ライオンズゲートとは|8月8日とシリウスの関係、古代エジプトの新年はユリウス暦7月19日、日本で見え始める日の計算、夜空ではかに座の太陽

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星読み・暦

毎年8月8日のころになると、「ライオンズゲートが開く」という言葉を見かけます。占星術でいう獅子座の季節に、夜空でいちばん明るい恒星シリウスが夜明けに昇り、宇宙の門が開く日だ、と説明されるスピリチュアルの言葉です。古代エジプトの言い伝えにつながる、と紹介されることもあります。

ここでは、その説明に出てくる「獅子座」「シリウス」「古代エジプト」を一つずつ確かめました。古代エジプトの暦は辞典で、8月8日の太陽の位置はアメリカのジェット推進研究所が公開している天体の位置の計算サービスで確かめ、シリウスが日の出前に見え始める日は自分で計算して、今の日本の各地の目安を出しています。言葉が日本の本に出てきた時期は、国立国会図書館の記録で調べました。

ライオンズゲートと呼ばれているもの

ライオンズゲートとは|8月8日とシリウスの関係、古代エジプトの新年はユリウス暦7月19日、日本で見え始める日の計算、夜空ではかに座の太陽のイメージ

ライオンズゲートは、7月下旬から8月12日ごろにかけて宇宙の門が開き、8月8日に最も高まる、と説明されます。太陽が獅子座にあること、シリウスが夜明けに昇ること、8が二つ並ぶ日付であることの三つが、理由に挙げられます。けれども、その期間や8月8日という日付を、だれがいつ決めたのか、出どころは見つかりませんでした。

国立国会図書館で「ライオンズゲート」を調べると15件が見つかり、そのうち9件は、同じ名前の映画会社と、カナダのバンクーバーにある橋の資料でした。占いの意味で最も古いのは、2021年12月に文庫で出た望月麻衣さんの小説『満月珈琲店の星詠み』の3巻目で、副題が「ライオンズゲートの奇跡」です。ほかに、2023年と2024年に出た星占いや開運の本の目次に、この言葉があります。日本の本では、2020年代に入ってから出てくる言葉です。

8月8日の太陽は、占星術では獅子宮、夜空ではかに座

占星術の12星座は、正確には、春分の点から30度ずつ区切った「宮」という区画です(太陽星座の記事で紹介しました)。2026年の獅子宮は、日本時間7月23日4時13分から8月23日11時19分まででした。8月8日の太陽は獅子宮の15度あたりにあり、占星術の上では、たしかに獅子座の季節です。

一方、夜空の星座で見ると、話が変わります。計算サービスで太陽の位置を調べると、2026年8月8日の太陽は、国際天文学連合が決めた星座の境界では、かに座の中にありました。太陽が夜空のしし座に入るのは8月11日です(計算)。もとの記事は、太陽が獅子座に滞在することをライオンズゲートの「天文的な要素」としていましたが、獅子座は占星術の区画のほうの話です。宮と星座が約1か月分ずれているのは、地球の軸の向きがゆっくり回る歳差のためです。

太陽とシリウスが重なる時期だ、という説明も見かけます。シリウスの2026年の位置を、黄道に沿って測った角度(黄経)に直すと約104.4度で、太陽がこの黄経に来るのは7月6日ごろです(計算)。しかもシリウスは黄道から南へ約40度離れていて、太陽とぴったり重なることはありません。

シリウスが「日の出前に初めて見える」ということ

シリウスはおおいぬ座の一等星で、全天で最も明るい恒星です(天体としての姿はスターシードの記事で紹介しています)。冬の宵に南の空で目立つ星ですが、初夏には太陽と同じ方向の近くにあるため、昼の空に隠れて見えなくなります。

星は、毎日前の日より約4分早く昇ります。地球が太陽のまわりを1年で1周するぶん、星の動きが太陽より1日に約1度(360÷365.24)先に進むためで、時間にすると約4分です(計算)。そのため、太陽に隠れていたシリウスも、夏になると少しずつ夜明け前の空に顔を出すようになります。

日本天文学会の天文学辞典は、天体が太陽を従えるかのように日の出直前に東の空に上ってくることをヘリアカルライジングと呼び、エジプト文明やマヤ文明では、シリウスのそれを1年の暦の区切りにした、と説明しています。シリウスは毎日昇っていますが、意味があるのは、太陽に隠れていた期間のあとで初めて夜明けの空に見える日です。ここでは「日の出前に初めて見える日」と呼びます。

