あの人といると元気がもらえる。反対に、人混みや人と会ったあとはぐったりする。そんな経験から、「エネルギーが強い人」「エネルギーを奪われる人」という言い方を見かけることがあります。
ここでは、「エネルギー」という言葉が辞典や心理学でどう扱われているかを確かめ、人から元気をもらう・人で疲れる、を測った研究を紹介します。感情が人にうつるのか、人を引きつける力は変えられるのか、気分の波が大きいときの受診の目安もまとめます。
「気」「プラーナ」と心理学のエネルギー

もとの記事は、生命エネルギーを「気」や「プラーナ」とも呼ぶ、と説明していました。辞典によると、「気」は中国哲学の言葉で、もとは人の息、風、霧や雲、湯気などを指し、天地や体に満ちる生命力の源と考えられました。インドの「プラーナ」はサンスクリット語で「息」のことで、ヨーガでは呼吸法(調息)につながります。カタカナで同じ「プラーナ」と書く別の語(ヒンドゥー教の聖典群)もあるので、混同に注意が必要です。どちらも、量を測れるエネルギーを指す言葉ではありません。
心理学者ユングは、心のエネルギーが外に向かう人を外向型、内に向かう人を内向型と呼びましたが、これはエネルギーの向きで分ける考えで、強い・弱いで分けるものではありません。国立国会図書館で書名に「エネルギーが強い」を含む本を探しても、見つかりませんでした。
一緒にいると元気が出る「関係のエネルギー」
「あの人といると元気が出る」という感覚は、職場の研究で「関係のエネルギー」として測られています。2016年の4つの研究では、上司とのやりとりで感じる関係のエネルギーが、1か月後の仕事への熱意を予測していました。これは本人の感じ方を尋ねる尺度で測ったもので、オーラの大きさではなく、やりとりの中で生まれるものとして扱われています。
心理学でいう「活力」(生き生きとしてエネルギーがある感覚)を調べた1997年の研究では、活力は心の健康や体の症状とともに上下し、慢性の痛みがある人では低くなっていました。元気さは生まれつきの強さというより、その日の体と心の調子とともに変わるものなのです。
感情は人にうつる。ただし効果は小さい
落ち込んでいる人と話すとこちらも沈み、自信に満ちた人と話すと気分がよくなる。こうした現象は「情動伝染」と呼ばれ、研究されています。仕組みとして挙げられているのは、相手の表情や声、姿勢を思わずまねて同調し、その体の反応から気持ちが生まれることで、目に見えないエネルギーのやりとりではありません。人に感情をうつす力やうつりやすさにも、個人差があるとされます。
交流サイトの利用者68万9,003人の画面に出る投稿を操作した2014年の実験では、前向きな投稿を減らされた人は前向きな言葉の投稿が減りましたが、その効果はとても小さなものでした。この実験は、利用者の同意の取り方が問題になり、掲載した学術誌が懸念を表明しています。幸せが友人や隣人を通じて広がるとした2008年の研究に対しては、同じ手法だと、うつるはずのないにきびや身長まで「うつる」結果が出てしまう、という指摘も出ました。
人を引きつける力は、ふるまいで変わる
もとの記事は、オーラが大きい人は自然と人を引き寄せる、と書いていました。辞典によると、「カリスマ」はギリシャ語で「神の賜物」を意味し、社会学者ウェーバーは非日常的な天与の資質と説明しました。けれども2011年の実験では、中間管理職34人とビジネススクールの学生41人にカリスマ的なふるまい方を教えると、周りの人や第三者からのカリスマの評価が上がりました。人を引きつける印象は、生まれつきの力だけでなく、話し方やふるまいで変えられるのです。
人と会ったあとに疲れるのは、だれにでも起きる
もとの記事は、人混みで疲れやすいのはエネルギーが強い体質だから、と説明していました。48人が12日間、1日5回、自分の様子を記録した研究では、外向的にふるまうとその場では気分がよく疲れも少ないものの、3時間後には疲れが増えていました。この疲れは会った人の数で説明でき、性格による違いはありませんでした。74人の追試でも、2〜3時間後に疲れが出ていました。
もともと内向的な人が1週間、意識して外向的にふるまうと、前向きな気分の上がり方が小さく、疲れや否定的な気持ちが増えたという実験もあります。性格の研究では、元気さ(活動の水準)は外向性の一面、気分の変わりやすさは否定的な感情の一面として、別々に測られています。
一人の時間は、高ぶった気持ちを静める
もとの記事は、一人の時間を「エネルギーの充電時間」と呼んでいました。2018年の4つの研究では、一人でいると、よい気分も悪い気分も、高ぶった感情が静まりました。自分で選んで一人になったときは、くつろぎやストレスの低下にもつながっていました。362人の記録を調べた2025年の研究では、緊張などの高ぶった気持ちがあるとき、人は性格にかかわらず一人になりたがっていました。
気分の波が大きいときは受診の目安に
もとの記事は、感情の波が大きいことをエネルギーが強い体質のしるしとし、相談先に「専門のヒーラー」を挙げていました。国立精神・神経医療研究センターは、気分の波はだれにでもあり病気ではないとしつつ、周りが「いつもと違う」と気づくほど行き過ぎ、家族が困ったり社会的な信用を失ったりするほどなら、双極性障害かもしれない、としています。
- 睡眠が2時間以上少なくても平気で、寝なくても元気に活動を続けられる
- 話し続ける、根拠のない自信に満ちあふれる、初対面の人にやたらと声をかける
- 買い物やギャンブルに大きな金額をつぎ込む
こうした様子が続くときは、精神科や心療内科を受診してください。同センターは、双極性障害は「カウンセリングだけで回復が期待できるものではありません」と書いています。疲れや落ち込みが続くときは、働く人の相談窓口「こころの耳」(0120-565-455)などにも相談できます。
塩、セージ、裸足のグラウンディングについて
もとの記事が勧めていた方法には、注意も要ります。塩風呂はお湯41度以下、つかるのは10分までが目安です。ホワイトセージは自生地が限られ、採りすぎが心配されている植物で、焚くなら換気をしてください。裸足で地面に触れるアーシングは、効果を確かめた系統的レビューがなく、土で汚れた傷から破傷風になることもあります。チャクラについて本で読むなら、矢尾こと葉さんの『はじめてチャクラの本』(永岡書店、2013年。CDつき)などがありますが、本によって説明が違うことも知っておいてください。
よくある質問
Q. エネルギーが強い人とはどんな人ですか?
A. 決まった定義はありません。「一緒にいると元気が出る」感覚は、職場の研究で「関係のエネルギー」として、やりとりの中で生まれるものとして測られています。
Q. 人混みで疲れやすいのはエネルギーが強いからですか?
A. 外向的にふるまうと、だれでも数時間後に疲れが出ることが分かっています。疲れは会った人の数で説明でき、性格による違いはありませんでした。
Q. 人からエネルギーを奪われることはありますか?
A. エネルギーのやりとりを測った研究はありません。感情が表情や声のまねを通してうつる情動伝染はありますが、効果は小さいものです。
Q. 人を引きつける力は生まれつきですか?
A. カリスマ的なふるまい方を教えると、周りからの評価が上がったという実験があります。
Q. 気分の波が大きいのは体質ですか?
A. 気分の波はだれにでもありますが、行き過ぎて生活に差し支えるほどなら双極性障害のこともあります。精神科や心療内科に相談してください。
Q. 「気」や「プラーナ」はエネルギーのことですか?
A. 「気」はもとは息や風、湯気などを指す中国哲学の言葉、「プラーナ」はサンスクリット語で息のことです。量を測れるエネルギーではありません。


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