食事の途中や話している最中に、急にしゃっくりが出て止まらない。スピリチュアルの解説では、しゃっくりを、だれかに思われているサインや、立ち止まるようにというメッセージと説明することがあります。
ここでは、まず長く続くしゃっくりで受診する目安を、医学の教科書と家庭向けの医学事典で確かめます。そのあとで、しゃっくりの音が出る仕組み、急に出るきっかけ、「しゃっくり」という言葉の古い形、「噂されている」という言い伝えの出どころ、昔からの止め方とその効き目、世界最長の記録を見ていきます。
まず、続いている時間を見る

もとの記事は、しゃっくりが続いたり、繰り返し出たりするのを、オーラが浄化・更新されているサインとし、頻繁に出るときはエネルギーの疲れのサインなので、お風呂や散歩でケアするよう書いていました。けれども、長く続くしゃっくりは、体の病気のしるしのことがあります。
医学の教科書『内科学』は、しゃっくり(吃逆)を続く時間で3つに分けています。48時間以内の発作、48時間から1か月の持続性のもの、1か月を超える難治性のものです。発作は健康な人にも起こり、問題になることは少ない一方、持続性と難治性のものは、原因の病気を念頭に置いて調べる必要がある、としています。眠っている間も続く場合は、体の病気を強く疑う、とも書いています。
家庭向けの医学事典は、長く続くしゃっくりの原因として、次のような病気や状態を挙げています。
- 食道
胃の中身が食道に逆流する胃食道逆流症 - おなか
最近受けた腹部の手術、胆のうの病気、肝炎、肝臓のがん、膵炎、妊娠 - 胸
最近受けた胸の手術、心臓を包む膜の炎症(心膜炎)、肺炎など - そのほか
アルコール使用障害、一部の脳腫瘍や脳卒中、腎不全
同じ事典は、頭痛、筋力の低下、しびれ、体のふらつきといった神経の症状を伴うときはすぐに、そうした症状がなくても2〜3日以上続くときは、医師の診察を受けるよう勧めています。数分で止まる短いしゃっくりに、受診はいりません。百科事典も、腹膜炎や開腹手術のあとに起こるしゃっくりは危険な徴候とされる、と書いています。
しゃっくりに、顔の片側のゆがみ、片方の手足に力が入らない、ろれつが回らないといった症状が突然加わったら、脳卒中のおそれがあります。すぐに救急車を呼んでください。しゃっくりが2日を超えて続く、眠っていても止まらない、手術のあとや持病があって続く、というときは医療機関で相談してください。救急車を呼ぶか迷うときは、救急安心センター(♯7119)で医師や看護師などに相談できます(実施していない地域や、別の番号の地域もあります)。
「ヒック」は、声門が急に閉じる音
百科事典によると、しゃっくりは、横隔膜が突然縮んで急に息を吸い込み、その途中で声門(左右の声帯のあいだのすき間)が閉じるために、特有の音が出るものです。横隔膜の動きに関わる神経の反射で起こるので、自分の意思で止めるのは難しいとされます。教科書によると、横隔膜だけでなく、首や肋骨のあいだの呼吸の筋肉も一緒に縮みます。
2022年には、しゃっくりを繰り返す50歳の男性1人を、X線の透視動画と録音を同時にとって調べた報告が出ています。「ヒック」という音は、声門が急に閉じるときに出ていて、のどのふたにあたる喉頭蓋は動いていませんでした。
国語辞典や小さな百科事典の中には、しゃっくりを、声門が開いて音を出す現象と書いているものもあります。医学の教科書や、ここで引いたほかの百科事典、家庭向けの医学事典の説明は、どれも「閉じる」です。
急に出るきっかけ
急にしゃっくりが出たときに、まず振り返りたいのは、直前に何をしていたかです。家庭向けの医学事典によると、短いしゃっくりは、はっきりした原因がないことが多い一方で、次のようなときに起こりやすいとされます。
- 食べたり飲んだりして、胃がふくらんだとき
- お酒を飲んだとき
- 熱いものや、刺激の強いものを飲み込んだとき
- 笑ったり話したり、食べたり飲んだりと、人と一緒に過ごしている場
- 呼吸が速くなるなどして、血液中の二酸化炭素が減ったとき
百科事典の文化史の項には、盗み食いやつまみ食いをするとしゃっくりが出る、という俗信が紹介されていて、急いで食べることへの戒めだろう、と説明されています。急いで食べるとしゃっくりが出やすいことは、昔の暮らしの言い伝えにも残っているわけです。日本大百科全書も、熱いものを飲んだときなど、病気と関係なく起こることがあると書いています。
「さくり」から「しゃっくり」へ