古代エジプトの新年は、ユリウス暦7月19日

雨の少ないエジプトでは、ナイル川の増水が暮らしの最大の関心事でした。世界大百科事典によると、ヘリオポリスやメンフィスのあたりでは7月下旬からナイル川の増水が始まり、同じころ、シリウスが日の出直前に初めて見えました。それは通常ユリウス暦の7月19日で、古代エジプトの人々はこの日を新年としました。女神イシスに重ねられたシリウスの女神の涙で、ナイルの洪水が起こると考えられていた、と事典は書いています。

暦は1か月30日を12か月、それに5日を加えた365日で、1年を洪水・種まき・収穫の三つの季節に分けていました。4年に1度のうるう年がないため、暦の新年はシリウスの見え始めから4年で1日ずつずれ、1460年で元に戻ります。これをソティス周期(シリウス周期)と呼び、後139年に二つの新年が一致したことが、エジプトの年代を決める手がかりになりました。

もとの記事は、シリウスが夜明けに昇る時期が8月8日前後と重なり、ライオンズゲートは古くから語り継がれてきた、と書いていました。けれども事典が伝える古代エジプトの新年は、ユリウス暦の7月19日です。8月8日でも、獅子座の季節でもありませんでした。「ライオンズゲート」という言葉が古代からあったことを示す記録も、見つかりませんでした。

王朝時代の見え始めは、今の暦で6月下旬から7月

ユリウス暦は今の暦(グレゴリオ暦)と日付がずれているうえ、シリウスが見え始める日は、時代とともに少しずつ動きます。メンフィス(今のカイロの近く)でシリウスが見え始める日を計算すると、次のようになりました(計算。前提は次の節で説明します)。

  • 紀元前2500年ごろ
    今の暦で6月下旬。太陽は夏至のころの位置
  • 紀元前1300年ごろ
    今の暦で7月上旬。太陽は占星術の蟹宮の10度あたり
  • 後139年
    ユリウス暦の7月19日ごろ、今の暦で7月18日ごろ。太陽は蟹宮の20度台
  • 2026年(カイロ)
    8月2〜6日。太陽は獅子宮の10度あたり

後139年の計算は、事典の「通常ユリウス暦7月19日」とよく合います。王朝時代の見え始めは、今の暦で6月下旬から7月中旬の間を時代とともに動いていて、太陽は占星術の蟹宮か、夏至の近くにありました。エジプトで、太陽が獅子宮にあるときにシリウスが見え始めるようになったのは、計算では600年から1000年ごろからで、今から千年あまり前のことです。

日付が動くのは、シリウスが見え始める周期が約365.25日で、季節の1年(約365.24日)より少し長いためです。計算では、後139年から2026年までの1887年で17日遅くなっていて、百十年あまりで1日ずつ遅れていきます。日本大百科全書が、古代エジプトではシリウスが夏至のころに太陽とともに昇る日を年初とした、と書くのは、王朝時代の古い姿にあたります。

今の日本で見え始める日は、緯度で2週間以上ちがう

同じ計算で、2026年の日本の各地の目安を出しました。前提は、平らな地平線と澄んだ空で、シリウスが地平線から昇る瞬間に、太陽が地平線の下7.5度から11度まで沈んでいれば見える、としたものです。明るい星ほど、太陽があまり沈んでいなくても見えるので、角度に幅を持たせています。

  • 那覇(北緯26度)
    7月30日〜8月3日
  • 鹿児島(北緯32度)
    8月4日〜8日
  • 東京(北緯36度)
    8月7日〜11日
  • 札幌(北緯43度)
    8月14日〜19日

東京の目安は8月8日をはさんでいて、ライオンズゲートの日付と重なります。ただ、それは今の東京の緯度での話で、那覇では1週間ほど早く、札幌では1週間以上遅くなります。シリウスは天の赤道より南にある星なので、北の土地ほど、夜明けの空で地平線から離れるのが遅くなるからです(計算から)。

東京で8月9日の朝なら、シリウスは4時9分ごろに東南東の地平線から昇り、そのとき太陽は地平線の下9度あまりにあります(計算)。国立天文台暦計算室の表では、この日の東京の日の出は4時55分です。夏の日本は湿気やもやで地平線の近くが見えにくいので、実際には、この目安より遅れる側に幅があります。国立天文台などが公表している「見え始めの日」の資料は見つからなかったので、ここでの日付は、あくまで計算の目安です。

