甘く、温かみのある木の香り。白檀(サンダルウッド)のお香は、瞑想や気分転換のために焚く人も多い定番の香りです。
ここでは、白檀がどんな木なのかを辞典で確かめ、資源が減っている現状、「栴檀は双葉より芳し」の栴檀の正体、日本で白檀がどう使われてきたかを紹介します。検索で多かった「効果」について研究で分かっていること、コーン型のお香を焚くときの注意もまとめます。
白檀はほかの木の根から養分をもらう木

白檀(ビャクダン)は、ビャクダン科の常緑の木で、高さは3〜10mほどです。百科事典によると、芽を出してしばらくは自分で育ちますが、やがて根から吸盤のような根を出して、ほかの植物の根から養分を取るようになります。葉で光合成もするので、半分だけ寄生する「半寄生」の木です。相手の木は選ばないといいます。ビャクダンの仲間は太平洋地域を中心に約20種あり、小笠原諸島にも近い仲間のムニンビャクダンが育ちます。
原産地は辞典によって書き方が違い、インドネシアのジャワ島東部からティモール島とするもの、インドとするものがあります。良い品の産地として知られるのは、南インドのマイソール(カルナータカ州)の地方です。香りがあるのは幹の中心の心材で、根の材は特に香りが強く、これを蒸留して白檀油をとります。主な香りの成分はサンタロールで、せっけんや化粧品の香りづけにも使われます。
減り続ける白檀
白檀は世界で最も高価な香料の原料の一つです。2016年の論文は、成長の遅いこの木の南インドの自生のものが、取りすぎで脅かされていると書いています。国際自然保護連合のレッドリストでは、2019年の評価で、絶滅の危険が増している「危急」とされています。インド政府は白檀油の輸出を量で制限してきました。2000年の通達では、1年の輸出の上限を22トンとしています。
天然の白檀油は希少で値段が高いため、白檀に似た香りを出す合成の香料の開発が続けられてきました。インド政府の資料にも、安いお香には質の低い白檀の粉と安い香料が使われるとあります。
オーストラリアの白檀は、別の種類の木です。西オーストラリア州では1844年から輸出され、州で最も古い輸出産業の一つです。州の機関が野生の白檀の伐採を年2,500トンまでに管理していて、2024〜25年の割当は1,208トンでした。植林した木は、心材に精油ができるよう少なくとも25年育てます。また、自然に育つ若木が50年以上少ないため、種を地面に埋める小さな有袋類の習性をまねて、毎年500万粒以上の種をまいています。
「栴檀は双葉より芳し」の栴檀は白檀
大成する人は幼いころからすぐれている、というたとえの「栴檀は双葉より芳し」。この栴檀は、日本に自生するセンダン科のセンダンではなく、白檀のことです。「栴檀」は、白檀を指すサンスクリット語の「チャンダナ」を漢字で写したもので、南インドのマラヤ山でとれるものが最上とされ「牛頭栴檀」と呼ばれました。
ただし、百科事典によると、実際には白檀の双葉に香りはなく、仏典の『観仏三昧経』の記述が誤って伝わったものと考えられています。
日本の白檀、法隆寺と正倉院
白檀など木目の細かい木を彫った仏像を「檀像」といいます。木の香りを生かすため、目や唇、髪などのほかは色を塗らないのがふつうです。747年の法隆寺の財産目録に「檀像壱具」とあるのが、言葉の早い例です。法隆寺の九面観音像は白檀でできた高さ37.1cmの像で、719年に唐から持ち込まれたと考えられています。日本では白檀が手に入りにくかったため、カヤやサクラ、ヒノキで檀像に似せた像も作られました。
東京国立博物館の法隆寺献納宝物には、7〜8世紀の「白檀香」(重要文化財、長さ60.3cm)があります。香木は熱帯アジアからの輸入品として大切にされ、法会で焚くほか、箱や刀の柄、経筒、筆の軸にも使われ、香りが虫よけになると信じられていました。正倉院の宝物でも、箱の内張りや仏像の台座に白檀が使われています。
インドでは、白檀は仏教やヒンドゥー教の建物、仏像、火葬の薪に使われ、中国では沈香に次ぐ香木とされました。仏典には、釈迦が亡くなる前に白檀の棺や香木の薪を用意するよう命じたという話もあります。
白檀の香りを調べた研究
もとの記事は、白檀の香りは心を落ち着かせ、深いリラックス状態に導くと書いていましたが、研究の結果はそう単純ではありません。白檀の精油を嗅いだ人では、脈拍や血圧がむしろ上がり、目が覚める方向の変化が出たという実験があります。
2004年の実験では、香りを鼻から吸わないようマスクをつけ、白檀油とその成分のサンタロールを皮膚から吸収させました。サンタロールでは体がしずまる変化が出ましたが、白檀油では、体はしずまる一方で気分は活発になるという、食い違った結果でした。眠りの浅いラットにサンタロールを吸わせると、起きている時間が減ってノンレム睡眠が増えたという研究もありますが、ラットでの結果で、お香で人がよく眠れるという意味ではありません。
合成の白檀の香料が、皮膚の細胞にある、においを感じるのと同じ種類の受容体を働かせ、培養した細胞の傷の修復を早めたという2014年の研究もあります。一方、白檀油は人で刺激やかぶれがときどき報告されています。精油を肌に使うときは気をつけてください。
煙と火の注意
お香の煙は、ほかの室内の発生源と比べて多くの微小粒子(PM2.5)を出します。アメリカで23種類のお香を燃やした実験では、1時間に7〜202mgでした。インドで売られる4種類のお香の煙を調べた2025年の研究では、コーン型のものの推定の発がんリスクが最も高い結果でした。1つの研究での推定で、日本で売られるコーンにそのまま当てはまるとは言えませんが、焚くときは換気をしてください。
コーン型は、燃え進むにつれて底がかなり熱くなります。陶器や金属の皿など燃えにくい器に置き、火がついている間はその場を離れないでください。寝る前に焚くなら、床に就く前に火が消えたことを確かめてください。小さな子ども、ペット、特に煙に弱い鳥のいる部屋では焚かないようにしましょう。
白檀のお香を楽しむなら
白檀は、千年以上前から仏像や法会の香として大切にされてきた香りです。いまは資源が減り、香料で香りをつけた品もあります。空間を「浄化」する効果や、必ず心が落ち着く効果を確かめた研究はありませんが、好きな香りとして、換気と火の始末に気をつけて楽しんでください。
よくある質問
Q. 白檀(サンダルウッド)のお香にはどんな効果がありますか?
A. 精油を嗅ぐと脈拍や血圧が上がったという実験もあり、心を落ち着かせると言い切れる研究はありません。好きな香りとして楽しむのがよいでしょう。
Q. サンダルウッドのスピリチュアルな意味は?
A. インドや中国、日本で、白檀は仏像や法会の香に使われてきました。浄化の効果を確かめた研究はありません。
Q. 「栴檀は双葉より芳し」の栴檀は何の木ですか?
A. 白檀のことです。ただし実際には白檀の双葉に香りはなく、仏典の記述が誤って伝わったものとされます。
Q. 天然の白檀のお香は手に入りますか?
A. 天然の白檀油は希少で高価で、白檀の香りのお香には合成の香料で香りをつけたものもあります。
Q. コーン型とスティック型は何が違いますか?
A. 燃え方や煙の量を比べた公的な資料は見つかりませんでした。コーン型は底が熱くなるので、燃えにくい器に置いてください。
Q. 寝室で焚いても大丈夫ですか?
A. 煙は微小粒子を出すので換気をし、火が消えたことを確かめてから眠ってください。


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