手を合わせたとき、手のひらがじんじんする。両手を近づけると、あいだに何かがあるような、押し返されるような感じがする。スピリチュアルの解説では、こうした感覚を、手から出るエネルギーや、手のひらにあるチャクラのしるしと説明することがあります。
ここでは、まず手のしびれで病気を疑う目安を、日本整形外科学会などの説明で確かめます。そのうえで、手を近づけて相手の「エネルギー」を感じ取れるかを調べた試験、何もしなくても手に起きる感覚の研究、手が温かくなる血管の仕組み、「手当て」という言葉の辞典の意味、レイキについての公的機関の説明を順に見ていきます。
先に確かめたい、しびれの場所

もとの記事は、じんじん・ぴりぴりとしたしびれのような感覚を、気やプラーナを手で感じ取っている状態とし、よくある質問では、手のひらのチャクラが活性化しているサインと書いていました。けれども、手のしびれは、神経が圧迫される病気や、首の骨、脳の病気でも起こります。
日本整形外科学会は、腕や手のしびれは、しびれ方、続く時間、しびれる場所と範囲などから、ある程度見当がつくとしたうえで、一時的なもの以外は放置せずに整形外科で相談するよう勧めています。しびれる場所ごとの目安は、次のとおりです。
- 親指から薬指の親指側半分(手のひら側)
手首のところで神経が圧迫される手根管症候群が最も疑われます。初めのうちや軽いときは、人さし指と中指だけがしびれることもあります。 - 小指と、薬指の小指側半分
肘の内側で神経が圧迫される肘部管症候群が最も疑われます。肘の内側を軽くたたくと、小指にしびれが響きます。 - 親指から中指の手の甲側で、手首が反らしにくい
橈骨神経という神経の麻痺(橈骨神経麻痺)が最も疑われます。 - 両手、または手の甲から腕にかけて
首の骨(頸椎)の病気や、胸郭出口症候群などが疑われます。 - 両手と両足
頸椎の病気や、神経内科が専門とする手足の神経の病気が考えられます。 - 片側の手足、または腕と口のまわり
脳腫瘍や脳の血管の病気など、頭の中の病気を考える、と学会は書いています。
朝起きたときに、体の下になっていた手がしびれ、すぐに治るのは、一時的に血の巡りが悪くなったためで、正座のあとと同じく心配はいらない、とされます。ただし手根管症候群は、明け方にしびれや痛みが強くなり、手を振ったり指を曲げ伸ばししたりすると楽になるのが特徴です。毎朝のようにしびれるときは区別が必要です。
手根管症候群かどうかの目安として、学会は、両手首を直角に曲げて手の甲どうしを合わせ、そのまま1分間保つ方法を紹介しています。いつものしびれが強くなれば、手根管症候群の可能性が高まります。原因がはっきりしないものが多く、妊娠・出産の時期や更年期の女性に多いとされ、けが、手の使いすぎ、透析でも起こります。進むと親指の付け根の膨らみがやせて、親指と人さし指できれいな丸が作れなくなり、細かい物をつまみにくくなります。
糖尿病の神経障害は、糖尿病情報センターによると、両側の足の先から、しびれや痛み、冷えた感じが始まります。手だけのしびれを糖尿病のせいと決めつけず、糖尿病があってしびれが出てきたときは、主治医に伝えてください。
顔の片側がゆがむ、片方の手に力が入らない、ろれつが回らないといった症状が突然出たら、脳卒中のおそれがあります。すぐに救急車を呼んでください。片側の手足や、口のまわりまでしびれるときも、頭の中の病気のことがあります。救急車を呼ぶか迷うときは、救急安心センター(♯7119)で医師や看護師などに相談できます(実施していない地域や、別の番号の地域もあります)。しびれが続くとき、繰り返すときは、整形外科で相談してください。
深い呼吸を続けると、手はしびれる
もとの記事は、深呼吸を3〜5回してから手のひらに意識を向ける「手のひら瞑想」を勧め、深呼吸のあとはエネルギーの感覚が鋭くなる、と書いていました。けれども、大きな呼吸を続けると、それだけで手がしびれることがあります。
家庭医学館によると、ストレスなどをきっかけに大きな呼吸が続くと、血液中の二酸化炭素が肺から出すぎて少なくなります。すると手指の血流が減って手がしびれ、ひどいときには全身がけいれんすることもあります。これが過換気(過呼吸)で、手のしびれなどを感じたら、それ以上大きな呼吸をしないように自分で呼吸を整えることが、発作の予防になるとされます。
深呼吸を数回するくらいで心配することはありません。ただ、何度も大きく吸ったり吐いたりしているうちに手がしびれてきたら、それはエネルギーの高まりではなく、呼吸のしすぎのしるしかもしれません。ふつうの呼吸に戻して、落ち着くのを待ってください。紙袋を口に当てて呼吸する方法は、かえって不安を強めることがあり、長く続けると酸素が足りなくなるとも注意されています。息苦しさや胸の痛みが続くときは、ほかの病気のこともあるので受診してください。
手を近づけて、相手の手が分かるかを調べた試験