ライオンの口から水が出る飾りと、ナイルの増水

ライオンとナイルの増水を結びつける話は、古い時代からあります。世界大百科事典の「ライオン」の項は、古代エジプトでは太陽がしし座に入る8月にナイル川の増水が始まるため、泉や水源にライオンの頭をかたどった彫刻を飾り、その風習がギリシアやローマに伝わって、口から水を吐くライオンの飾りが浴場などに使われるようになった、と説明しています。

ただ、同じ事典の「エジプト暦」の項は、増水の始まりを7月下旬としていて、月はそろっていません。ここから分かるのは、夏のナイルの増水とライオンの飾りが結びつけられてきたことまでで、8月8日という日付や、門が開くという考えは出てきません。

今のエジプトでは、ナイルの毎年の氾濫そのものが起きていません。灌漑と発電、洪水調節のためのアスワン・ハイ・ダムが1960年に着工、1970年に完成し、氾濫は止められました。ダムができる前は洪水で自然に淘汰されていた動植物の生態系に変化が出るなど、環境への影響も指摘されています。

8が並ぶ日付、シリウス出身の魂、石の日光浴

もとの記事は、数秘術では8は無限・豊かさ・循環を表し、88はその力が二重に重なる特別な数字だと書いていました。8を横にすると無限大の記号に見える、という説明は、意味の根拠にはなりません。8を縁起のよい数とするのは、日本では下に広がる「末広がり」の形から、中国ではもうけを表す言葉と音が近いことからです(エンジェルナンバー888の記事)。

シリウスを、魂の故郷が地球の外にあるとするスターシードの出身地の一つとする話もありますが、「シリウス系」といった割り当ての出どころは見つかっていません。シトリンやカーネリアンを日光に当てる過ごし方も紹介されていましたが、シトリンは長く強い光に当たると色があせることがあります(パワーストーンの浄化の記事)。

8月の夜明け前に、シリウスを探してみる

もとの記事は、この時期は意図した願いが現実化しやすく、感謝の気持ちを循環させると豊かさを引き寄せる、と書いていましたが、そうした効果を確かめた資料は見つかりませんでした。それよりも、せっかくなら実際に夜明け前の空でシリウスを探してみてはいかがでしょう。

東京なら8月中旬の朝4時台、東南東の低い空が開けた場所で待つと、地平線の近くに白く輝く星が見えることがあります。見え始めのころは、すぐに明るくなる空に溶けてしまいますが、日を追うごとに少しずつ高く、長く見えるようになります(計算から)。古代エジプトの人々が新年の知らせとして待った光を、暦の日付ではなく、自分の目で確かめる楽しみ方です。

夜明け前の暗い時間に外へ出るときは、足元に気をつけ、人通りの少ない場所に一人で行かないようにしてください。夏は早朝でも気温が高い日があるので、飲み物を持って出かけると安心です。

古代エジプトの暦や星座を本で知りたいときは、エジプト学者の近藤二郎さんの『星座の起源 古代エジプト・メソポタミアにたどる星座の歴史』(誠文堂新光社、2021年)があります。目次には「古代エジプトの暦と時」「古代エジプトの星座 南天の星座」「デンデラ神殿の天体図」、古代メソポタミア編の「黄道一二宮の星座」などの章が並んでいます。

よくある質問

Q. ライオンズゲートとは何ですか?

A. 8月8日を中心に宇宙の門が開く、とするスピリチュアルの言葉です。期間や日付の出どころは見つからず、日本の本では2021年の小説の副題が最も古い例でした。

Q. 8月8日にシリウスが昇るのですか?

A. シリウスは毎日昇りますが、日の出前に初めて見える日は緯度で変わります。2026年の計算の目安は、那覇が7月30日〜8月3日、東京が8月7〜11日、札幌が8月14〜19日です。

Q. 古代エジプトと関係がありますか?

A. 古代エジプトでは、シリウスが日の出前に初めて見える日を新年としましたが、それは通常ユリウス暦の7月19日で、王朝時代は今の暦で6月下旬〜7月中旬でした。

Q. 8月8日の太陽は獅子座にありますか?

A. 占星術の区画では獅子宮にありますが、夜空の星座ではかに座にあり、しし座に入るのは8月11日です(2026年の計算)。

Q. ライオンズゲートに願いごとをすると叶いやすいですか?

A. そうした効果を確かめた資料は見つかりませんでした。夜明け前の空でシリウスを探すなど、夏の空を楽しむ機会にしてみてください。

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