雲の形のメッセージとは|雲が顔や動物に見えるパレイドリアの研究、10種類の雲と2017年に加わった名前、形で天気を読む言い伝え

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サイン・前兆

空を見上げたら、雲が天使の羽やハートの形に見えた。龍や猫の顔に見えた。こんなとき、何かの知らせではないかと感じることがあります。

ここでは、雲が何かの形に見える仕組みを、心理学や脳の研究で確かめます。そのうえで、雲の形そのものに付けられた名前と分類を、気象庁と世界気象機関の資料で見ていきます。雲の形から天気を読む言い伝えのうち、根拠のあるものも紹介します。

雲が顔や動物に見えるのは「パレイドリア」

雲の形のメッセージとは|雲が顔や動物に見えるパレイドリアの研究、10種類の雲と2017年に加わった名前、形で天気を読む言い伝えのイメージ

雲が人の顔に見えたり、壁のしみが動物に見えたりすることを、パレイドリアといいます。もとは精神医学の言葉で、辞典は、空の雲が大入道の顔に見える、古い壁のしみが動物に見える、という例を挙げて、ものが実際とは違って知覚されることだ、と説明しています。

辞典によると、パレイドリアは意識がはっきりした状態で起き、本人は、それが本当は雲であり、しみであると分かっています。雲が龍に見えても、そこに龍がいると思うわけではありません。見えている形と、分かっている中身が、並んでいる状態です。

もとの記事は、雲の形を宇宙や守護霊、天使などからのサインとし、偶然に見えるものは偶然ではない、と書いていました。けれども、雲がものの形に見えること自体は、辞典が雲を例にして説明するほど身近な知覚です。研究でどこまで分かっているかを、次に見ていきます。

研究で分かっていること

  • 「顔がある」と言われると、雑音にも顔が見える
    2014年の研究では、健康な大人20人に、実際には雑音しか写っていない画像を、半分には顔か文字が入っていると伝えて見せました。参加者は、34%の画像で顔が、38%で文字が見えたと答えました。顔が見えたと答えたときには、脳の中で顔に反応する場所が働いていました。
  • ものの顔には、表情も年齢も読み取られる
    2022年に発表された研究は、大人あわせて3,815人に、ものの中に顔が見える写真を見せました。顔には表情・年齢・性別が読み取られ、表情では喜びが34%、驚きが19%、怒りが14%などで、無表情と答えられたのは19%でした。男性の顔に見られやすく、男女の比はおよそ4対1でした。
  • 赤ちゃんは生後10か月ごろから
    日本の研究者が2015年に発表した研究は、丸4つと輪郭だけの図を赤ちゃんに見せ、音を鳴らしたときに、口にあたる下の丸を見るかを調べました。生後10か月の16人と12か月の14人は、図が正しい向きのときに下の丸を長く見ましたが、逆さの図では差がなく、8か月の16人では差がありませんでした。生後8か月から10か月ごろに、ものの中に顔を見るようになる、と研究者は考えています。
  • サルにも起きる
    2017年の研究では、おとなのアカゲザル5頭が、人には顔に見えるものの写真を、似ているが顔に見えない写真より長く見て、目と口にあたる場所を、顔の写真を見るときと同じように見ました。人と他の種が共有する、顔を見つける仕組みから来るものだ、と研究者は結論しています。
  • 信じている人は「ある」と答えやすい
    2013年の研究は47人に、顔のような部分がある風景写真と、ない写真を見せました。超常的なことや宗教を信じる人は、顔のような部分をよく見つけた一方で、ないところにも顔があると答えやすく、見分ける力そのものは、信じない人と変わりませんでした。答える基準がゆるかった、ということです。見つけた顔をより顔らしく、感情があると答えたのは、超常的なことを信じる人でした。

