願いをノートに書くと叶いやすくなる、という「引き寄せノート」。始めてみようと思っても、何をどんな順番で書けばよいのか、実際に書いた見本を見てみたい、と迷う人は多いでしょう。
ここでは、引き寄せノートの本がいつごろから出てきたのかを国立国会図書館の目録で確かめ、本によって違う書き方の型を整理します。そのうえで、書くことについての心理学の研究をもとにした1ページの見本を示し、寝る前に書くときのこつ、紙とスマホのどちらがよいか、369の方法や「目標を書いた3%」の話の出どころを紹介します。
引き寄せノートの本は、いつから出てきたか

国立国会図書館の目録で、書名に「引き寄せ」と「ノート」が入る本を探すと、最も早いのは2008年の『すべての望みを叶える!引き寄せの法則・実現ノート』(春秋社)でした。引き寄せの法則を広めた『ザ・シークレット』の日本語版が出た翌年です。同じ2008年には、願いを叶った形で書く「完了形」の手帳術の本も出ています。
書名に「引き寄せノート」そのものが入る本は、2012年の『夢を叶える!引き寄せノート術』や『ほしいものが次々と手に入る「引き寄せノート」のつくり方』(大和出版)から始まり、7冊のうち4冊が2017〜2019年に集中していました。ノートで夢をかなえるという本そのものは、引き寄せという言葉が広まる前の2004年ごろからあります。
書き方は、大きく分けて3つある
本によって勧める書き方はさまざまですが、大きく分けると次の3つになります。
- 叶った形で書く(完了形)
「〇〇になりたい」ではなく「私は〇〇になった」と、すでに叶ったように書く方法です。もとの記事が基本の型として勧めていた書き方です。 - 引き寄せ「た」ことを書く
これから欲しいものではなく、すでに起きたこと、できたことを書く方法です。もとの記事が最後に紹介していた本は、この考え方を物語の形で描いた本です。 - エイブラハムの「22の実践」
引き寄せの法則で知られるヒックス夫妻の本の日本語訳(2016年)には、「プラス面を記すノート」「シナリオを書く」「仕事のリスト」、思考を“車輪”に書き込む方法など、書く作業がいくつも含まれています。
もとの記事は、叶った形で書く理由を、潜在意識は現実と想像を区別しにくいから、感情の振動数が現実を引き寄せるから、と説明していました。けれども心理学の研究では、願いが叶ったところを楽しく思い描くだけだと、かえって努力や成果が下がることが知られています(くわしくは感情の先取りの記事にまとめています)。叶った形で書くこと自体を楽しむのはかまいませんが、それだけで終わらせず、次の見本のように「できたこと」と「次にやること」を一緒に書くほうが、研究と合っています。
研究に沿った1ページの見本
書くことについての研究をもとに、1日1ページの見本を作りました。全部の欄を毎日埋める必要はありません。
見本:10月23日(木)のページ
- ① 引き寄せたこと(今日できたこと・起きたこと)を3つ。例:企画書を半分まで書けた/久しぶりに友人から誘われた/いつもより早く寝られた
- ② ありがたかったこと(週に1回でよい)。例:同僚が資料を探すのを手伝ってくれた
- ③ 願いを1つと、叶ったときのいちばんよい結果。例:来年の春までに資格試験に受かり、希望の部署に移る
- ④ じゃまになりそうな自分の側のこと と、「もし〜になったら、〜する」。例:疲れて帰ると勉強しない → もし疲れていたら、問題を5問だけ解く
- ⑤ 明日やること(具体的に。夜に書くなら最後はここ)。例:朝、電車で単語を20個/昼休みに申込書を印刷する
- ⑥ 気がかり(書きたい日だけ。同じことを何日か続けて書いてもよい)
- 月に1回:努力を重ねた末の、最高の未来の自分を20分ほど書く
①は、引き寄せ「た」ことを書く本の考え方と、目標の進み具合を記録すると達成しやすくなる研究に沿っています。②は感謝を書く研究、③と④は、願いと障害と計画を組にして考える方法(実行意図)の研究、⑤と⑥は、次の節で紹介する研究にもとづいています。どの研究も、測ったのは気分や健康、目標の進み具合で、書いたことが引き寄せられるかどうかを確かめたものではありません。
書くことについて、研究で分かっていること
最高の未来の自分を書く方法は、大学生81人を、つらかった出来事、最高の未来の自分、その両方、感情と関係のない話題のどれかに分け、1日20分ずつ4日間書いてもらった2001年の研究から広まりました。最高の自分を書いた人は、つらい出来事を書いた人ほど動揺せず、3週間後の幸福感が上がり、5か月後には、感情に関係のない話題を書いた人より病気で保健センターにかかる回数が少なくなっていました。29の研究(2,909人)をまとめた2019年の分析でも、幸福感や楽観性、前向きな気分が少しずつ高まっていました。この研究で書くのは、努力を重ねた末の未来の自分です。
感謝したことを毎週、または毎日書いてもらった3つの研究をまとめた2003年の報告では、感謝を書いた人は、面倒だったことや中立の出来事を書いた人より、いくつかの指標で幸福感が高く、最もはっきりしていたのは前向きな気分でした。つらい気持ちを書き出す方法は「筆記開示」と呼ばれ、大学生55人が3回書いた日本の研究では、同じつらい体験をくり返し書いた人だけに、体の症状や抑うつの改善が見られました。効果は全体として小さいことも分かっています。
