連絡先をまとめて消したくなる。交流サイトのつながりを全部切りたくなる。人間関係をリセットしたい気持ちが強くなると、それが人生の転機のしるしのように感じられることもあるでしょう。
ここでは、「人間関係リセット症候群」という言葉の出どころを確かめ、関係が離れたり戻ったりすることを調べた研究、孤立と健康の関係、交流サイトで相手を外すことの研究を紹介します。関係を切る前に考えたいことと、相談先もまとめます。
「人間関係リセット症候群」は病名ではない

「人間関係リセット症候群」は、辞典にも、論文のデータベースにも見当たらない言い方です。国立国会図書館で書名にこの言葉を含む本は、2024年の一般向けの本(ゆうきゆう著、内外出版社)が最も古いものでした。医学の病名ではなく、そうした気持ちや行動を指す言葉として広まったものと考えられます。
もとの記事は、縁は「ソウルコントラクト(魂の契約)」で結ばれ、契約が満了すると離れる、と説明していましたが、出どころは見つかりませんでした。似た言い方の本として、アメリカの作家キャロライン・メイスの本の日本語版『第8のチャクラ 聖なる契りが宿る場所』(2005年)がありますが、記事の考えとの関係は確かめられませんでした。「波動がずれる」「エナジーバンパイア」といった説明にも、測る方法や学術的な定義はありません。
疎遠になった関係の多くは、後に戻っている
アメリカの全国調査をもとにした2023年の研究では、母親と疎遠になった時期がある人は6%、父親とは26%で、初めて疎遠になった年齢は平均で母親とは26歳、父親とは23歳でした。ところが、その多くは後の調査では疎遠でなくなっていて、母親と疎遠だった人の81%、父親と疎遠だった人の69%が、年に数回以上は会うか話すようになっていました。
高齢の母親と大人の子の2,013組を調べた研究では、疎遠を予測したのは犯罪のような重い出来事ではなく、価値観の違いでした。母親を7年あけて2回調べた研究でも、疎遠な関係は急に生まれるより、連絡や親しさが少しずつ変わる中で、入ったり出たりしていました。
アメリカのコーネル大学の研究プロジェクトによると、アメリカ人の27%が近い親族のだれかと疎遠になっています。疎遠は喪失として受け止められることが多く、悲しみや後悔を伴います。このプロジェクトは、高齢者への聞き取りで、多くの人のいちばんの後悔が家族との疎遠だったことから始まったそうです。研究者は、家族の亀裂を埋める大きな理由の一つが「あとで悔やむだろう」という気持ちだった、と書いています。一方で、虐待やネグレクトがあった関係では、和解がだれにとっても可能で適切とは限らない、ともしています。
孤立は健康にもかかわる
もとの記事は、リセットのあとの孤独な時期を「魂が本来の自分に立ち返る時間」「宇宙からの休暇」としていました。148の研究・約31万人をまとめた2010年の分析では、人とのつながりが強い人は、生きのびる見込みが50%高くなっていました。2015年の分析では、ほかの条件をそろえても、社会的な孤立で29%、孤独で26%、ひとり暮らしで32%、亡くなる見込みが高くなっていました。
世界保健機関は2025年、世界の6人に1人が孤独の影響を受けていて、孤独は1年に87万人を超える死と結びついていると推計しました。1時間に約100人にあたります。同機関は、望むつながりと実際のつながりの差から生まれるつらい気持ちを「孤独」、つながりが客観的に足りないことを「社会的孤立」と分けています。
ただし、自分で選んだ一人の時間は別です。2018年の研究では、一人でいると高ぶった気持ちが静まり、自分で選んで一人になったときは、くつろぎやストレスの低下につながっていました。少し距離を置くことと、望まない孤立に陥ることは、分けて考えるほうがよさそうです。
「一緒にいると疲れる」関係
もとの記事は、疲れる相手を「エナジーバンパイア」と呼んでいました。研究では、支えにもなるけれど、いやな思いもさせる「アンビバレントな」関係が調べられています。107人が友人と一緒に参加した実験では、そうした友人の前で悪い出来事を話すと、支えになる友人のときより血圧の上がり方が大きくなりました。相手をエネルギーで説明するより、その関係のどこが支えで、どこがつらいのかを考えるほうが、距離の取り方を決める手がかりになります。
交流サイトで相手を外す・ブロックする
今の人間関係のリセットは、交流サイトのつながりを外す形で起きることも多いでしょう。研究ではこんなことが分かっています。
- アメリカで交流サイトを使う824人のうち31.7%が、新型コロナの最初の1年に、コロナに関する投稿を理由にだれかを友達から外していた
- 政治的な発言を見て外したくなっても、相手が身近で気持ちの支えになる人だと、外す見込みは低かった
- 支持政党が反対のアカウントは、同じ支持のアカウントより12倍ブロックされやすかった
- 外された側は、外される前に関係が難しくなっていることを話し合っていた場合のほうが、つらさが小さかった
いきなりすべてを切るより、外す前に一言伝えるか、少しずつ距離を置くほうが、相手にも自分にも負担が少ないのかもしれません。
転機は、習慣を見直しやすい時期
もとの記事は、引っ越しや転職などで関係が変わることを、魂が次のステージに進むしるしとしていました。研究では、こうした節目は、むしろ生活の習慣を見直しやすい時期だと分かっています。新しい週や月、年、誕生日のあとには、ダイエットの検索やジム通い、目標の宣言が増えていました(フレッシュスタート効果)。引っ越したばかりの人には生活を変える働きかけがよく効き、その効きやすい時期は引っ越しから3か月ほどでした。
関係を切る前に考えたいこと
暴力や支配がある関係なら、離れることが自分を守ることになります。交際相手からの暴力は、DV相談+(0120-279-889)に相談してください。そうでない関係なら、すべてを一度に切る前に、会う回数を減らす、連絡を控えるといった方法もあります。疎遠になった関係も、後で戻ることが多いと分かっています。
人と関わること自体がつらい、何もかも投げ出したい気持ちが続くときは、内閣府の「あなたはひとりじゃない」や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)に相談してください。
よくある質問
Q. 人間関係リセット症候群とは何ですか?
A. 辞典にも論文にもない言い方で、病名ではありません。書名としては2024年の一般向けの本が最も古いものでした。
Q. 人間関係をリセットしたくなるのはスピリチュアルなサインですか?
A. そう確かめた資料はありません。疎遠になるのは価値観の違いや連絡の少しずつの変化で起きることが多い、という研究があります。
Q. 縁を切った人とは、もう戻れませんか?
A. アメリカの調査では、親と疎遠になった人の多く(母親で81%、父親で69%)が、後に疎遠でなくなっていました。
Q. 一人になるのは悪いことですか?
A. 自分で選んだ一人の時間は、気持ちを静める助けになります。ただ、望まない孤立や孤独が続くことは、健康にもかかわると分かっています。
Q. 交流サイトのつながりを全部切りたいです。
A. 外される前に関係が難しいことを話し合っていた人のほうが、つらさが小さかったという研究があります。少しずつ距離を置く方法もあります。
Q. 何もかも嫌になって、人と会いたくありません。
A. 気持ちのつらさが続くときは、「あなたはひとりじゃない」やこころの健康相談統一ダイヤルに相談してください。


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