タロットを始めるとき、最初に勧められるのがライダー版(ライダー・ウェイト版)です。78枚すべてに絵があり、解説書も多いので、引いた札を調べやすいからです。
ここでは、このデッキがどう生まれたのか、絵を描いた人がどう扱われてきたのか、そして同じ絵柄の版がいくつも売られている理由をまとめます。最後に、タロットの起源についても確かめます。
78枚の構成

タロットは78枚で一組です。中身は二つに分かれます。
- 大アルカナ 22枚
愚者から世界までの、番号と名前が付いた札です。寓意の場面が描かれていて、一枚ずつ覚えやすい並びです。 - 小アルカナ 56枚
棒(ワンド)・聖杯(カップ)・剣(ソード)・金貨(ペンタクル)の4つの組に分かれ、それぞれ数札10枚と人物札4枚の14枚で構成されます。4組×14枚で56枚です。
最初は大アルカナ22枚だけで引く人も多くいます。名前と絵を覚えるのが先なので、22枚に絞るのは理にかなった始め方です。
1909年のロンドンで生まれた
このデッキは、1909年の12月にロンドンの出版社ライダー社から出ました。監修したのはアーサー・エドワード・ウェイト(1857〜1942)、絵を描いたのはパメラ・コールマン・スミス(1878〜1951)です。二人は、どちらも「黄金の夜明け団」という団体の会員でした。
ウェイトによる解説書は、1910年と1911年に出ています。カードと解説書が組みで世に出たことが、このデッキが広まった理由の一つです。
絵を描いた人は、長く表に出てこなかった
ここが、このデッキについていちばん知られていない話です。初版のカードには、画家の名前が表示されていませんでした。
スミスへの報酬は一時金のみで、印税はありませんでした。金額は50ポンドほどと報じられています。デッキが世界中で売れ続けるあいだ、彼女にお金が入ることはなく、1951年に貧しいまま亡くなりました。
近年は、二人の名前を並べて呼び直す動きがあります。2009年には、米国のゲーム会社が、スミスの名を先に置いた100周年記念版を出しました。小アルカナのデザインは、主にスミス自身が考えたものだとされています。「ウェイトのデッキ」と呼ばれてきたものの絵は、彼女の仕事です。
デッキを買うとき、箱に二人の名前が並んでいるものがあります。どちらが正しいという話ではありませんが、名前の並びには、こうした経緯があります。
小アルカナに絵があることの先例
ライダー版の革新として、「小アルカナの数札にも場面の絵がある」ことがよく挙げられます。マルセイユ版などの古いタロットでは、数札は印が並んでいるだけで、場面の絵はありません。
ただ、先例があります。1490年ごろのイタリアで作られたソラ・ブスカ版は、すべての数札に絵がある最初のタロットとされています。
そして、この78枚の白黒写真は、1907年に大英博物館へ寄贈されていました。スミスが絵を描いた2年前のことです。研究では、ウェイトとスミスがこれを見た可能性が高いとされています。ライダー版は、何もないところから生まれたのではなく、古い工夫を受け継いだデッキだということです。
同じ絵柄の版が、いくつもある理由
探すと、同じ絵柄なのに色味や箱の違う商品がいくつも出てきます。理由は著作権です。
アメリカでは、オリジナルの絵はすでに著作権の保護期間を過ぎています。英国と欧州連合では、2022年1月1日に保護期間が終わりました。スミスが亡くなった1951年に70年を足した年です。
だから、同じ絵柄のデッキを別の会社が出せます。一方で、米国のゲーム会社が持っているのは、「ライダー」などの商標と、1971年に色を塗り直した版の新しい部分です。絵そのものの権利とは別の話になります。
なお、日本での著作権の扱いについては確かめられませんでした。ここでは「米国と英国・欧州連合ではこうなっている」までにしておきます。
版ごとのちがい
- 1909年の原版に近いもの。色は素朴で、線がはっきりしています
- 1971年に色を塗り直した版。長く標準として売られてきたものです
- 1990年に、メアリー・ハンソン=ロバーツが塗り直した版(ユニバーサル・ウェイト)。色がやわらかく、人物の表情が見やすくなっています
- 2009年の100周年版。1909年の原版から複製したもので、スミスの名が先に置かれています
絵の内容は同じなので、解説書はどの版でも使えます。選ぶときは、色の好みと、カードの大きさ、紙の厚さを見るとよいでしょう。手が小さい人は、小さめのサイズのほうが扱いやすくなります。
タロットの起源
タロットは、占いのために作られたものではありません。15世紀の半ば(1440年から50年ごろ)の北イタリアで生まれ、当初は札を取り合う遊戯でした。
占いに使われたことを示す最も古い証拠は、1750年ごろの写本です。1780年代に、クール・ド・ジェブランとエテイヤという二人が、占いとしてのタロットを広めました。
「タロットは古代エジプト由来」という説も、この時期に始まります。1781年にクール・ド・ジェブランが唱えたもので、学術的には否定されています。研究者のダメットは、この説を「最も成功した宣伝活動」と評しました。500年の歴史があるのは確かですが、エジプトまではさかのぼりません。
初めて買うときに確かめること
- 78枚そろっているか(大アルカナだけの22枚組も売られています)
- カードの大きさ。手の小さい人は小さめの版が扱いやすい
- 日本語の解説書が付くか。付かない場合は、別に入門書を用意する
- 紙の厚さと表面の仕上げ。くり返し混ぜるので、薄すぎるものは傷みやすい
- 絵柄がライダー版か。解説書と絵が合うので、最初はこの絵柄が調べやすい
日本語の解説書が付く商品もありますが、版元や輸入元を確かめられなかったので、ここでは具体的な商品名を挙げません。販売ページで、付属品の表示を確かめてください。
買ったあとは、箱から出して一枚ずつ眺めるところから始めるのがおすすめです。78枚を一度に覚える必要はありません。毎朝1枚引いて、札の名前と、その日にあったことを一行書いておく。1か月続けると、解説書の言葉ではなく、自分の言葉で札を読めるようになっていきます。
よくある質問
Q. タロットは何枚組ですか?
A. 78枚です。大アルカナ22枚と、小アルカナ56枚(棒・聖杯・剣・金貨の4組×14枚)に分かれます。
Q. ライダー版はいつ作られたのですか?
A. 1909年12月にロンドンのライダー社から出ました。監修はアーサー・エドワード・ウェイト、絵はパメラ・コールマン・スミスです。
Q. 絵を描いたのは誰ですか?
A. パメラ・コールマン・スミスです。初版のカードには画家名の表示がなく、報酬は一時金のみで印税もありませんでした。1951年に貧しいまま亡くなり、近年は二人の名を並べて呼び直す動きがあります。
Q. 同じ絵柄のデッキがたくさんあるのは、なぜですか?
A. オリジナルの絵の著作権が、米国では切れており、英国と欧州連合では2022年1月1日に保護期間が終わったためです。商標や塗り直した版の新しい部分は、別に権利が残っています。
Q. 小アルカナに絵があるのは、ライダー版が最初ですか?
A. 最初ではありません。1490年ごろのソラ・ブスカ版が、すべての数札に絵がある最初のタロットとされています。その写真は1907年に大英博物館へ寄贈されていました。
Q. タロットは古代エジプト由来ですか?
A. 違います。15世紀半ばの北イタリアで、札を取り合う遊戯として生まれました。エジプト起源説は1781年に唱えられたもので、学術的には否定されています。


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