雲の中に形を見る力は、赤ちゃんやサルにも見られる、ごく基本的な働きです。そして「何かがあるはず」と伝えられて見ると、雑音の中にさえ顔が見えます。信じている人ほど「見えた」と答えやすくなりますが、見分ける力が上がるわけではありません。雲の形を楽しむことと、それを知らせとして読むことは、分けて考えたほうがよさそうです。

雲には10の名前がある

雲の形には、国際的に決まった分類があります。気象庁は雲の観測の手引きで、雲を10種類に分け、よく現れる高さとともに説明しています。かっこの中は、辞典に載っている呼び名です。

  • 高い空(5〜13キロメートル)
    巻雲(すじ雲)、巻積雲(うろこ雲、いわし雲)、巻層雲(うす雲)。巻層雲は薄いベールのような雲で、太陽や月のまわりにかさを作ります。
  • 中くらいの高さ(2〜7キロメートル)
    高積雲(ひつじ雲)、高層雲(おぼろ雲)、乱層雲(あま雲)。高層雲は、すりガラス越しのように太陽がぼんやり分かる雲で、かさは作りません。
  • 低い空(地面の近く〜2キロメートル)
    層積雲(うね雲、くもり雲)、層雲(きり雲)、積雲(わた雲)、積乱雲(入道雲、かみなり雲)。積雲や積乱雲は、てっぺんが高い空まで届くことが多い雲です。

気象庁の手引きは、雲の形の違いは、氷の粒か水の粒か、粒の大きさ、光の当たり方、空気の流れなどで決まるので、雲の形や動く向き、高さを見ると、これまでとこれからの天気をおおまかに推し量れる、と書いています。雲の形が語っているのは、空の上の空気の様子です。

雲を分ける研究は1802年と1803年に始まり、1896年には最初の国際雲図帳が、28枚のカラー図版と、フランス語・ドイツ語・英語の説明で作られました。ちなみに気象庁によると、空を覆う雲が9割以上なら曇り、2割から8割なら晴れ、1割以下なら快晴です。

うろこ雲、ひつじ雲、いわし雲の名前

辞典に載る呼び名を見ると、巻積雲には、うろこ雲、さば雲、いわし雲、まだら雲、高積雲には、ひつじ雲、まだら雲、むら雲といった名があります。どれも、雲の形を魚や羊の群れに見立てた呼び方です。

いわし雲は古い言葉で、日本国語大辞典は、1693年の俳諧の句集『薦獅子集』に載った句を、最も古い例に挙げています。いわしの大漁、または暴風雨の前ぶれといわれた、とも説明されています。名前の由来には、いわしやさばのうろこに似ている、いわしの群れに見える、いわしやさばの大漁を知らせる、という三つの説があります。秋の季語です。

同じ辞典が挙げる最も古い例は、うろこ雲が有島武郎の小説『或る女』(1919年)、ひつじ雲が福永武彦の小説『忘却の河』(1963年)です。辞典の挙げる例が最も古いというだけで、それより前に使われていなかったとは言えませんが、見立ての呼び名は、江戸時代の俳諧から近代の小説まで、それぞれの時代の言葉に残っています。

雲を何かに見立てて名前を付けるのは、パレイドリアと同じく、形を見る人の側の働きです。ただしそれは、雲の見分け方を伝えるための名前で、雲からの伝言を読むものではありません。

2017年に正式な名前が加わった雲

雲の分類は、今も見直されています。世界気象機関は2017年に国際雲図帳を改訂し、初めてウェブサイトの形にしました。写真は世界中の雲好きから寄せられたものに入れかえ、600枚を超える新しい画像を収めています。この改訂で、次の名前が正式な分類として加わりました。

  • アスペリタス
    雲の底に、はっきりした波のような模様が広がる形です。2008年に、雲を愛でる会の創設者ギャヴィン・プレイター=ピニーが提案し、ネットで広まったのがきっかけでした。2013年に改訂の作業部会が採用を勧め、2017年に名前を少し変えて加わりました。
  • カバム
    冷たい水の粒でできた薄い雲の層に、丸い穴があく形です。穴のまん中から、雨や氷の粒の筋が垂れ下がります。
  • フラクタス
    雲の上の面にできる、巻いた波や砕ける波のような形で、短い時間で消えます。
  • ボルトゥス
    ほかの雲から離れて、横に長い筒のような形で浮かぶ雲です。
  • そのほか
    積乱雲に伴う形としてカウダとムルスが、雲に付いて現れる雲としてフルーメンが加わりました。

