朝、窓の外でカラスが二回鳴いた。夕方、帰り道でカラスが何度も鳴いていた。カラスの鳴き声は、なぜか気になるものです。鳴く回数や時間に意味があるのでは、と調べる人もいるでしょう。
ここでは、カラスの鳴き声にまつわる日本の言い伝えを、記録に残っているものから確かめます。そのうえで、カラスが実際に鳴き声で何を伝えているのか、研究で分かってきたこと、人の言葉をまねるカラスの話、鳴き声が気になったときの受け止め方をまとめます。
鳴き声で吉凶を占う「烏鳴き」

日本には、カラスの鳴き声で吉凶を占う「烏鳴き(からすなき)」という俗信があります。とくに、悪いことが起きる前ぶれとする言い伝えで、百科事典は、嫌な声で鳴くと死人が出る、という俗信が全国にあったと書いています。
その一方で、カラスは神の使いとして大切にもされてきました。正月にカラスに餅や米を供えて、どう食べるかでその年の豊作・不作を占う「烏勧請(からすかんじょう)」という行事も、各地で行われてきました。カラスは、怖がられると同時に、神さまに近い鳥として見られてきたのです。
鳴く回数の言い伝え——各地の記録
国際日本文化研究センターの「怪異・妖怪伝承データベース」には、カラスの鳴く回数にまつわる各地の言い伝えが記録されています。いくつか挙げます。
- 富山県氷見(1942年の記録)
カラスが二声・三声で鳴くと、死人が出る。 - 栃木県(1935年・1990年の記録)
4声、あるいは2声で鳴くと人が死ぬ。月夜なら女の人、闇夜なら男の人が死ぬ。 - 奈良県天川(1986年の記録)
三声鳴いて止むカラスを「三声ガラス」と呼ぶ。 - 岩手県遠野(1933年の記録)
長く続けて鳴くと死人が出る。ただし、土地や家によって言い伝えが違う。 - 奈良県(1934年の記録)
「コカコカ」と鳴くと、子どもが生まれる。
見てのとおり、記録に残る言い伝えの多くは、死の前ぶれとしての話で、何回が吉、何回が凶という決まりは、土地によってばらばらです。「2回鳴くのは良いしるし」とする資料は、調べた範囲では見つかりませんでした。「1回はあいさつ、2回は注意を促している」といった説明も見かけますが、出典は示されていません。
昔の言い伝えは、医療が乏しく、人の死が身近だった時代の暮らしの中で生まれたものです。いまカラスが二回鳴いたからといって、怖がる必要はありません。カラスには、カラスの理由があって鳴いています。
このデータベースには、言い伝えを聞き取った年と場所が、もとの資料とともに記録されています。同じ「カラスの鳴き声」でも、土地や時代によって読み方がまったく違うことが、記録を並べるとよく分かります。言い伝えは、その土地の人たちが暮らしの中で語り継いできた話として受け取るのが、いちばん正確な読み方です。
カラスが、鳴き声で伝えていること
カラスの鳴き声は、研究でも少しずつ分かってきています。
- 2種類のカラスで、声が違う
日本でふつうに見られるカラスのうち、ハシブトガラスは澄んだ「カアカア」、ハシボソガラスは濁った「ガアガア」という声で鳴きます(大阪府)。 - 巣に近づく人への警告
4月上旬から7月下旬の子育ての時期には、巣に近づく人に「カッカッカッカ」と鳴いて威嚇します(札幌市)。 - 仲間への危険の知らせ
襲われたカラスの悲鳴を聞くと、ほかのカラスは近寄らなくなります。宇都宮大学の塚原直樹さんの研究では、この性質がカラスよけの装置にも生かされています。 - 鳴き声の種類の多さ
東京大学総合研究博物館の松原始さんは、ハシブトガラスの声は、少なくとも30種類ほどに分けられるはずだ、と話しています。 - 数を数えて鳴く
2024年に科学誌サイエンスに載ったドイツの研究では、訓練したハシボソガラスが、合図に応じて1回から4回まで鳴き分けました。