日本国語大辞典によると、「しゃっくり」は「しゃくり」が変わった言葉で、「しゃくり」はさらに古い「さくり」が変わったものです。しゃっくりの意味の「さくり」は、平安時代の辞書『和名抄』(934年ごろ)に見えます。「さくり」や「しゃくり」には、しゃくり上げて泣くという意味もあります。
鎌倉時代、道元の言葉を弟子の懐奘(えじょう)が記録した『正法眼蔵随聞記』(1235〜38年)には、しゃっくりの話が出てきます。百科事典は、しゃっくりをしている人につらいことを言うと、言い訳をしようと本気になるうちに止まる、という例だと説明し、病は気の持ちようだという教えの中で語られていると書いています。江戸時代の1694年の雑俳には、びっくりさせてしゃっくりを止めてやる、という句があります。
「噂されている」は、くしゃみの言い伝え
もとの記事は、しゃっくりが出るとだれかに思われている、という言い伝えが日本を含む世界各地にあり、日本では古くから、生き霊や想念を受け取っているサインとされてきた、と書いていました。辞典と百科事典で探した範囲では、日本のしゃっくりの俗信として載っていたのは、先に挙げた「盗み食いをすると出る」でした。生き霊と結びつけた説明は見つかりませんでした。
だれかがうわさをしている、と結びつけられているのは、くしゃみのほうです。百科事典によると、中国の古い詩集『詩経』に、くしゃみが出ればだれかがうわさをしている、という考えが見えます。日本にも、くしゃみの回数で、褒められている、憎まれている、惚れられている、風邪をひく、と読む俗信があります。
外国には、しゃっくりについても似た言い伝えがあります。英語版ウィキペディアは、ドイツやハンガリー、インド、ギリシャ、トルコなどの言い伝えで、しゃっくりはその場にいない人に話題にされているときに出る、とされると紹介しています(新聞記事をもとにした二次資料です)。もとの記事が書いていた、ヨーロッパで悪霊が触れているしるしとされた、という話の出どころは見つかりませんでした。
朝・昼・夜でメッセージが違う、回数で意味が違う、という説明も、出どころは確かめられませんでした。しゃっくりが出たときにだれかの顔が浮かんで、連絡してみる、というのは楽しみ方の一つとして構いません。ただ、続く時間を見ることを先にしてください。
昔からの止め方と、その効き目
しゃっくりを止める工夫は、とても古くからあります。百科事典の文化史によると、古代ギリシャのプラトンの『饗宴』では、医師エリュクシマコスが、息を止める、水でうがいをする、くしゃみをする、という方法を挙げ、喜劇作家のアリストファネスがそれを全部試しています。ヒッポクラテスは、しゃっくりが病気のしるしである場合があることを知っていた、とされます。
日本にも、しゃっくりを止めるまじないがたくさんあります。百科事典に挙げられているものには、次のようなものがあります。
- 鼻をつまんで、水やご飯を飲み込む
- 箸を頭の上に逆さに立てる
- 10から1まで、一息で逆に数える
- 水を満たした茶碗に箸を十文字に渡し、区切られたところから順に飲む
- 手のひらに「柿」の字を書いて、飲むまねをする(江戸時代末の育児書『撫育草(そだてぐさ)』にある、柿のへたを煎じて飲む方法と同じ流れとされる)
では、効き目はどうでしょうか。家庭向けの医学事典は、息を止める、水を急いで飲む、乾いたパンやグラニュー糖、砕いた氷を飲み込む、舌を軽く引っぱるといった家庭での方法について、ほとんどは効かないか、わずかに効くだけで、どれかが特に優れているわけでもないが、一般に安全なので試しても害はない、としています。百科事典も、民間療法は安全だが確実ではない、と書いています。
ただし、目の玉を押す、首の神経を押さえる、のどの奥を刺激するといった方法は、医師が行うものだとされています。自分で試さないでください。紙袋を口に当てて呼吸する方法も、長く続けると酸素が足りなくなるという注意があるので、ここでは勧めません。
2021年の「吸って飲み込む道具」の調査
2021年6月、米国医師会の学術誌の一つに、しゃっくりを止めるための、ストローのような道具の調査が載りました。強い力で吸い込みながら水を飲み込むための道具です。
道具を希望した674人のうち、研究への参加に同意したのは290人で、有効な回答は249人でした(平均30.9歳、1〜90歳)。オンラインの質問票で、約92%が、道具でしゃっくりが止まったと答え、効き目の質問に答えた203人のうち183人(90.1%)が、家庭での方法より良いと評価しました。