特殊な雲として、工場の上などで人の活動によってできた雲(飛行機雲もここに入ります)、山火事や火山の熱でできた雲、森の上で木々からの水蒸気でできた雲、大きな滝のしぶきでできた雲、飛行機雲が広がって変わった雲にも、正式な分類の名前が付きました。これらは新しく見つかった雲ではなく、前の版でも扱われていた種類を、分類の体系に組み入れたものです。

雲の形をよく見て写真に撮る人たちの提案が、国際的な分類に入ったことになります。雲の形を見る楽しみは、そのまま観察につながっています。

雲の形で天気を読む言い伝え

雲や風の様子を見て、経験から天気を予想することを、観天望気(かんてんぼうき)といいます。日本国語大辞典が挙げる最も古い例は、1946年に出た天気予報の本です。

もとの記事は、古代ギリシャやローマでは雲の形が神の意志を示すとされ、占雲術のようなことが行われていた、と書いていましたが、出典は示していませんでした。辞典で確かめられるのは、古代ギリシアの学者テオフラストスが紀元前300年ごろ、200あまりの天気の言い伝えを集めた本を出したことです。その中には、月や日がかさをかぶると雨、すじ雲は雨のきざし、といった言い伝えが入っていました。集められたのは天気を読む知恵で、雲からの伝言ではありません。

辞典は、言い伝えの中には根拠のないものや、当てはまる範囲が限られるものもあるが、一定の根拠が見いだせるものも多い、と書いています。雲に関係するものを見てみます。

  • 日や月にかさが出ると雨
    福岡管区気象台は、低気圧や温暖前線が近づくと、まず高い空にすじ雲やうす雲が現れ、うす雲が広がると太陽や月のまわりにかさができ、だんだん低い雲が出てきて、その後に雨が降ってくることがある、と説明しています。気象学者の藤原咲平によれば、かさが出た翌日に雨が降る確率は6割から8割だ、と辞典は紹介しています。
  • 山に笠雲がかかると雨
    富士山のような一つだけそびえる山の頂にかかる、笠の形の雲です。山の西側に低気圧の中心があることが多いため、雨の前ぶれになる、と辞典は説明しています。1803年の俳諧の歳時記にも、富士の笠雲が西へ行けば三日のうちに雨、東へ行けば快晴、という土地の人の言葉が載っています。笠雲の形を20種に分けた研究者もいました。
  • レンズ雲が出ると風が強くなる
    上空の風が強いときに、レンズのような平たい形の雲ができます。辞典は強い風の前ぶれとして挙げていて、千葉県の南部には、板のような雲が出ると風が強くなる、という言い伝えがあります。
  • 夕焼けは晴れ
    辞典は、天気が西から東へ移る地域で、低気圧や高気圧の近づき方をとらえた言い伝えだ、と説明しています。別の辞典でも、一定の根拠が見いだせる例として挙げられています。

反対に、星の様子を見て天気を占う方法のほとんどは意味がない、と書く辞典もあります。「雷が鳴ると梅雨が明ける」は、梅雨の間にも雷は鳴るので、表現が正しくないと指摘されています。天気の言い伝えのうち、統計で確かめられたものは非常に少ない、という指摘もあります。

形を見立てて季節を読む習わしもありました。春先、山の残雪が鳥などの形に見えるのを、農作業を始める目安にした「農鳥(のうとり)」です。辞典は、こうした雪の形は上空の気象を映しているので、ある程度は理にかなっている、と説明しています。雲や雪の形を何かに見立てて読む習わしは、天気と暮らしのための知恵として受け継がれてきました。