両手のひらを向かい合わせて、近づけたり離したりすると、圧力や温かさを感じる。もとの記事は、これを自分のエネルギーフィールド(オーラ)を感じている状態だと書いていました。手で人のまわりの「エネルギー」を感じ取れるのかを確かめようとした試験が、1998年に米国医師会雑誌に載っています。
対象は、セラピューティック・タッチという看護の療法の施術者です。体のまわりにあるとされるエネルギーの場を、手で感じ取って整えるという療法で、手を体から少し離して行う形が中心です。1970年代の初めに、ニューヨーク大学看護学部のドロレス・クリーガーが考え、米国神智学協会の会長を務めたドーラ・クンツが初期の研究に加わったとされます。
試験では、施術者がついたての向こうから、両手を手のひらを上にして差し出しました。調べる側は、硬貨を投げて右手か左手かを決め、その手の少し上に、手のひらを下にして自分の手をかざします。施術者は、相手の手が自分のどちらの手の上にあるかを答えます。施術の経験が1〜27年の21人が、14人は10回ずつ、7人は20回ずつ、合わせて280回答えました。
正しく答えられたのは、280回のうち123回、44%でした。でたらめに答えても50%になる試験なので、相手の手を感じ取れたとは言えない結果です。経験年数の長い人ほどよく当たる、という傾向もありませんでした(この正答率は、オーラが見える人の記事でも紹介しています)。
この試験は、エミリー・ローザという少女の、9歳のときの小学4年生の科学フェアの課題でした。論文の筆頭著者は看護師の母で、継父と医師も名を連ねています。母と継父はこの療法に反対する活動をしていた人たちで、療法を批判する側の試験だったことは知っておいてよいでしょう。施術者への説明の仕方や、方法と分析には批判も出ましたが、1回目は本当に科学フェアの課題で、論文にする予定はなかった、という反論もあります。エミリーは、科学や医学の雑誌に研究が載った最年少の人として、ギネス世界記録に載っています。
手が近くにあると分かるのは、体の熱
では、両手を近づけたときに感じる温かさは、気のせいなのでしょうか。そうとも言えません。1999年に発表された別の実験では、手が近くにあることは偶然より高い割合で当てられ、熱を遮る材料をあいだにはさむと、当たる割合が偶然の水準まで下がった、と英語版ウィキペディアは紹介しています。手がかりは、体から出る熱だろうと考えられています。原論文は読めず、人数や距離は確かめられませんでした。
手のひらは体温に近い温かさを持っていて、すぐそばまで近づければ、その熱を肌で感じることがあります。両手のひらを向かい合わせて温かく感じるのも、もう一方の手の熱を感じている、と考えれば説明がつきます。感じたこと自体はうそではありません。その正体が、エネルギーの場ではなく、体の熱だということです。
何もしなくても、手はピリピリする
手に何も触れていないのに、チクチク、ムズムズ、ピリピリした感じが起こることがあります。フランスの研究者たちは、刺激がないのに起こるこうした感覚を「自発的な感覚」と呼んで調べてきました。
2011年の研究では、片方の手に注意を向け、その手を見ているときと、目をそらしているときに、自然に起きた感覚の場所と感じ方を描いてもらいました。感覚は指先に向かうほど多く、皮膚で刺激を受け取る仕組みの密度の分布とよく似ていました。注意の向け方によって、感覚は強まったり、弱まったりしました。
2015年の研究では、50〜68歳の24人と、19〜27歳の24人に、10秒ずつ片手の感覚を答えてもらいました。年上の人は手のひらに、若い人は指に、多く感覚を覚えていました。注意による変化は若い女性で目立ち、男性ではあまり見られませんでした。別の研究では、自分の心臓の拍動を正確に感じ取れる人ほど、こうした感覚を多く、強く感じていました。
手のひら瞑想で、手のひらに意識を集めると何かを感じ始めるのは、特別な力のしるしというより、注意を向けた場所の感覚が浮かび上がるという、体の働きで説明できます。反対に、何も感じないからといって、感受性が低いわけでもありません。感じ方に年齢や性別による違いがあった、という研究もあります。
手が温かくなるのは、手のひらの血管の働き
手のひらと足の裏の、毛の生えていない皮膚には、細い動脈と細い静脈を直接つなぐ血管(動静脈吻合)がたくさんあります。2016年の総説によると、この血管には交感神経が密に通っていて、開くと血液がそのまま皮膚の静脈に流れ込み、手足の皮膚を温めます。体温を調節する脳の中枢から、すべての吻合へ同時に信号が送られ、まわりが涼しいときには閉じて、暑くなると開きます。
緊張がほどけたときや、手を当てて落ち着いたときに手が温かくなりやすいのは、この仕組みで説明がつきます。リラックスすると指先の皮膚の温度が上がることや、自律訓練法の研究は、体が熱くなるときの記事でまとめています。
「掌チャクラ」と「手当て」という言葉
もとの記事は、手のひらにも小さなチャクラ(掌チャクラ)があると言われる、と書いていました。チャクラの説明でよく引かれる16世紀のインドの書の英訳(1924年版)を、文字を読み取った全文で探すと、手のひらが出てくるのは神仏の手の形(印)の説明くらいで、手のひらのチャクラは出てきませんでした。この書は、体の中心線に沿ってチャクラを並べています。「掌チャクラ」という言い方がいつ、どこから広まったのかは、確かめられませんでした。