やり残した目標は、関係のないことをしているときにも頭に浮かび、ほかの作業の成績を下げます。2011年の研究では、その目標について具体的な計画を立てさせると、こうした影響が消えました。ただし同じ研究者の続きの研究では、途中でやり方を切り替える必要がある場面で、具体的な計画がかえって成績を下げていました。願いを書くなら、気になっていることを「いつ、何をするか」まで書き出しつつ、うまくいかなければ計画を書き直す、くらいの気持ちでいるとよいでしょう。
寝る前に書くなら、最後は「明日やること」
もとの記事は、朝起きたときと夜眠る前は脳がリラックスしていて潜在意識にアクセスしやすい、と書いていましたが、出典は見つかりませんでした。寝る前に書くことについては、18〜30歳の57人が、睡眠の実験室で寝る前の5分間に、これから数日でやることのリストか、ここ数日で終えたことのリストを書いた研究(2018年)があります。やることを書いた人のほうが早く寝つき、具体的に書いた人ほど早く寝つきました。夜に書くなら、引き寄せたことを書いたあと、最後に明日やることを具体的に書いて閉じるとよいでしょう(57人の1つの研究です)。
紙とスマホ、どちらがいい?
手で書いたほうが頭に残る、とよく言われます。2014年の研究は、講義のメモをパソコンで取った学生は、手書きの学生より考えを問う問題の成績が低かったと報告しました。けれども、同じ実験をくり返した2021年の追試(パソコン74人・手書き68人)では、手書きの有利は出ませんでした。
日本では、大学生48人が紙の手帳、タブレット、スマートフォンのどれかで予定を書き込み、1時間後に思い出す実験で、紙の手帳の人のほうが記入が速く、思い出すときの脳の活動も高かった、という研究があります。ただ、正答率全体には差がなく、どの道具を使うかはふだん使っているもので分けていて、企業の研究費による研究でした(著者に企業の社員が含まれています)。紙でもスマホでも、続けやすいほうでかまいません。
「目標を書いた3%」と369の方法
「目標を紙に書いていた3%の卒業生が、残りの97%より成功していた」という大学の調査の話はよく引用されますが、そのような調査は見つからず、作り話とされています。代わりによく紹介されるのが、アメリカのドミニカン大学の心理学者ゲイル・マシューズの研究です。最後まで参加した149人を5つの群に分けたもので、ここでの「書く」は、紙ではなくオンラインの画面に入力することでした。4週間後の達成度は本人の評価で、平均は、目標を考えるだけの群が4.28、書いただけの群が6.08、書いて行動も決めた群が5.08、それを友人に送った群が6.41、毎週の進み具合も友人に送った群が7.6でした。差が大きかったのは、人に報告し続けた群です。論文の形では出ておらず、学会発表などの資料として扱われています。
3回・6回・9回と回数を決めて書く「369」の方法は、発明家ニコラ・テスラの「3、6、9のすばらしさを知れば宇宙の鍵を得る」という言葉にもとづく、と紹介されます。けれども、事実を確かめるアメリカのサイトは、この言葉をテスラのものとする確かな出典はないとしていて、方法そのものは2020年の終わりから2021年のはじめに、動画の交流サイトなどで広まったものでした。55回を5日間書く「55×5」の方法も、誰が始めたのかは確かめられませんでした。
気持ちの落ち込みが続く、眠れない、食欲がないといったときは、ノートで何とかしようとせず、医療機関や相談窓口に相談してください。
もとの記事が紹介していた『引き寄せたノート 信じるよりも、書きなさい!』(2019年)は、幸運の女神が、仕事がうまくいかない会社員を導く物語の形で、引き寄せたいことではなく、引き寄せたことを書くよう勧める本です。
よくある質問
Q. 引き寄せノートには何を書けばいいですか?
A. 決まった書き方はありません。見本のように、今日できたこと、ありがたかったこと、願いと障害と計画、明日やることを書くと、書くことについての研究に沿った形になります。
Q. 願いは叶った形(完了形)で書いたほうがいいですか?
A. そう勧める本もありますが、叶ったところを思い描くだけだと努力が減るという研究があります。叶った形で書くなら、次にやることも一緒に書いてください。
Q. 毎日書かないといけませんか?
A. 決まった頻度はありません。感謝を書く研究でも、毎週書く方法と毎日書く方法が使われています。続けやすい頻度でかまいません。
Q. ノートは紙とスマホのどちらがいいですか?
A. 手書きが有利だという研究は、追試で再現されませんでした。続けやすいほうで大丈夫です。
Q. 369の方法はテスラが考えたのですか?
A. テスラの言葉とされるものに確かな出典はなく、方法は2020年ごろから交流サイトで広まったものです。


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