています。2008年の6つの研究では、頼まれた人が引き受けてくれる見込みを、頼む側は最大で半分ほど低く見積もっていました。頼む側は相手の手間ばかり考え、相手が断るときの気まずさを軽く見ていたのです。
アメリカの成人2,118人を調べた2022年の研究でも、助けが必要な人は、相手の助けたい気持ちと、助けたあとに相手が感じる前向きな気持ちを低く見積もり、迷惑に感じる度合いを高く見積もっていました。一方で、支えられていると本人が気づくと、それが負担になることもある、という研究もあります。受け取るのに気後れがあるのは、ふつうのことです。
ほめ言葉に「いえいえ」と返すのは
もとの記事は、ほめられて「いえいえ」と返すのを、受け取りを拒否しているサインとしていました。けれども、日本語の自然な会話を調べた研究では、ほめ言葉への返答の95%が、否定する、笑顔や無言で返す、といった自分をほめない形でした。日本では自分に厳しい見方のほうが文化の特徴だとする研究もあり、「いえいえ」は多くの場合、礼儀の型です。
ほめる側も、相手がどれだけうれしく感じるかを低く見積もり、困らせてしまうと思いすぎることが分かっています。自分への評価が低い人は恋人からのほめ言葉を受け入れにくいものの、そのほめ言葉が自分にとってどんな意味を持つかを書いてもらうと、前向きに受け止められるようになり、効果は2週間後も残っていました。
支援を受けない理由は「知らない」が多い
内閣府の2025年の全国調査で、不安や悩みがあるのに行政や民間の団体の支援を受けていない人に理由を聞くと、「必要ではない」を除けば、「どんな支援があるのか知らない」27.7%、「受け方がわからない」17.4%が多く、「受けるのが恥ずかしい」は3.1%、「相手に負担をかける」は1.7%でした。受け取れない理由として大きいのは、心のブロックより、情報が届いていないことのようです。
「心のブロック」とアファメーション
もとの記事は、豊かさが入らない原因を本人の自己価値感の低さに求め、「私は豊かさを受け取る資格がある」と毎朝唱えるよう勧めていました。しかし、自分への評価が低い人が前向きな言葉をくり返すと、くり返さなかった人より気分が沈んだ、という2009年の実験があります。2020年に行われた2つの追試ではそうした差は出なかったので、逆効果とまでは言えませんが、唱えることで自分を価値ある存在と感じられるようになる、とも確かめられていません。
「自分はお金に値しない」といった信念を持つ人は、収入や資産が少ない傾向がある、という研究はあります。ただし、論文自身が、どちらが先なのかは分からないと書いています。「幸せになると悪いことが起きる」という考えも、心理学では「幸福への恐れ」として14か国で測られています。気になるなら、カウンセリングで扱える心の問題として相談できます。
片づけと感謝のワーク
共働きの夫婦60人を調べた研究では、自宅を「散らかっている」と語った妻ほど、ストレスホルモン(コルチゾール)の1日の変化が平らで、1日のうちに気分が落ち込んでいました。片づけで気分が変わることはありえますが、お金が入ってくるという研究ではありません。感謝を書き出すワークにも効果はありますが、研究をまとめると大きくはありません。
「お金のブロック解除」と高額な勧誘
ネットでは「お金のブロック解除」をうたう有料のセッションも売られています。国民生活センターには、副業や投資で稼ぐノウハウとして売られる情報商材の相談が2023年度に6,256件寄せられ、高額なコンサルティング契約に勧誘される例が目立つとしています。東京都の相談窓口には、ネット広告から3千円の体験セミナーに参加し、「望みが叶う」と言われて100万円近い契約を結んだ例も寄せられています。
その場で契約せず、いったん持ち帰って考えてください。困ったときは消費者ホットライン188へ。霊感などを持ち出した勧誘による契約は取り消せる場合があり、法テラスの霊感商法等対応ダイヤル(0120-005931)でも相談できます。
お金の知識を測る2025年の全国調査では、正誤問題の正答率は53.8%で、正答率の低い人ほど金融トラブルにあった人の割合が高くなっていました。豊かさを受け取る準備として、確かなお金の知識を身につけることも役に立ちます。
例として、大野百合子さんの『見えない世界の歩き方 Go!Go!スピリチュアル』(永岡書店、2018年)の販売ページです。目次を確かめられなかったため、豊かさやお金の話が載っているかは分かりません。
※ 価格は投稿時点のものです。最新の価格はAmazonでご確認ください。
よくある質問
Q. 豊かさを受け取るとはどういう意味ですか?
A. 決まった定義はありません。人に頼む、ほめ言葉を受け取る、支援を使うといった場面で、受け取るのをためらう理由が研究で分かってきています。
Q. お金が増えると幸せになりますか?
A. 2023年の共同研究では、年収が上がると多くの人で日々の気分もよくなりましたが、最も不幸な約2割の人では頭打ちになりました。
Q. 人に頼むのが苦手です。
A. 頼む側は、相手が引き受けてくれる見込みを最大で半分ほど低く見積もるという研究があります。思っているより引き受けてもらえることが多いようです。
Q. ほめられて「いえいえ」と返すのはよくないですか?
A. 日本語の会話では、ほめ言葉への返答の多くが自分をほめない形で、礼儀の型と考えられます。
Q. 「私は豊かさを受け取る資格がある」と唱えると効果がありますか?
A. 2009年の実験では、自分への評価が低い人がくり返すと気分が沈みましたが、2020年の2つの追試では差が出ませんでした。効果があるとは確かめられていません。
Q. 「お金のブロック解除」のセミナーに誘われています。
A. その場で契約せず、消費者ホットライン188に相談してください。情報商材の相談も多く寄せられています。



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