もとの記事のほかの説明

  • 「雲の上の人」
    もとの記事は、雲の上の人という言い方が示すように、雲は神や霊的な存在が宿る場所とされてきた、と書いていました。辞典では「雲の上」は、雲のある高い空のほか、宮中を指す言葉で、宮中に仕える人を「雲上人(うんじょうびと)」と呼びました。そこから、ふつうの人には手の届かない別世界の意味になったものです。神の宿る場所の例にはなりません。
  • 薄明光線
    雲の切れ間から差す光の筋を、もとの記事は転機の前ぶれとしていました。辞典では、雲の切れ間などから太陽の光が漏れ、放射状に広がって見える現象で、明け方や夕方によく見られます。雲の形ではなく光の通り道で、転機に見やすいという根拠は見つかりませんでした。
  • 動物やハートの意味
    鳥は旅立ち、龍は運気、猫は直感、ハートは愛と縁、といった意味づけには、出典が示されていませんでした。
  • 世界中で語られる天使の雲
    天使の雲という考えが交流サイトで世界中に語られている、という説明にも、出典がありませんでした。
  • 感謝が次のサインを引き寄せる
    感謝の気持ちがさらに良いサインを引き寄せる、という説明も、根拠は見つかりませんでした。

雲の形を楽しむために

  • 見えた形を写真に撮り、10種類のどの雲かを当ててみる
  • 雲の名前と、その後の天気を書き留めて、言い伝えが当たったかを確かめる
  • うろこ雲やひつじ雲が出たら、何に見えるかを家族や友人と言い合う。見え方が人によって違うのも楽しみの一つ
  • 珍しい形の雲は、2017年に名前の付いた雲かどうか、図鑑で調べてみる

雲を見上げるときは、太陽を直接見ないでください。太陽のそばの雲を見るときは、建物で太陽を隠すと安全です(目の守り方は彩雲の記事にまとめています)。高くもくもくと伸びる積乱雲が近づいてきたら、雷や急な強い雨、突風のおそれがあるので、屋内に入ってください。

雲の縁が虹色に光る彩雲や、虹にまつわる言い伝えは、彩雲の記事と虹の記事で紹介しています。

雲の種類を写真で見分けたいときは、気象予報士の岩槻秀明さんが書いた『最新の国際基準で見わける雲の図鑑』(日本文芸社、2021年)があります。目次には、10のグループの雲の図鑑のほか、特殊な仕組みでできる雲、空の様子から天気を予測する方法、雨の前ぶれといわれる雲、雲や空を撮るこつが並んでいます。

よくある質問

Q. 雲が顔や動物に見えるのはなぜですか?

A. ものの中に顔や形を見る「パレイドリア」という知覚です。辞典は雲が顔に見える例で説明していて、生後10か月ごろの赤ちゃんやサルでも、ものの中の顔に反応することが研究で示されています。

Q. 雲の形はメッセージなのですか?

A. そう受け止める考え方はありますが、根拠は見つかりませんでした。研究では、超常的なことを信じる人ほど「顔がある」と答えやすい一方、見分ける力は信じない人と変わりませんでした。

Q. 雲は何種類ありますか?

A. 気象庁は10種類に分けています。高い空の巻雲・巻積雲・巻層雲、中くらいの高さの高積雲・高層雲・乱層雲、低い空の層積雲・層雲・積雲・積乱雲です。

Q. うろこ雲やひつじ雲は正式な名前ですか?

A. 辞典に載っている呼び名です。うろこ雲やいわし雲は巻積雲、ひつじ雲は高積雲の呼び名で、いわし雲は1693年の俳諧の句集に古い例があります。

Q. 雲の形で天気は分かりますか?

A. おおまかには分かります。日や月にかさが出ると雨、山に笠雲がかかると雨などは、低気圧の近づき方で説明がつく言い伝えです。ただし、統計で確かめられた言い伝えは多くありません。

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