カラスが何回鳴くかには、カラスの側の意味があります。鳴く回数を人の運命に結び付ける言い伝えより、カラスどうしのやりとりとして聞いてみると、毎日の鳴き声の聞こえ方が変わってきます。カラスは日の出の30分ほど前から活動を始めるので(大阪府)、朝早くの鳴き声は、カラスにとっての一日の始まりの声でもあります。
人の言葉をまねる、しゃべるカラス
2022年には、岡山県倉敷市で、野生のカラスが「おはよう」と聞こえる声で鳴いたことが話題になりました。松原さんは、飼われているカラスが人の言葉を覚えるのは珍しくない、と説明し、将棋の「待った」を覚えた例も紹介しています。
海外のワタリガラスも、30種類以上の鳴き声が記録されていて、飼育されているものは人の言葉もまねます(スミソニアン国立動物園)。カラスが「しゃべる」のは、霊的な知らせというより、まわりの音を覚えてまねる力が高いことの表れです。
スピリチュアルな受け止め方
スピリチュアルの解説では、カラスの鳴き声を「知らせ」や「気づきのきっかけ」として受け取る読み方が紹介されています。神話の八咫烏が神武天皇を熊野から大和へ導いたように、カラスを道案内の鳥と見る考え方もあります。
なお、「三本足の八咫烏が日本書紀に書かれている」と説明されることがありますが、古事記や日本書紀の八咫烏は「大きな烏」の意味で、三本足の姿は書かれていません。三本足の姿は、中国の、太陽にすむ烏の話にも由来すると説明されています。熊野本宮大社は、八咫烏の三本足を太陽の化身などと説明しています。
受け取るなら、怖い前ぶれとしてではなく、立ち止まって身の回りを見直す合図にするのが、穏やかな付き合い方です。鳴き声を聞いたときに考えていたことを一行書き留めておくと、気がかりなことが何なのかが見えてくることもあります。同じ時間に何度も鳴き声が気になるなら、近くにカラスのよく来る木や電線がないか、窓の外を眺めてみてください。
近くで激しく鳴かれたら
子育ての時期(4月上旬〜7月下旬)に、カラスが近くで「カッカッカッカ」と激しく鳴いたり、頭の上を低く飛んだりするなら、近くに巣があるのかもしれません。札幌市は、巣に近づく人をカラスが威嚇することがあると説明しています。その場所から離れ、しばらくは別の道を通るようにしてください。
例として、直感をテーマにした本『なぜかうまくいく人のすごい直感力』(上地一美、学研プラス、2022年)の販売ページです。
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よくある質問
Q. カラスが2回鳴くのは、何かのしるしですか?
A. 各地の言い伝えの記録では、二声で鳴くのを死の前ぶれとする土地もありますが、決まった意味はなく、土地によって違います。「2回は良いしるし」とする資料は見つかりませんでした。カラスにはカラスの理由があって鳴いています。
Q. カラスが鳴くのは、不吉なことですか?
A. 鳴き声を凶事の前ぶれとする「烏鳴き」の俗信はありますが、カラスは神の使いとしても大切にされてきました。鳴き声だけで不吉と決める必要はありません。
Q. カラスは、本当にしゃべりますか?
A. 飼われているカラスが人の言葉を覚えるのは珍しくない、と専門家は説明しています。2022年には、野生のカラスが「おはよう」と聞こえる声で鳴いたことも話題になりました。
Q. 近くでカラスにしつこく鳴かれたら、どうすればいいですか?
A. 4月から7月の子育ての時期なら、近くに巣があるのかもしれません。その場所から離れ、しばらく別の道を通ってください。
Q. 鳴き声で、カラスの種類は分かりますか?
A. 澄んだ「カアカア」ならハシブトガラス、濁った「ガアガア」ならハシボソガラスのことが多いとされます。鳴き声に耳を澄ますと、近所にどちらのカラスがいるのかが分かってきます。姿も合わせて見ると、見分けやすくなります。



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