貔貅(ひきゅう)は、中国に伝わる想像上の獣です。風水では、財宝を飲み込んで外に出さない、お金をためる縁起物とされ、置物や、ブレスレット・ペンダントの飾りとして人気があります。
ただ、貔貅という言葉は、もとは別のものを指していました。ここでは、貔貅という言葉の古い意味、墓の前に置かれた石の獣「天禄」「辟邪」との関係、金運にまつわる言い伝え、置き方の考え方、置物の選び方を順にまとめます。金運の効き目は言い伝えで、確かめられたものではありません。
もとは『史記』に出てくる戦の猛獣

貔貅の名は、中国の歴史書『史記』の五帝本紀に出てきます。黄帝が、熊(くま)や羆(ひぐま)、貔貅、貙(ちゅう)、虎といった猛獣を教え導き、阪泉の野で炎帝と戦って、三度の戦いのすえに勝った、という場面です。
辞典によると、貔貅はもともと猛獣の名で、貔が雄、貅が雌とされます。その獣を描いた旗や、勇ましい兵士のたとえとしても使われてきました。辞典の説明には、財運の意味は出てきません。
金運の霊獣としての貔貅は、こうした古い意味とは別に、のちに広まった姿です。日本語の百科事典サイトでも、いまでは貔貅は、もっぱら財運の象徴とされている、と説明されています。
墓の前の石獣「天禄」「辟邪」との関係
中国の漢の時代の墓の前には、翼のある獣の石像が置かれ、「天禄(てんろく)」「辟邪(へきじゃ)」と呼ばれています。角が1本のものと2本のものがあり、どちらをどう呼ぶかは、資料によって食い違います。三国時代の学者・孟康の注釈では、1本角を天鹿、2本角を辟邪とし、日本の百科事典には、2本角を天禄、1本角を麒麟と呼ぶものもあります。
中国の研究者の解説によると、天禄・辟邪の石獣は後漢の時代に集中していて、名前の刻まれたものは、南陽にある宗資の墓の1体だけです。しかも、その右肩の「天禄」の字は、明の時代に刻み直されたものだといいます。貔貅を天禄・辟邪の別名とする説についても、古い時代のはっきりした記録はないようだ、とされています。
英語版の百科事典では、角が1本のものを雄で財をつかさどる「天禄」、2本のものを雌で邪を払う「辟邪」と説明していて、置物も雄と雌の一対で売られることがあります。
「お尻の穴がない」という言い伝え
貔貅が金運の霊獣とされる理由として、よく語られるのが「口はあるのにお尻の穴がないので、飲み込んだ財を外に出さない」という話です。英語圏の解説では、天の神である玉皇大帝に叩かれてお尻の穴がふさがった、という話や、竜王にふさがれた、という話も紹介されています。
どちらも言い伝えとして語られている話で、古い書物にさかのぼることはできませんでした。とはいえ、「入ってきたものを大切に守る」というイメージは分かりやすく、お金の使い方を見直したいときの目印として、この話を受け取ることはできます。
置き方の考え方
貔貅の置き方については、頭を外に向ける、玄関に置く、寝室は避けるなど、さまざまな作法が紹介されていますが、調べた範囲では、古い出典で確かめられる決まりは見つかりませんでした。英語の百科事典も、財を招くために置かれる、と書くだけです。
決まりがない以上、置き方に神経質になる必要はありません。毎日目に入る場所、ほこりをためずに大切にできる場所に置くことが、縁起物との無理のない付き合い方です。一対のものは、二体を並べて置くと、見た目の釣り合いもとれます。財布や通帳をしまう場所の近くに置いて、お金を出し入れするたびに目に入るようにする、という置き方もできます。
置物を選ぶときに見るところ
貔貅の置物は材質の幅が広く、見た目が似ていても中身が違います。材質ごとに、確かめたいことが変わります。
- 翡翠と書かれたもの
手を加えていない良質な翡翠は、もともと高価な石です。翡翠と書かれているのに安いものは、別の石や、色を染めたものを疑ってください。 - 黒曜石のもの
黒曜石は火山ガラスなので、欠けると縁が鋭くなります。割れた面で手を切ることがあります。 - 水晶のもの
水晶は硬さ7で、ほかの材質より傷が付きにくい石です。一方で、硬い床に落とすと欠けることがあります。 - 金属のもの
金色などに仕上げたものは、こすると表面の加工がはがれて、下地が出てくることがあります。 - 一体か一対か
一体で売られているものと、二体一対のものがあります。数で値段も飾る場所も変わるので、買う前に確かめてください。
手入れは、ほこりをやわらかい筆で払うくらいで十分です。金属のものは、手の脂が付いたままにすると黒ずみやすいので、触ったあとは乾いた布でふいておきます。
翡翠と黒曜石の貔貅を選ぶ前に知っておきたいこと
貔貅は、いまでは翡翠のペンダントの意匠としても人気があります。翡翠と黒曜石は、貔貅の飾りによく使われる石なので、少し詳しく見ておきます。
- 翡翠
日本では、2016年9月に日本鉱物科学会が翡翠を「国石」に選んでいます。ひと口に翡翠と言っても、硬玉(ジェダイト、硬さ6.5〜7)と軟玉(ネフライト、硬さ6〜6.5)があり、成分も鉱物の種類も違う別の石です。樹脂を染み込ませて漂白したもの(Bジェイドと呼ばれます)や、染めたもの(Cジェイド)もあるので、処理の有無を確かめてから選んでください。 - 黒曜石
火山岩の一種で、ほとんどがガラスでできています。割ると鋭い割れ口ができるため、旧石器時代から、やじりや刃物などの石器に使われてきました。日本では、長野県の霧ヶ峰周辺(和田峠など)や、北海道の旧白滝村などが産地として知られています。硬さは5で、水晶より軟らかい石です。
例として、銅製の貔貅の一対(二体)の販売ページです。大きさと重さは、販売ページの表示で確かめてください。
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よくある質問
Q. 貔貅(ヒキュウ)とは何ですか?
A. 中国に伝わる想像上の獣です。もとは『史記』に出てくる戦の猛獣の名でしたが、いまは財を飲み込んで外に出さない、金運の霊獣とされています。
Q. 貔貅はどこに置くのがよいですか?
A. 頭を外に向ける、玄関に置くなど、さまざまな作法が紹介されていますが、古い出典で確かめられる決まりはありません。毎日目に入り、ほこりをためずに大切にできる場所に置くのが無理のない置き方です。
Q. 角が1本のものと2本のものは、何が違いますか?
A. 英語版の百科事典では、1本角を雄で財の「天禄」、2本角を雌で邪を払う「辟邪」と説明しています。ただし、古い資料では呼び方が食い違っています。
Q. お尻の穴がないというのは本当ですか?
A. 言い伝えとして語られている話で、古い書物にさかのぼることはできませんでした。入ってきたものを大切に守る、という意味の目印として受け取るとよいでしょう。
Q. 一体と一対(二体)では、どちらがよいですか?
A. 決まりはありません。英語版の百科事典の説明のように、雄の天禄(財)と雌の辟邪(邪を払う)を並べる、という考え方で一対を選ぶ人もいます。置く場所の広さに合わせて選べば十分です。
Q. 翡翠の貔貅は、本物かどうかどう見分けますか?
A. 手を加えていない良質な翡翠は高価なので、安すぎるものは別の石や処理された石の可能性があります。樹脂を染み込ませたもの、染めたものもあるので、処理の有無を販売店に確かめてください。



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