ただ、この調査には比べる群がなく、評価は本人の答えによるものです。論文の著者の一人は道具の特許の発明者で、道具はその権利を受けた会社が扱い、道具の代金もその会社がクラウドファンディングで参加者から集めていました。翌年の報告は、偽の道具と比べる試験を計画している、と書いています。
2026年には、三重大学の研究者たちが、抗がん剤の治療で入院した44人を対象にした研究を発表しました。道具の使い方を練習する段階で、3人が誤嚥(飲み込んだものが気管に入ること)を起こして研究から外れています。しゃっくりが出た19人では、回数の中央値が1分あたり6.0回から0.3回に減りましたが、使っている最中にも1人が一時的に誤嚥していて、著者は慎重に使うことと、比べる試験がさらに必要だと結論しています。効き目がはっきり確かめられた方法とは、まだ言えません。
68年続いた、世界最長の記録
ギネス世界記録によると、最も長いしゃっくりの発作の記録を持つのは、アメリカの農家チャールズ・オズボーンです。1922年、解体する豚を扱っていて倒れたときに始まり、昼も夜も1分に20〜40回のしゃっくりが続きました。止まったのは1990年2月のある朝で、およそ68年に及びました。回数は4億2,000万回以上と見積もられています。
医師は、倒れたときに脳の根もとの小さな血管が切れたのではないかと考えました。治療のために4回、遠くの町まで通いましたが、そのたびにしゃっくりは戻り、友人が背後で散弾銃を撃って驚かそうとしたこともあったそうです。
「しゃっくりが100回続くと死ぬ」という話がありますが、出どころは確かめられませんでした。1分に10回出るなら、100回には10分で届きます。回数を数えて怖がるより、どれだけの時間続いているか、ほかの症状がないかを見るほうが、受診するかどうかを決める手がかりになります。
しゃっくりを「サイン」として受け取るなら
急なしゃっくりに意味を見つけたくなったときは、まず直前のことを振り返ってみてください。急いで食べた、熱いものを飲んだ、笑い続けた、お酒を飲んだ。きっかけが思い当たれば、食べ方や過ごし方を見直す、体からの知らせとして受け取ることができます。
反対に、思い当たることがないのに2日を超えて続く、眠っていても止まらない、頭痛やしびれがある、というときは、サインの意味を考えるより先に受診してください。昔の人も、しゃっくりを止めようとまじないを工夫する一方で、長く続くしゃっくりを病気のしるしとして見ていました。
しゃっくりやくしゃみにまつわる言い伝えを、地域ごとに読みたいときは、常光徹さんの『日本俗信辞典 身体編』(角川ソフィア文庫、2024年)があります。頭や口、手足といった体の部位や、くしゃみ・しゃっくりなどの体の現象にまつわる前兆や占い、禁忌、まじないを集め、伝わる地域を添えた辞典で、出版社の内容の例には、しゃっくりのときに茶碗に箸を十字に置いて飲むまじないが挙げられています。
よくある質問
Q. 急にしゃっくりが出るのは、だれかに噂されているサインですか?
A. 外国には、その場にいない人に話題にされているとしゃっくりが出る、という言い伝えがあります。日本の辞典で「うわさ」と結びつくのはくしゃみで、しゃっくりは盗み食いをすると出る、という俗信が載っています。急に出るきっかけには、胃のふくらみやお酒、熱いものを飲み込むことなどがあります。
Q. しゃっくりが何日続いたら受診すればいいですか?
A. 頭痛や筋力の低下、しびれ、ふらつきを伴うときはすぐに、そうでなくても2〜3日以上続くときは受診してください。眠っている間も続くときは、体の病気を強く疑うとされます。
Q. よく効く止め方はありますか?
A. 家庭での方法は、ほとんどが効かないか、わずかに効く程度ですが、一般に安全とされます。目の玉を押すなどの方法は医師が行うものです。吸って飲み込む道具の調査は比べる群のない自己申告で、誤嚥が起きた研究もあり、効き目は確かめられていません。
Q. しゃっくりが100回続くと死ぬというのは本当ですか?
A. 出どころは確かめられませんでした。1922年から1990年まで、およそ68年しゃっくりが続いた記録もあります。回数より、続いている時間とほかの症状を見てください。
Q. しゃっくりの「ヒック」という音は、どうして出るのですか?
A. 横隔膜が急に縮んで息を吸い込む途中で、声門が急に閉じるために出ます。2022年に、X線の透視動画と録音で確かめた報告があります。


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