「手当て」という言葉も、手を当てて治したことから来た、と説明されることがあります。けれども日本国語大辞典では、「手当」の最初の意味は、あらかじめその用に備えること、つまり準備で、例は1563年の『玉塵抄』です。けがや病気の処置という意味は8番目に挙げられ、例は江戸時代後期の人情本(1834〜48年ごろ)です。現代の国語辞典でも、準備の意味が先に来ます。
辞典に載る例は、その言葉が見つかった古い用例で、言葉が生まれた時期そのものではありません。それでも、どちらの辞典にも、手を当てることから来た、という語源の説明はなく、この話を辞典で裏づけることはできませんでした。
もとの記事が手から感じるものとして挙げていた「気」は、もとは人の息や風、湯気などを指す、中国の思想の言葉です(辞典の意味はエネルギーが強い人の記事で紹介しています)。
レイキや手をかざす療法について、公的機関の説明
もとの記事は、気功や整体、レイキなどでは、手はエネルギーの送受信に優れた部位とされる、と書いていました。アメリカの国立補完統合衛生センターは、レイキを、施術者が手を軽く当てるか、体のすぐ上にかざして行う補完療法と説明したうえで、次のようにまとめています。日本語訳は、厚生労働省の「統合医療」情報発信サイトで読めます。
- どの健康上の目的についても、有効性ははっきりとは示されていない
- 痛みや不安、抑うつなどで研究はあるが、質の高いものがほとんどなく、結果も一定しない
- レイキで働くとされるエネルギーの場が存在するという、科学的な根拠はない
- 害は示されておらず、一般には安全と考えられている
手を当ててもらうと落ち着く、温かく感じる、という感じ方を否定する必要はありません。ただ、病気を治す方法として頼り、医療機関にかかるのを遅らせることはしないでください。
もとの記事のセルフケアを、確かめたことから見直す
- 手のひら瞑想
手のひらに注意を向けると感覚が浮かび上がるのは、研究で分かっている体の働きです。深い呼吸は数回にとどめ、手がしびれてきたらふつうの呼吸に戻してください。 - 両手を近づけて感じる圧力や温かさ
1998年の試験では、相手の手の位置を当てられませんでした。温かさは、体から出る熱で説明がつきます。 - 気になるところに手を当てる
落ち着くための習慣としては差し支えありませんが、痛みや不調が続くときは、手を当てて様子を見るより先に受診してください。 - 手洗いを気分の切り替えにする
外から帰ったら手を洗い、そのひと手間を気持ちを切り替える合図にするのは、ふだんの習慣としてよいものです。水に浄化の力があるという説明は、言い伝えとして受け取ってください。 - 木や土に手のひらで触れる
素足や手で大地に触れるアーシングは、効果を確かめた研究を系統的にまとめたものが見つかっていません。傷のある手で土に触れたあとは、よく洗ってください。
手や皮膚の感覚が、そもそもどういう仕組みで生まれるのかを読みたいときは、デイヴィッド・リンデンさんの『触れることの科学』(岩坂彰 訳、河出書房新社、2016年。河出文庫にも入っています)があります。触覚と皮膚の感覚の科学を、実験の場面やエピソードとともに紹介する本です。
よくある質問
Q. 手を近づけるとピリピリしたり温かくなったりするのは、エネルギーですか?
A. 1998年の試験では、経験のある施術者21人が、相手の手が左右どちらの上にあるかを280回のうち44%しか当てられず、偶然の50%と変わりませんでした。温かさは体から出る熱で、ピリピリは何もしなくても手に起きる感覚で説明がつきます。
Q. 手のひらがじんじんしびれるのは、病気のことがありますか?
A. あります。親指から薬指の半分なら手根管症候群、小指側なら肘部管症候群、両手なら首の骨の病気などが疑われます。片側の手足や口のまわりのしびれ、片方の手に力が入らないといった症状が突然出たときは、すぐに救急車を呼んでください。
Q. 瞑想や深呼吸のあとに手がしびれるのはなぜですか?
A. 大きな呼吸を続けると、血液中の二酸化炭素が減って手指の血流が減り、手がしびれることがあります(過換気)。ふつうの呼吸に戻して落ち着くのを待ってください。
Q. 手を当てていると、手が温かくなるのはなぜですか?
A. 手のひらには、動脈と静脈を直接つなぐ血管がたくさんあり、開くと皮膚が温まります。緊張がほどけたときに手が温かくなりやすいのは、この働きで説明できます。
Q. レイキには効果がありますか?
A. アメリカの国立補完統合衛生センターは、どの健康上の目的にも有効性ははっきり示されておらず、レイキで働くとされるエネルギーが存在する科学的な根拠もない、としています。害は示されていません。


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