引き寄せの法則を試してもうまくいかない。その理由は「自分に許可を出していないから」だ、という説明を見かけることがあります。幸せになっていい、受け取っていい、と自分に許すことが大切だ、という考えです。
ここでは、この「許可」という言葉がどこから来たのかを本で確かめ、自分に優しくすることについての研究、「ご褒美」を自分に許すとどうなるかの研究を紹介します。もとの記事が勧めていた、鏡の前で唱える方法の注意もまとめます。
「許可」のもとになった言葉

引き寄せの法則を広めた本の一つ、ヒックス夫妻の『引き寄せの法則』(2006年)は、引き寄せの法則、意図的な創造の方法と並んで、英語で「許すこと(アローイング)の術」を宇宙の法則として説明しています。日本語訳では、2007年の吉田利子訳でこの部分が「許容し可能にする術」、2022年の本田健訳では「ありのまま受け入れること」と訳されていて、どちらも「許可」ではありません。2007年の訳書は、エイブラハム体験への道、引き寄せの法則、意図的な創造の方法論、許容し可能にする術、節目ごとの意図確認、の5部でできています。
国立国会図書館で、書名に「許可」と「引き寄せ」の両方が入る本を探すと、見つかったのは2019年以降のもので、受け取りの「許可」が低い人のための練習帖(2019年)や、お金を引き寄せる「設定」と「許可」の法則をうたう本(2025年)などがあります。なお、引き寄せの法則という考え自体は19世紀のアメリカの思想から来たもので、科学的な裏づけはないとされています。
「ふさわしくない」と感じる人ほど、唱える言葉に注意
もとの記事は、「自分にはふさわしくない」という声が心に残っている人に、鏡の前で「私は〇〇にふさわしい」「私は豊かさを受け取ってよい」と声に出して言うよう勧めていました。けれども、自分への評価が低い人が前向きな言葉をくり返すと、くり返さなかった人よりかえって気分が沈んだ、という2009年の実験があります。2020年の2つの追試ではそうした差は出ませんでしたが、唱えることで気持ちが楽になるとも確かめられていません。違和感があるなら、無理に唱えなくてかまいません。
鏡に映る自分を見ながら前向きな言葉をくり返す方法は、アメリカの作家ルイーズ・ヘイが「ミラーワーク」として広めたもので、2016年の本にまとめられ、同じ年に日本語版も出ています。もとの記事は、この出どころを書いていませんでした。
自分に優しくすると、かえって改善しようとする
「自分に許可を出す」を、失敗や弱さを責めすぎずに受け止めること、と考えるなら、研究の裏づけがあります。2012年の4つの実験では、失敗や弱点を思い出したあと自分に思いやりを向けた人は、自分をほめて気分を上げた人などに比べて、弱点は変えられると考え、失敗を埋め合わせようとする気持ちが強くなりました。難しいテストに一度失敗したあと、次のテストに向けて長く勉強した人も多かったのです。研究者は、失敗を受け入れる態度が、かえって自分をよくしようとする気持ちを高めうる、と結論しています。
大学生739人を比べた2026年の実験では、自分に優しい言葉をかけるより、自分のために優しい行動をとったほうが、自分への思いやりの気持ちが高まりました。疲れたら休む、好きなものを食べる、といった具体的な行動のほうが、言葉だけより効くのかもしれません。
「ご褒美」を許すと、甘くなることも
一方、もとの記事は、収入を上げたいなら今日のランチを少しだけ贅沢にして自分に許可を出そう、と勧めていました。女子学生を対象にした2019年の3つの研究では、食べてよい理由を与えられた人は、そうでない人よりお菓子を多く食べ、持ち帰りの場面ではカロリーの高いお菓子を選びました(3つの研究で85人、95人、110人)。
よいことをしたあとに自分に甘くなる「モラル・ライセンシング」という現象もあり、91の研究をまとめた2015年の分析では、効果は小さいながら見られました。ただ、115の実験・2万1千人あまりをまとめた2026年の分析では、出版の偏りを補正すると、人に見られていない場面ではほぼ効果がなく、人に見られている場面でだけはっきりしていました。自分にご褒美を許すことが、願いを叶える力になるという研究は見つかりませんでした。
「これは本当に事実か」と問う方法
もとの記事は、「自分にはふさわしくない」と感じたら「これは本当に事実か」と問い直すよう勧めていました。これは、1970年代にアメリカのベックがうつ病の治療のために作った認知療法の方法に似ています。
厚生労働省の認知療法のマニュアルでは、ふと浮かぶ考えについて、それを裏づける事実(根拠)と、それに合わない事実(反証)を両方書き出して確かめます。「この考えは100%正しいか」「自分の力ではどうにもならないことで自分を責めていないか」と問いかけ、考えに偏りがなければ、考えを直すのではなく問題の解決に進みます。もとの記事は「多くの場合、思い込みだと気づける」と答えを先に決めていましたが、もとの方法は、事実を両方から見て判断するものです。
空想より、行動の計画を
もとの記事は、引き寄せの研究者の共通した見解として、許可を出すと引き寄せが加速すると書いていましたが、出典は見つかりませんでした。研究では、叶った姿を前向きに空想するほど、その後の努力や成果がむしろ少なかったという結果があり、「いつ、どこで、何をするか」まで決めておくほうが行動に移しやすいことが分かっています。
自分に許すことと、うまくつきあう
自分を責めすぎず、失敗しても受け止める。休みたいときに休む。そうした意味で自分に優しくすることは、研究でも前向きな行動につながると分かっています。ただし、無理に言葉を唱えたり、ご褒美を許したりすることが願いを叶えるわけではありません。「どうせ無理」という気持ちが強く、つらさが続くときは、働く人の相談窓口「こころの耳」(0120-565-455)などに相談してください。
例として、丸井章夫さんの『書くだけで願いが叶う!「引き寄せノート」のつくり方』(宝島社、2017年)の販売ページです。目次を確かめられなかったため、「許可」の話が載っているかは分かりません。
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よくある質問
Q. 引き寄せで「許可する」とはどういう意味ですか?
A. もとはヒックス夫妻の本の「許すこと(アローイング)の術」で、日本語訳では「許容し可能にする術」「ありのまま受け入れること」とされています。
Q. 鏡の前で「私はふさわしい」と唱えると効果がありますか?
A. 2009年の実験では、自分への評価が低い人がくり返すと気分が沈みましたが、2020年の2つの追試では差が出ませんでした。効果は確かめられていないので、違和感があるなら無理に唱えないでください。
Q. 自分に優しくすると、甘えになりませんか?
A. 失敗のあと自分に思いやりを向けた人は、かえって改善しようとする気持ちが強くなったという実験があります。
Q. 自分にご褒美を許すと、願いが叶いやすくなりますか?
A. そう確かめた研究はありません。食べてよい理由を与えられた人がお菓子を多く食べたという研究はあります。
Q. 「これは本当に事実か」と問うのは効果がありますか?
A. 認知療法の方法に似ていますが、もとの方法は、考えを裏づける事実と合わない事実を両方書き出して確かめるものです。
Q. 引き寄せがうまくいかないのは、自分への許可が足りないからですか?
A. そう確かめた資料はありません。空想より、何をいつするかを決めるほうが行動に移しやすいことが分かっています。



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